第5話 世界の終わりの守護者




 世界の終わりは、突然やって来た。



 ニュースも人も車も駅も大混乱だった。

 慌しい中、僕のいるカフェも例外ではなく店員のお姉さんは右往左往、客は大半逃げ出してそこいらのテーブルには食べかけのオムライスやカレーだとかが置いてきぼりだ。


 そんな中で僕は――……スーツに手提げカバンという出立ちの三十代半ばのサラリーマンで一応出勤前だったんだけど、もうなんだか諦めた気分になっていてスマホでニュースを見ていた。


 ニュースキャスターの背後ではスタッフさんがウロウロ画面に出たり入ったりしている。ニュースの現場でさえはっきりした状況が掴めていないようだった。


「落ち着いてらっしゃいますが、大丈夫ですか?」


 店員さんに気遣われた。

 こんな事態になって自身もパニックになっているだろうに優しい子だ。


「大丈夫。もう少ししたら出て行くから君も自分の身の安全を第一に考えてね」


 微笑んで言ってみたが顔には少なからず疲れが滲み出ていたかもしれない。何日か前に一緒に飲んでいた友人に隈があると指摘され、その事を思い出した。


 落ち着いていると言われたがそうではなく、諦めからくる脱力に似ている。


〝遂に来たか〟


 そう思っただけだった。


 何故かははっきりと分からないが、幼少の頃池で死にかけた時からずっとうまくこの世界に馴染めていないような不思議な感覚を持つようになった。


 それはふとした折り現れ、寂しさだったり憂いだったり憧憬だったりする。

 知らない、会ったこともない女神様みたいに神々しい女性が度々夢に出てきたり、ともすると泣きながら目が覚めたこともあった。


 自分がこの世界で生きている未来が想像できない。実感もないのだ。

 だから何となくこんな日が来るんじゃないかって薄々想像していた。

 「やっぱり」なのだ。


 駅地下のカフェはガラス張りになっていて外の通路を行き交う人々が早足に通り過ぎるのを見ていた。

 「どうなってるんだ」とか「西口はダメだ」とか怒号の中、一人の少女がカフェの前を横切った。


 僕は目が離せず、席を勢いよく立ち上がると追って走り出した。



「嘘だろ……彼女だ」

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