野菜星人

野菜星人

あっくんは、お母さんとお父さんとスーパーにやって来ました。

「今日はにんじんとピーマンの炒めものを作ろうかしら」

お母さんが、あっくんと手をつないで言います。

「うーん。トマトとナスのチーズ焼きもいいんじゃないかい?」

お父さんがカートを押して言います。

あっくんは野菜が嫌いです。

だって苦かったり、酸っぱかったりするから。

「野菜なんて食べたくないよ」

あっくんは、お母さんやお父さんに言います。

「野菜はちゃんと食べようね」

「あっくんのためなんだよ」

と、2人ともニコニコ笑いながら言いました。

どうやったら、野菜を食べなくていいかな?

あっくんは考えます。

おや、野菜売り場にたくさんの人がいます。

「なにかあったのかしら」とお母さん。

「おいしい野菜があるのかな? 行ってみよう」とお父さん。

「ぼく、おかしを買いたいよ」

あっくんは野菜売り場に行きたくありません。

野菜を見るのも嫌です。

しかし、あっくんはお母さんに連れられて、野菜売り場に向かいました。

野菜売り場に行くと、【野菜星人売り場】と書いてある大きな看板があります。

看板下の野菜は、全ておもしろい形をしていました。

バンザイをしているにんじん、犬のナス、うさぎのトマト。

ひらがなの『し』や『く』のきゅうり、ハートのじゃがいも、かわいいポーズのだいこんが並んでいます。

「ねこさんの野菜なら食べれそう!」

「このにんじんかわいい」

「じゃがいもが足みたいな形だ」

「この子買ってくれないとやだー!!」

野菜売り場は、子どもと大人でいっぱいです。

あっくんは、野菜が嫌いです

でも、バンザイをしているにんじんが気になります。

ジーッとにんじんをみます。

「あっくん、どうしたの?」

お母さんがあっくんに聞きます。

「なんでもないよ」

野菜をみないようにして、あっくんは言いました。

でもあっくんは、お母さんとお父さんにバレないように、やっぱりにんじんを見ます。

どうしようかな? 食べられるかな?

にんじんって苦いんだよな。

でも、このにんじんを食べたら元気になれそう。

「お母さんバンザイしてるにんじん食べてみたい」

あっくんは小さな声でお母さんに言いました。

お母さんもお父さんもあっくんの言葉に、びっくりした顔になります。

でも、すぐにニコニコと笑いました。

そうしてあっくんは、バンザイをしているにんじんを抱きしめてレジに行きます。

「これください!」

あっくんは元気にいいました。



家に帰ったら、お母さんとお父さんがにんじんとピーマンの炒めものを作ってくれました。

なんと! にんじんは小さくなってもバンザイしたまま。

お父さんががんばって切ってくれました。

「いただきます」

あっくんはおそるおそる、にんじんを食べました。

あっくんの目がパッチリと開きます。

「おいしい!」

あっくんはにっこり笑顔で言いました。

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