第10話 西と東の宝④
最初から生かすつもりなどなかったのだ。分かってたけどね。
斬り結んだ相手の太刀筋から確実に仕留める為の暗殺者である事を確認する。
険しく笑って刀身を弾き、身を翻す。向けた背中に刺客が刃(やいば)を突き立てる。
「おっそ」
頭上から降った声を確かめる間もなく、刃(やいば)で空(くう)を突いた姿のまま刺客は絶命した。
男が倒れるそのほんの僅かの間、彼の左肩に片足で着地したオレは久々の感覚に目を見開き、細めた。
「くっ……来るな……!!」
他の刺客がオレの異様さに気づいて後ずさるが、逃す気はないよ。大体そっちから押しかけといて。
再び宙を舞う。
おっと。口元が笑ってしまっていた。これじゃ本当に狂戦士じゃないか。まぁ子孫だけども。
刀を振る度に人がバタバタ死んでいく。血は流れていない。この『黒炎』がまるで魂を吸い取っているようだ。
罪悪感は……多少はあるかもしれない。が、こいつらはオレを殺そうとしていた。何もしなければ殺されていたのだ。むしろ罰を与えてやったようでスッとした爽快感も正直、ある。
最後の一人も狩り取って、床に崩れ落ちた死体をひょいと跳び越え部屋の外へ出る。
バタバタと遠退く足音。焦げ臭い。火を放ったか。
……そんなに西は自らの至宝が大事だったのか?
大国に背くとなれば西に未来は無い。
「キャーッ」
叫び声に駆けつけると、そこは謁見した広間だった。
侍女らしき女性が扉が開け放たれた前で座り込んで広間の中を凝視している。
中には血塗れで倒れている人々……先日の謁見で見たこの国の王と妃、それに若い男女と老人の変わり果てた姿だった。
そのうちの若い女性はうつ伏せで倒れていた。金髪が緩やかに波打っている。
心臓がどくん、と鳴った。
「ルミフィスティア!」
見間違いであってくれ。
駆け寄って抱き起こすと、既に事切れていることを悟った。
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