第48話 追跡
空高く弧を描いていた2羽の
停止した馬車の荷台に立つ
彼女は
「よし。お疲れ様」
アデラは
そんな
それからアデラは馬車の荷台の中央に広げて貼られている地図の前にしゃがみ込む。
それはこの公国西部の地形を記したものだった。
その地図の上に指を
「方角は間違っていません。この先、3里ほどのところにある丘に野営している集団がいます」
そう言うアデラに
ベラは2頭立ての馬車の馬たちに被せた金属の
「と、鳥の言葉が分かるのか?」
「いえ、言葉は分かりませんけど、仕草や反応で、あらかじめ指示しておいた
その言葉にブリジットは
アデラはまだ経験が浅かったが、鳥との親密度という点では群を抜いており、細やかな情報収集には向いている。
それに彼女の能力がそれだけじゃないことをブリジットは知っていた。
「この数年、分家の奴らは公国側に遠征をしてくることが多かった。この辺りは奴らがたまに通る道だ」
王国に領地を持つ分家だが、彼女たちはたびたび国境を越えて公国側に進出していた。
狩りによる獲物の採集などが主な理由と思われるが、その真の目的は分かっていない。
日頃の
ブリジットら本家がそれを放置していたのは、そうした進入が小規模であることと、分家の者たちが慎重に衝突を避けるべく本家の巡回順路と被らないようにしていたからだ。
だがそうなると分家が進める道はある程度限られてくる。
ブリジットはこれまでの分析結果から、あらかじめこの辺りに敵がいるのを読んでいて、それを裏付けるためにアデラの力が必要だったのだ。
「敵が小舟で川を下り、下流域に向かったことまでは分かっていた。そこから先はアデラのおかけだな」
「光栄です。ブリジット」
はにかむアデラに、荷台の上で無心に
「……相手の人数は分からないのか?」
いつも通りブスッとした顔のソニアだが、それに慣れていないアデラは緊張に表情を堅くしながら
「は、はい。そこまでは……」
アデラの言葉にソニアは
そんなソニアをチラリと見やりブリジットは再びアデラに視線を戻した。
「この辺りで小高い丘というならノルドの丘で間違いないだろう。あそこの広さならダニア式の天幕は7、8幕がやっとというところだ。ならば駐留している人数は100人に満たない。世話役の
アデラはブリジットの言葉に息を飲む。
70人の敵相手にここにいるたった5人で特攻し、人質を奪い返してその場を
それはアデラには至難の
そんなブリジットの言葉にベラはアデラとは別の理由で困惑の表情を浮かべた。
「ノルドの丘? よく丘の名前まで知ってるな」
不思議そうにそう
「アタシをナメるなよ? ベラ。この辺りの地理は完全に頭に入ってるし、公国の西部地区のほとんどは実際にこの目で見て回ったことがある。15~6歳の頃、アタシは勉強に精を出していたからな。その頃、おまえは男
「う……ア、アタシは勉強は大嫌いだったんだ」
そう言ってバツが悪そうに顔を背け、ベラは作業を続ける。
馬たちは頭、胴体のみならず足までしっかりと金属
その
馬車での突破は馬がやられれば一巻の終わりだ。
防御を出来る限り万全に近くしておく必要がある。
それからブリジットはソニアに顔を向けた。
ソニアは出発してからずっと変わらぬ表情で武器の手入れをし続けている。
他人が見ればいつもと変わらぬ
彼女は緊張しているのだ。
「ソニア。気負い過ぎるなよ。おまえとベラは防御に徹するんだ」
ブリジットの言葉にソニアは手を止めて顔を上げる。
その顔には深い
「……リネットはこの襲撃を予測している。ブリジットを誘い出す目的があるはずだ」
「だろうな。リネットがその場にいるとしたら
そう言うとブリジットは荷台の上で準備をする新人たちに目を向けた。
そこでは
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