毒親 ~いつか絶対殺してやるからな~
絶坊主
第1話 いつか絶対殺してやるからな・・・
いつか絶対殺してやるからな・・・
ボクは石に刻むように心の中で呟いて歯をくいしばった。
バシッッ!
肉片を打ち付ける生々しい乾いた音が部屋に響き渡る。その衝撃はボクの軸がぶれる程だった。
「お前は兄貴だろうがっ!」
またこのセリフだ・・
お前らが勝手にsexして、たまたま早くボクが生まれただけだろ。
ボクはいつも思う。
先に生まれただけなのに、何故、こんな理不尽な扱いを受けなければならないのだろうか?
あいつはいつも、瞬間湯沸し器のように突然怒りだす。そして、夜叉のような顔をして、ボクの前に仁王立ちする。右手でボクの頬を思いっきり叩く。
人間というのは、環境に順応する生き物だなぁとつくづく思う。幼い頃は、こちらが準備する間もなく叩かれていた。
しかし、段々と叩かれるタイミングが分かりだし、叩かれる前に歯をくいしばる事が出来るようになった。叩かれた後は、痛さ、惨めさ、自分だけ殴られる悔しさからか涙が出る。
幼い頃は声を上げて泣いていた。
しかし、その泣き声がアイツの逆鱗に触れて、再び殴られてしまう。だから、いつからか泣き声を上げることなく涙を流せるようになった。
でも、本当は泣きたくなんかない。だけど何故だか涙が出てしまう。
こんなボクにだってプライドがある。
普段、母さんはボクに優しかった。けれど、ボクがアイツに殴られる時は、見て見ぬふりをしていた。
所詮、アイツの女だからな・・・
諦めにも似た感情だった。
アイツに殴られた後、泣きながら自分の部屋の窓から見える海を眺めるのが好きだった。
無限に広がる大きな海。
あの地平線の向こうには、どんな世界があるのかな・・・
その瞬間だけは希望が持てた。そんな事を考えているうちに、いつのまにか涙は乾いていた。
窓から見える海だけがボクを裏切らず慰めてくれた。
きっと、心理学の事は詳しくわからないが、この海を眺めて自分を落ち着かせる行為。
“今いる場所から逃げ出したい”
きっと、そんな診断結果なんだろうと思う。
そして何より、ボクは弟が殴られているのを1度も見た事がない。
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