第6話 宣言
ダニアの女戦士ベラに案内されてボルドが通された天幕は、この一族の長たるブリジットが側近たちを従えて政務を行う大本営だった。
そこではすでにブリジットが正装たる金色の
さらに天幕の壁は全てまくり上げられ、そこから見える周囲をぐるりと取り囲むように大勢の女たちがひしめき合っている。
その人数は100名は超えるだろう。
異様な雰囲気にボルドは思わず息を飲んだ。
「ダニアの戦士ベラ。我らが長たるブリジットの
そう言うとベラはボルドの手を取ったままブリジッドの前まで歩み出てその場に
ボルドも
「ご苦労。下がってよい」
そう言われるとベラはスッと後方に下がって控えた。
ボルドはどうしたらいいか分からずその場に立ち尽くしたが、すぐにブリジットが玉座から立ち上がり彼に歩み寄る。
そうして彼女は自分よりも背の低いボルドの前に立つとその左肩を右手で抱いた。
そこで彼女は朗々たる声で宣言する。
「誇り高きダニアの長・ブリジットの名において宣言する。ここにいるボルドを我が情夫とし、夜ごと
そう言うと彼女は周囲を見回す。
見ている女たちからは次々と
「異論なし!」
それを受けてブリジットが鋭く声を発した。
「ならば良し! 者ども! しかと見よ!」
そう言い放つとブリジットはボルドの左肩を右手で
場の
「固くなるな。力を抜け」
それは
その
ブリジットの口が彼の口を
柔らかな
昨夜のベッドの上でも口づけを交わすことはなかったボルドにとって、生まれて初めての行為である。
頭の芯が
だが、そこで彼は確かに感じ取った。
落ち着き払っているはずのブリジットの
まるでボルドの動揺が伝染したかのようだった。
熱烈な
手を叩き、口笛を吹いて
そこでようやくブリジットはボルドの
熱い口づけの
強く
― ダニアのブリジットは18歳になるまで男知らず。 ―
ブリジットにとっても今日のこの場は緊張するものなのだ。
ボルドはそう感じ、ふと彼女の目をじっと見つめた。
初めてちゃんと見つめ合う気がしたが、すでにブリジットの目は元の
そして
「今日よりこのボルドはこのブリジットの情夫。何人たりともこの男に
こうしてボルドは情夫として一族に正式に迎え入れられた。
今日からこのダニアが彼の居場所となったのだ。
ほどなくして宣言の儀の終了が宣告され、その場に集まった女たちが解散していく。
ボルドは来た時と同様にベラに手を引かれてその場を辞した。
ブリジットの居室までの帰路を歩く間、宣言の場に同席できなかった女たちが興味深げにボルドを見に集まって来る。
ボルドはベラに手を引かれるままフラフラと歩きながら、そんな彼女らの視線を受けた。
ベラはボルドのそんな様子がおかしくてたまらないらしく、白い歯を見せて笑う。
「おい。大丈夫か? キスくらいで
その夜は夜通し
彼女の寝室で1人ベッドに横たわりながらボルドはいつしか眠りについていた。
夢は見なかった。
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