第4-2話 ダメージ床整備領主、伝説の魔物を掘り当てる
「むむむっ! このガラス玉は……太古の文明の痕跡っ……現代技術で再現不可能な真円のガラス玉でわっ!?」
次の日の朝、気持ちのいい青空のもと探索を続ける私たち……岩陰にきらりと光るガラス玉を見つけ、歓声を上げるアイナ。
「……うん、それは市販されてるビー玉だね。 カラスが落としたんじゃないかな?」
「ふふふ……甘いぞアイナ……私が見つけたのは、これだっ!!」
私は先ほど見つけたアイテムをアイナの目の前に突きつける。
「ふおぉ……こ、これは伝説の水晶ドクロ……この山奥に……超古代文明の影が……ごくり」
「むしろ星界からの侵入者かもしれん……アイナ隊員! ここからは危険が伴う! 気を付けて進むぞ!!」
「はいっ! 隊長っ!」
「……そして、我々は遺跡の奥に足を踏み入れたのだ……」
「いや、そのドクロ……村の土産物屋さんで買った奴じゃないですか……遺跡とかどこにあるんですか……」
ノリノリで”フージオーカ侯爵探検隊ごっこ”をする私たちに、冷静なツッコミを入れるフリード。
ちなみに、フージオーカ侯爵とは探検が趣味の厳ついおっさんで……彼の笑いたっぷり涙たっぷりの冒険記は子供たちに大人気なのだ……現在10巻まで出ているので、ぜひ読んでみてくれ!
「ほらふたりとも! あと30分遊んだら、昼ご飯作りますよ!」
母親のようなことを言うフリードに呆れられながら、私とアイナはたっぷりと探検隊ごっこと楽しむのだった。
*** ***
「隊長っ! 目の前にマジで怪しい遺跡がありますっ!」
「なん……だと?」
昼食を終えた私たちは、午後も楽しく探索を続けいていたのだが、「こっちから面白い臭いがしますっ」とはしゃぐアイナに連れられ、分け入った森、その最奥で私たちが見たのは……。
巨大な崖の一部が崩れており……そこからわずかに覗く、祭壇の一部のようなモノ……ガチのマジで古代遺跡の痕跡だった。
「たいちょう! ここに怪しい文字が書いてありますっ……なっ、世界が……滅亡するって……!?」
「……まだそのノリ続いてたんだね……」
アイナが一枚の石板が露出しているのを見つける。
ふむ……これは……だいぶん風化しているが、帝国の古語だな。
「待てアイナ……これなら私が読める……どれどれ」
「凄い、さすがカールさん! アイナ適当なこと言ってました!」
興奮で鼻息が荒くなるアイナに見つめられながら、石板の文字を読む私……。
「……偉大なる……双璧……戦いの果てに…………開けるべからず」
「ふむ……おそらく何かを封じた遺跡であることは間違いなさそうだ……興味深い」
「ただ、祭壇のほとんどが地中にあるようだし……この岩盤をどけるのは無理だな」
私は目の前の光景を一瞥する。
崖が崩れ、遺跡の端が一部露出しているが、祭壇の本体は地中にあり……この高さ数十メートルの岩盤の向こう側だ。
帝国大学の同期で考古学を専攻していた友人に連絡して、その後本格的な発掘調査を……私がこれからの事を思案していると……。
「大丈夫ですっ! こんなことがあるかもとケンゾー爺さんに相談したら、アイナの魔力に反応する魔導
「軽く”ぼんっ”と小さな岩くらいなら壊してくれるそうです……せっかくだからもう少し調べませんか?」
目をキラキラさせたアイナが懐から取り出したのは……メロンぐらいの大きさの、油紙で覆われた球体に20センチくらいの適当な導火線がついたアイテム……子供向けの冒険記に出てきそうなベタな爆弾だった。
彼女の言うケンゾー爺さんとは、村のはずれに済む変わり者の発明家で……変なものをよく作るので、村人からは呆れられているのだが……直球元気爆発娘のアイナとは波長が合うらしく、彼女はケンゾー爺さんからよく変な発明品を渡されていた。
(ちなみに同じ技術者として、私もたまに話をする。 世界を進化させるのはこういう変人……かもしれない)
「にへへ……ここにアイナの魔力を込めれば、10秒後にどっか~んってケンゾー爺さんが言ってましたっ!」
「アイナ、ここにに何があるかに気なります……さあ、カールさん、フリードさん、離れて離れて!」
「ばちばちっ……と~~~うっ!!」
待てアイナ、使うにしても設置場所を調べてから……そう彼女を止める間もなく、アイナは導火線に魔力を込め、世界を狙える肩で爆弾を崖に向かってぶん投げる!
「あっ」
「あっ」
ひゅ~~~ん
思わず間抜けな声を上げる私とフリードの目の前で、爆弾はきれいな放物線を描き……。
ズドドドォォォォオオォォォオォッン!!
想定より数段上の大爆発を引き起こしたのだった。
「ふう、みんな大丈夫か?」
ダメージ床壱式の応用で、展開したダメージ床をバリアとして使った私、爆発の余波が収まるのを待ち、バリアを解除する。
「ふええ、しゅみません~……こんな大爆発になるなんて思ってませんでしたぁ!」
「うう、ケンゾー爺さんやり過ぎだよう……」
思ったよりとんでもない爆発になってしまい、アイナがしゅんとしょげている……まったくだ……女の子にこんな危ないアイテムを持たせるなんて。
……まさか彼女の膨大な魔力が威力に影響したのか?
私が思案を巡らせていると、ようやく煙と土ぼこりが収まってくる……その先に見えてきたのは……。
高さ数十メートル、幅10メートルくらいの長方形の石棺……巨大な棺桶のように見えるその中にいたのは、真っ赤な鱗を持ち、大きな翼を折りたたみ眠るように目を閉じている
「な、なんだと!? これはまさか”サラマンダー”!?」
「すべてを焼き尽くす炎の化身……伝説級の神獣だぞ!?」
まさかあの伝承は本当だったのか……しかもこれは……先ほどまで石のように生気がなかったサラマンダーの鱗が鮮やかに輝きだし……周囲に魔力が満ちていく……。
まずい、まさかコイツ……目覚めようとしているのでは……。
最悪の可能性に私が思い当った時、ぱちりとサラマンダーがその瞳を開き。
「「「あっ……」」」
燃えるような眼力を持つ奴の目とバッチリ視線が合ってしまったのだった。
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