EP01 春の浅い眠りの夢

今?

……

「7時?か…」


昨日はかなり遅くまでゲームをしていたからまだ眠い。


今日は日曜日だからもう少し寝よう。

レイは再び瞼を閉じた。


靄のかかった中を歩いている。

花の香りがしている方に足を進めたそこには大きな古木、桜の大木があった。


「この匂いは桜の香りか?」


「良い匂いがする……」


辺りは不思議な雰囲気に包まれている。

気持ちが良くてふわふわする感覚。


桜の大木の根本に腰を下ろして寄り掛かる。


「あー眠い、、、」

「とっても眠い、、、」

そっと目を閉じて夢の中へ落ちて行った。


レイが目を覚ますと

そこは街の外れにある神社裏手の御神木

レイは桜の古木にもたれかかっていた。


大きなあくびをしながら固まった身体を背伸びしながらほぐす。


「たしか?さっきまで…」

「自室のベッドで寝ていた筈なのに?」

「こんな夜中に?」


スマホの時間を見ると日曜日の午前2時過ぎだった。


木の上の方を見ると

キラッと見る角度で何かが光って見えた。


興味をそそられ太い枝をいくつか登り

木のうろの中から野球ボールくらいの

虹色に光る卵型の石を見つけた。

 

レイは卵石を制服のスカートのポケットにしまい木から降りた。


目の前に小さな黒猫ちゃんが現れた。

何処かに母猫が居るだろうから触らない。

ひと言さよならと声をかけて神社の境内まで来た。


黒猫ちゃんはついて来る。

結局家まで付いてきた。


黒猫にお水を飲ませて

取り敢えず部屋の中に段ボール箱を置いて中にタオルを引いて黒猫を入れた。


朝になったら母親に相談する事にした。

「あーー眠い」

レイはそのままベッドに倒れた。


母親に起こされて目を覚ます。


『もうレイったらいつまで寝ているの!』

『もう10時よ!』

『いくら日曜日だからといっていいかげん起きなさい』


ハッとして!

段ボール箱を覗くが黒猫ちゃんは居ない?


「ねぇお母さん小さな黒猫ちゃん見なかった?」


『え?黒猫?見てないわよ』


「私…確かに…」

「この段ボール箱の中に入れたんだけどな」


『何訳の分からない事言ってないで

顔洗って来なさい』

『今日は天気が良いからレイの布団も干すからほら退いて』


『レイまたお風呂も入らないで制服のまま寝たの!』

『レイはお風呂も入らないでゲームで徹夜して制服姿で寝るとジュン君に言うわよ!』


「もうお母さん、やだ〜絶対やめてよね!」


『まったくもう早くシャワー浴びて来なさい』


「ja(はい)」


脱衣所でスカートを脱ぐとゴトッと音がした?

ポケットに何か入っている。


「スマホか!」

右のポケットからスマホを取り出す。


「おや?」

「左のポケットに?」

「何だこれ?」

虹色の石が出て来た。


「あれ?」

「これって? 」

「夢じゃなくて…」


お風呂でお気に入りの音楽を流しながら

虹色の石を品定めして風呂に浮かべている。一応綺麗にボディソープで洗いました。


「何だろな?」

「これ?」

石みたく硬いし指先で突くとガラスのような綺麗な音色がする。


お風呂に入ったら急にお腹空いて来た。


お風呂から出てトーストを焼いて

目玉焼きを乗せてマヨかけて食べる。

コーヒーはブラックが好きです。


ご飯食べたら神社に行ってみよう。


「ねぇお母さんこの石何かな?」


『どれどれ…キラキラして綺麗な石ね』

『オパールとか何かじゃない』

『これどうしたの?』


「街外れの神社で拾ったの」


『誰かが落としたかも知れないから返して来なさい』


「うん後で行って来る」


『レイ!じゃあ帰りに牛乳買って来て』


「ja(はい)」


神社の境内にある社務所を尋ねた。

神主さんに石を落とした人が居るが聞いたけれど届けは出ていないと言われた。


神主さんは80くらいのお爺さんだが

ぱっと見は60くらいに見える若々しい人だ。神主さんは自分も昔不思議な夢を見て石を手に入れた話しをしてくれた。


不思議な話にレイは引き込まれていった。


神主さん曰く

これは昔からの言い伝えでそれは古い古いお話で神主さんも曾祖父から聞いたお話。


ある日

運命の時

桜香る古木の下で

不思議な石の持つちからを

その身に宿し啓示を受けた者は

その使命を全うするのだと言われた。


神主さん曰く

まあ危ない物では無いし

自分の思いを具現化する。

スキルオーブと言う石だと教えてくれた。


なんだか?

これファンタジー?

レイは戸惑いながらも話半分に聞いた。


そして黒猫ちゃんの話をしたら

神主さんの時は小狸だったと教えてくれた。


「ん?」

「狸?えーー!」


『ほれ!あそこにおるじゃろ』


今はもう普通サイズの狸になっている。

目をやると座布団の上でふさふさの毛玉が丸まっている。

なんだかシュールなお話だった。


帰りにコンビニで

牛乳とチュールを買って家に帰った。


ちなみに父親は出張が多く

日本に来てからはほぼ母子家庭状態だ。


「ただいま〜」

「お母さん牛乳冷蔵庫に入れたからね〜」


『は〜い』

『レイありがとうね。』

『冷蔵庫におやつあるからねか』


おやつ、おやつ…

「お?エクレア発見!」


部屋に戻って来て黒猫ちゃんを探す。

クローゼットの中…

ベッドの下…

デスクの裏!?

埃だらけだと火事になるから掃除した。

特に電源タップやコンセントはしっかりと。


「黒猫ちゃん」

「やっぱり居ないな…」

「せっかくチュール買って来たのになぁ」


ちなみにチュールって

どんな匂いがするか開けてみた。

中々美味しそうな匂いがする。


すると部屋の隅に脱ぎ散らかしたままの

制服のブレザーの袖が動いた気がした。

チュールを近づけるとまた動いた。

袖口から小さな黒猫が顔を出す。


「いた!」

「黒猫ちゃん!」

「ねぇお母さん!」

「黒猫いた!」

「来て来て、早く早く」


『はいはい…』

『今度は何?』

『帰って来るなり、、、』

『あら!かわいい〜わね。』

『レイ?拾って来たの?』


「ううん、昨日ね…」

「チュールあげてみようよ」

「美味しそうに食べてるわね」 


『レイ?』

『黒猫ちゃんの名前は?』


「名前?」

「まだ無いよ」


『じゃあマリア!』


「え!お母さん…早!」

「まだ女の子かも分からないし…」

「でも良い名前だね」


もう2人は完全に猫を飼う体で話をしていた。

チュールをあげてお水を飲ませると

母親に甘えて来た。

お母さんは悶絶している。


取り敢えず動物病院に行って

診察して見てもらいシャンプーした。

お風呂は嫌いじゃないらしい。

ドライヤーで優しく乾かすと

モフモフの出来上がりです。


マリアは

黒猫の女の子で

足の右指先だけ薄っすら桜色していた。

かわいい〜、の〜

お目めは綺麗なブルーでかわいいが大暴走しています。


すっかり母親はマリアにメロメロだ。

母親に良き話相手が出来て良かった。

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