幼馴染って辛くね⁈

猫の集会

第1話

「ねぇ、みてみて」

 オレの隣でキャッキャしているのは、同級

 生の幼馴染もえか。

 

「もえかさぁ、もう暗いからそろそろ帰った

 方がいいんじゃん?」

 すっかり日が暮れるのか早くなった十月。

「あっ、本当だ。もうこんな時間!じゃあ、

 帰る」

「なら、送るよ」

「バカ、隣だろ〜に‼︎」

「んー、でも一応。玄関入るまで見送る」

「もー、康介は心配症なんだから〜」

 クスクス。

 

 

 ほぼ毎日ってくらい、もえかはうちに来て

 くつろいでいる。

 産まれた時から、ずっと一緒だし安心する

 のかもしれない。

 もう、きょうだいみたいな関係だ。

 

 

 

 でも、オレはきょうだいなんて思ってない

 んだよなー。

 

 

 …ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…ー…

 

 小学四年生の時、クラスの女子がバレンタ

 イン誰にあげる?

 なんて会話をするようになった。

 もちろん、もえかだって誰かにあげるかも

 しれない。

 

 

 だけど、もえかはそういうイベントにあま

 り興味がないようだった。

 ホッ。

 よかった。

 

 バレンタイン当時は、男子もソワソワ。

 特に放課後はみんな、なかなか帰ろうとし

 ない。

 でも、オレはそんな事気にしないでさっさ

 と教室をでた。

 

 すると、もえかがすでに一人で靴を履いて

 いた。

 

「あれ?もえか。真樹ちゃんと一緒に帰んな

 いの?」

「あー、なんかチョコ渡すとか言ってたから

 先帰るって言ってきちゃった」

「ふーん。オレも興味ないからたもつ置いて

 きちゃった。なら、一緒に帰ろうぜ」

「うん。いいよ」

「康介チョコ嫌いだもんね」

「まーな」

 

 

 靴を履き終えて二人で帰ろうとしたその時、

 後ろから

「康介くん!まって‼︎」

 クラスの女の子が息を切らしながらこっち

 に走ってきた。

「あたし、先行くね」

 小学生のもえかは、大人びてるのか空気を

 読んで先に帰ってしまった。

 

 

 あー、せっかく久々に二人で下校できたの

 になー…

 

 

 息を切らしながら走ってきてくれた子は、

 手にチョコを持っていた。

「あのっ、これよかったら」

 

 あー…、困るよー…

 

 

「あのさ、ごめん。オレチョコ好きじゃなく

 て。それに、受け取れないんだ。本当にご

 めん。」

 毎年この空気が嫌いだ。

 あげる人は、かなり緊張するだろう。

 それを受け入れてあげられない申し訳ない

 気持ち…

 お互い辛い時間だ…

 

 

 家に帰ると、もえかが犬の散歩に出かける

 所だった。

「もえか。オレも一緒に散歩に行ってもいい

 ?」

「うん。行こ!」

「なら、ランドセル置いてくる」

 急いでランドセルを下ろしてもえかの所に

 向かった。

 

 

 近所を周り、犬のけんも満足したようだ。

「はい!これ一緒に散歩してくれたお礼。今日だけ特別にあげる」

 ポケットから、飴を取り出して二個オレの

 手にポンって置いた。

「あ、どうもな」

「うん。ちゃんとうがい手洗いしてから食べ

 なよ」

「ハハッ、母ちゃんかよ‼︎」

「アハハ、じゃあね」

「じゃ」

 そう言葉を交わして家に入る。

 

 

 毎年特にもえかから、バレンタインをもら

 ったりは、していない。

 

 

 五年生になっても、やっぱりチョコを渡し

 てくれようとする子がいる。

 六年生になっても…

 

 

 でも、断り続けていた。

 

 

 中学になり、ランドセルから制服。

 なんだか、一気にみんな大人びてしまったように思う。

 

 

 もえかは、朝一制服を着て

「康介、似合う?」

 なんてちょっとセクシーなポーズをふざけ

 てとった。

 

「うん。いいんじゃん」

「ありがと。康介も似合ってんじゃん」

「そりゃ、どーも」

 

 二人で鏡の前に並んだ。

 なんか、もえかがどんどん大人になってい

 ってしまう。

 いつか、オレの元を離れていくんだろうな。

 さみしいな…

 って、オレもえかの父ちゃんかよ‼︎

 

「ほら、二人ともー、遅刻するよー、早く降

 りておいでー」

 入学式の為にめかし込んだ母親が下から呼んだ。

 

「はーい」

 同時に返事をして声が重なった。

 あははは

 二人で朝から笑い合えるなんて。

 なんて平和なんだろう。

 しかも、晴天。

 

 オレともえかは、並んで学校まで歩いた。

 後ろに、うちの母ちゃんともえかの母ちゃんが世間話をしながらついてきた。

 

 

 確か小学校の入学式も、もえかと手を繋い

 で歩いたな。

 今は、手こそ繋がないけどこうして並んで

 登校出来ることが何より嬉しい。

 

 こんなかわいい幼馴染がお隣さんでオレは

 なんて幸運な男なんだろう。

 チラッともえかをみた。

 するともえかが、

「康介、背が伸びたね。なんか大人かよ‼︎」

 なんていいながらおでこをビシってかるく

 叩いた。

「おう、大人にそんな態度取るなんていい度

 胸してるねぇ、お姉ちゃん。」

 オレは、軽くもえかにヘッドロックをした。

 

「こらこら、康介‼︎もえかちゃんになんて事

 してるの!」

 後ろから母ちゃんに頭をバシッと叩かれた。

「もー、仲がいいんだか悪いんだか」

 

 晴天の中みんなで笑った。

 楽しいな。

 ずっとこんな楽しい時間が続けばいいな。

 

 続く。

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