希望溢れる未来 あるいは涙に濡れる今
まさき
第1話
騒がしい沈黙が僕を焦らせる。チャイムと同時に始まった模試に、教室内の誰もが—僕を除いて—ペンを走らせるように空欄を埋めていく。その音がうるさい。隣の席で受験している子は、悩ましい問題があったのか貧乏ゆすりを始め、さらにうるさい。テストに手がついていないのは僕だけのようだ。今受けているのは英語だが、他の教科も同様に僕の手は動かなかった。あぁ、親も教師もうるさい。そもそも、大人は何故勉強しろと言うのか?何故教育は義務なのか?社会で必要だからという常套句を前に、子供はその純粋な心故に疑うことをせず、あれやこれや学ぶ。きっとそれは悪いことでは無いのだろう。そうやって育った子供は、典型的な「優秀な人物」となる。しかし、当然皆が優秀になれるわけは無い。そして、優秀になれなかった僕達は知っているのだ。社会というものは実に合理的に動いているということを。例えば、企業は社員全員がユーティリティである必要は無い。むしろ、ある分野にのみ突出した能力を発揮する者を集め、各分野ごとのセクションを設ける分業スタイルが基本だ。要するに何が言いたいか、それはいたって簡単明瞭で、「勉強したくねぇ」である。後期中等教育なんぞ放って、突出した何かを見つけるべきなんだと強がってみるが、溢れ出る屁理屈は僕を囲むどんな喧騒よりもうるさく、模試で残した悲惨な結果は、結局のところ気にせずにはいられないのだ。
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