第12話 北風系ヤンデレと限界2
「そんなの......そんなのおかしいだろ! 僕は彩咲のおもちゃじゃない! 学校もやめさせて家から出さないなんていくら彩咲でも横暴すぎるよ! 僕のことを信用できないだって!? それは彩咲が僕のことを信じようとしないだけだろ!? いい加減にしてくれよ!」
一度口に出し始めたら文句は止まらなかった、この後もひとしきり長年溜まった鬱憤をぶちまける。
その間、彩咲の表情は『無』になって固まったまま何も言わない。
いつもなら途中で口を挟んで僕の発言を制していたところだろうに、何も言わない。
僕の勢いに圧倒されているのだろうか。
「前からずっと言いたかった。彩咲は僕のことを愛してるわけじゃないんだろ? 単に僕を縛り付けて愉しんでるだけなんだろ?」
いっしき吐き出し終わった僕は、最後に一言、彼女に告げる。
「こんなことを続ける彩咲のことは......、今の彩咲は............僕はもう好きじゃない」
数秒待って僕が言いたいことを出し切ったと判断したのか、彩咲が次は自分のターンだとばかりにつぶやく。
「言いたいことはそれだけかしら?」
心底落胆したとばかりに低い声で言葉が綴られる。
「彩咲がなぁくんのことを愛してない? そんなわけ無いでしょう。なんだ、なぁくんは彩咲からの愛情を感じられてなかったのね? 気持ちが通じ合ってるって想ってたのは彩咲だけだったんだ。お仕置きもなにもかもなぁくんのためにしてあげてたのに。彩咲と過ごす幸せな生活のために、正しい道に導いてあげてただけなのに。なぁくんはわかってなかったんだね。本当に残念。だけど、彩咲の愛は揺るがないよ。なぁくん以外なにもいらない。そのかわりなぁくんのすべてだけは彩咲のものにしたい。それっておかしなこと? 大好きだから、アタリマエのことじゃないの?」
あぁ、今日は特にヤンデレが極まってる。
いつもヤバいけど、今日は特に典型的じゃないか。
「なぁくんがずっと大人しく彩咲といちゃいちゃしてくれてたら、普通のお婿さんとして接してあげるつもりだったんだよ? でも、なぁくんは彩咲を心配させてばかり。こんなんじゃ安心して夫婦生活を送れないよ。だからペットにしてあげようってことなの」
......狂ってる。
そんなのが愛だなんて、思いたくない。
「これはなぁくんがまた彩咲のこと大好きになれるようにするための、彩咲からの温情だったのに。それなのに、あろうことかなぁくんは彩咲に歯向かうみたいに、鬱憤を吐き出すみたいに彩咲に悪口みたいなことを言ってきた」
みたいに、じゃなくて、実際に歯向かってたし、悪口を言ったんだよ。
いつもとは違う僕の睨みつけるような視線もものともせず、彩咲は続ける。
「なぁくんがこれからペットとして生きるのは完全に確定事項なの。でもどうにもなぁくんはペットとしての自覚がまだないみたいだね」
そんな自覚は一生持ちたくない。
「僕は彩咲のペットじゃな......んむっ!?」
言い返そうとする僕の唇を、彩咲の柔らかい唇が塞ぐ。
たっぷり数秒間口の中をねぶられ、それから離される。
2人の口の間に唾液の橋がかかって、テラテラと艶かしく光る。
彩咲はさらにいやらしく自分の口元をぺろりと一舐めして語りを再開する。
「でも、なぁくんが彩咲に完全に服従できないのも仕方ないかもね。いっつもムチばっかりで、ご褒美はこんなキスくらいしかあげてなかったもんね。なぁくんは頑なにえっちだけはしようとしなかったから、その分、本当は手に入るはずの快感をあげられていなかったんだもんね。でも大丈夫。今晩、彩咲たちは結ばれる。それからはずっと気持ちいいことばっかりだよ。それで、しっかりペットとしての自覚、しましょうね」
僕を完全に堕とそうとする支配者、いや捕食者の狂気と淫気に染まった目が、僕の目の前で見開かれていた。
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