猫と万華鏡

鳳凰澪崋 暁月

縁側で。

黒い筒を回し、星をみては 君みたいだね と毎日のように話しかけてくれた。

「僕はね、夜がとても好きだ。静かで、綺麗で、君に似ているから。」

私の瞳を覗き込みながら、アナタは微笑んだ。頭を撫でるその手はとても暖かく心地いい。

初めて出会った日も、月が煌めき星は道を照らすかのような明るい日だった。

「黒色の毛は夜のようで、君の青い眼がより輝いて見える。とても綺麗だ。」

薄汚れた身体を抱えたその手はとても暖かく、心地いいと思ったのを憶えている。

いつも黒い筒を回してるアナタ。私がその筒で遊んでる時、アナタは そうじゃないよ と笑って、見せてくれた。ワタシは何をしているのかさっぱり分からないけれど。何かがキラキラしているのは分かった。

「君の瞳みたいで、とても綺麗でしょ?」

それを綺麗と呼ぶなら、きっとそうなのだろう。アナタがそう言うのだから。ワタシは返事をする。アナタが笑うとワタシも嬉しくなる。


だけどもう、触れる事は出来ない。

穏やかな温もり。優しい匂い。愛おしい声。その全ては、二度と叶わない。転がる黒い筒。アナタは声を震わせながら笑った。ワタシは流れたしょっぱい水を舐める。ほら、また筒を見せて。キラキラとした黒い筒。ワタシみたいだと、微笑んだアナタの顔も、温もりも、匂いも。忘れたりしない。


この先もずっと……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

猫と万華鏡 鳳凰澪崋 暁月 @albaLuna

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ