哲学魔王の【辞書】

哲学魔王の【辞書】

１．無念 ～より

１．前節゠１／３

━─━─ № 1-1 (2) ─━─━

　　〖ばか〗（副詞的名詞）

【莫（ば）迦（か）】⚠　 #1

　〈愚かしい考え〉〈愚かしいさま〉の意。

　組成は〔計（はか）〕の濁音減価〔計（ばか）〕。

　〔莫〕は〈寂（さび）しい〉〈乏（とぼ）しい〉の意。

　〔迦〕は〈めぐり合わせ〉の意。

　〈無知迷（めい）妄（もう）〉の意のサンスクリット「baka（バカ）」に由来するとの説は信（しん）憑（ぴょう）性が低いように感じられる。

【莫（ば）果（か）】⚠　 #2

　〈愚かしい結果〉の意。

　組成は〔果（はか）〕の濁音減価〔果（ばか）〕。

　〝莫（ば）果（か）を見る〟など。

【馬（ば）鹿（か）】✗　 #3

　語義不相応のため使用を推（すい）奨（しょう）しない。

　この表記では〈馬と鹿（しか）の総称〉のような意となるが、馬も鹿（しか）もバカと言うほど特段バカではない。

☞ 〝果（はか）は計（はか）の做（な）せるもの〟であることから「果（はか）」の語源は〔計（はか）〕であり、また〔果（はか）〕はさらに「墓（はか）」の語源。

━─━─ № 1-3 (4) ─━─━

　　〖おる〗〖いる〗（ラ五段動詞）

【処（お）る】【処（い）る】⚠　 #4

　〈現存する〉〈場に存在する〉の意。

　転じて〈その状態である〉の意。

　〝あの者が処（お）る〟〝生きて処（い）る〟など。

【拠（お）る】【拠（い）る】⚠　 #5

　〈その場を拠点とする〉の意。

　〝はずれの旅館に拠（い）る〟など。

【居（お）る】【居（い）る】　 #6

　〈その場に住まう〉〈その場に存在する〉の意。

　〝東京に居（い）る〟〝部屋に居（い）る〟など。

【入（い）る】【入（はい）る】　 #7

　〈その場の内に移動する〉の意。

　転じて〈その状態になる〉の意。

　｛入（はい）る｝は、別語の末尾についた強調の意の間投詞「は」が、｛入（い）る｝に癒（ゆ）着（ちゃく）したものと想像される。

【要（い）る】　 #8

　〈必（ひっ）須（す）条件の範（はん）疇（ちゅう）に入（い）る〉の意。

　転じて〈欲する〉〈求める〉の意。

【射（い）る】　 #9

　〈矦（まと）の内に矢を入（い）れる〉の意。

　転じて〈矢を放（は）なつ〉の意。

【炒（い）る】⚠　 #10

　〈物の内に火を入（い）れる〉〈｟直火でなく熱したものを介して｠物に火を通す〉の意。

【煎（い）る】　 #11

　〈少量の油で炒（いた）め揚げる〉の意。

　転じて〈焙（あぶ）って焦がす〉の意。

　なお油を使う前提である以上「焙（ばい）煎（せん）」という語は字義不相応であり、中国語では「烘（ホン）烤（カオ）」と云（い）うもので、〔烘〕は〈炙（あぶ）って乾かす〉、〔烤〕は〈炙（あぶ）って焼く〉の意。

　いや、煎（せん）茶（ちゃ）おまえ……、、

【炸（い）る】⚠　 #12

　〈大量の油で揚げる〉の意。

　なお〔揚〕は本来〈位置的に高く上げる〉の意であり温度は指さないため、みんな大好き「揚げ物」も｛炸（あ）げ物（もの）｝と表記したほうがよさそう。

【鋳（い）る】⚠　 #13

　〈金属の内に火を入（い）れる〉〈金属を熱して熔（と）かす〉の意。

【冶（い）る】⚠　 #14

　〈鋳（い）った金属を加工する〉の意。

━─━─ № 1-5 (6) ─━─━

　　〖ところ〗（名詞）

【所（ところ）】　 #15

　〈場所〉〈箇所〉〈部分〉〈周辺〉の意。

　転じて〈最近〉〈近い時分〉の意。

【処（ところ）】⚠　 #16

　〈留（とど）まる所（ところ）〉〈住む所（ところ）〉〈囚（とら）われる所（ところ）〉の意。

　転じて〈場合〉〈情状〉〈意図〉の意。

━─━─ № 1-7 (8) ─━─━

　　〖たつ〗（タ五段動詞）

【立（た）つ】　 #17

　〈長さのあるものが縦状になる〉の意。

　転じて〈身体を足で支える〉の意。

　さらに転じて〈特定の場所や状況に置かれる〉〈確かな存在となる〉〈成立する〉〈有効性に優れる〉〈誕生する〉の意。

【勃（た）つ】⚠　 #18

　〈物事が急に立（た）つ〉の意。

　転じて〈性器が膨張する〉の意。

　なお本来〈急に考えつくこと〉は「思い勃（た）つ」であり、「思い立つ」では〈考えがまとまる〉のような意味になるはず。

【建（た）つ】　 #19

　〈建物が場にできあがる〉の意。

【献（た）つ】⚠　 #20

　〈｟何かを崇（あが）めるための建物や物品が｠できあがる〉の意。

【起（た）つ】⚠　 #21

　〈起きあがる〉の意。

　転じて〈行動を始める〉の意。

【発（た）つ】⚠　 #22

　〈移動を始める〉〈｟自然現（げん）相（しょう）や音などが｠発生する〉〈｟粉状や液状の物が｠上へ舞いあがる〉の意。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

【経（た）つ】⚠　 #23

　〈時が移動する〉の意。

　転じて〈｟ろうそくなどか｠燃えて尽きる〉の意。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

【点（た）つ】⚠　 #24

　〈印が付く〉の意。

　転じて〈明かりが灯る〉〈よく調べあがる〉〈注力される〉の意。

　さらに転じて〈注ぎ込まれる〉〈茶が入る〉の意。

【断（た）つ】　 #25

　〈切断する〉の意。

　転じて〈ことわる〉〈関係性を解消する〉の意。

【絶（た）つ】　 #26

　〈後継や残量などを喪（そう）失（しつ）させる〉の意。

　酒を飲むのを個人的にやめても酒はまだ存在し続くので〝酒は断つ〟もの。

　酒を絶ったら暴動です。

【裁（た）つ】　 #27

　〈布を裁断する〉の意。

【截（た）つ】⚠✗　 #28

　同義のため［裁（た）つ］を遣うことを推（すい）奨（しょう）する。

━─━─ № 1-9 (10) ─━─━

　　〖はなつ〗（タ五段動詞）

【放（はな）つ】　 #29

　〈拘束や閉鎖を解く〉〈制御や管理をやめる〉の意。

　転じて〈取り払う〉〈ものを人手に渡す〉〈制御なしに投げる〉〈追放する〉〈解任する〉の意。

　〝閉鎖区域を放（はな）つ〟〝暴言を放（はな）つ〟〝剣を放（はな）つ〟〝罪人を国から放（はな）つ〟など。

【発（はな）つ】⚠　 #30

　〈狙（ねら）いを掟（さだ）めて発射する〉〈発表する〉の意。

　〝鉄砲を発（はな）つ〟〝意見を発（はな）つ〟〝世に発（はな）つ〟など。

【縦（はな）つ】⚠　 #31

　〈技や使役獣などを操縦する〉〈機能を行使する〉の意。

　〝刺客を縦（はな）つ〟〝目を縦（はな）つ〟〝火を縦（はな）つ〟など。

━─━─ № 1-11 (12) ─━─━

　　〖おかしい〗〖をかしい〗（形容詞）

【招（を）かしい】⚠⛏　 #32

　〈興味深い〉の意。

　古語〔をかし〕に由来するもので、本来なら〔招（を）ぐ〕との動詞由来につき｛をがし｝だが、古語では濁点を省略する傾向もあって、そう書いたらたぶんぜったい通じないと思われる。

　なお「招（を）ぐ」の語源は〔処（お）ぐ〕で、〈その場に処（い）させる〉の意。

【可笑（をか）しい】⚯　 #33

　〈笑える〉〈笑わせられる〉の意。

【癡（おか）しい】⚠　 #34

　〈莫（ば）迦（か）げている〉の意。

　古語〔をこ〕に由来するため、本来こちらも｛を｝と読ませるべきだが、混同を避けるため否定的なほうには｛お｝の読みを当てる事とする。

【烏（お）滸（か）しい】⚠✗　 #35

　前提知識を要するため使用を推（すい）奨（しょう）しない。

　［烏（を）滸（こ）］は〈｟滸（みずぎわ）の烏（からす）のように｠騒がしい〉の意。

　これが一般に［癡（おか）しい］の意で通用しているが、〝〔滸〕は〈黄河ないし楊（よう）枝（す）江（こう）のほとり〉を意味し、そこで正義を名（な）告（の）って乱（らん）痴（ち）気（き）騒ぎを起こす莫（ば）迦（か）者（もの）どもを指した〟との歴史的経緯を踏まえないと、〈愚（おろ）か〉の意味合いが生じない。

【奇怪（おか）しい】⚯　 #36

　〈様子が変である〉の意。

【詭怪（おか）しい】⚯⛏　 #37

　〈疑わしい〉の意。

【噠（おか）しい】⚠⛏　 #38

　〈詞（ことば）が間違っている〉の意。

　なお一字で｛噠（ことばがただしくない）｝と読む、らしい。

━─━─ № 1-13 (14) ─━─━

　　〖こと〗（名容詞）

【言（こと）】　 #39

　〈発言〉の意。

　転じて〈言葉〉の意。

　かつては〝発した言葉によって事実が表現される〟との思想により［事（こと）］と混同されていたが、やがて区別するようになるとこちらは「言（ことの）葉（は）」「言（こと）葉（ば）」と云（い）うようになった。

【事（こと）】　 #40

　〈事実〉〈事柄〉の意。

　転じて〈取り決め〉の意。

　さらに転じて〈理（り）窟（くつ）〉〈訳（わけ）〉の意。

　日本語において〈理（り）窟（くつ）〉〈訳（わけ）〉の意味を持つのは、かつて［言（こと）］と混同されていた事によるもので、〔事〕という字自体がそのような意味を持つわけではない。

【異（こと）】　 #41

　〈重大な事（こと）であること〉の意。

　〝もし足りてなかったら異（こと）だ〟など。

　一般に否定的な事態について云（い）う。

【殊（こと）】　 #42

　〈格別な事（こと）であること〉の意。

　一般に肯（こう）定（てい）的な事態について云（い）う。

【縡（こと）】⚠　 #43

　〈経緯〉〈連なった複数の事実〉の意。

　転じて〈理由（わけ）〉〈そういう事実だったという事にすること〉の意。

━─━─ № 1-15 (16) ─━─━

　　〖なん〗⛏（名詞）

【胡（なん）】⚠⛏　 #44

　〈疑わしいさま〉〈乱（みだ）りなさま〉〈怪（あやふ）耶（や）なさま〉〈据（す）わりないさま〉〈根拠ないさま〉〈甚（はなは）だしいさま〉の意。

　この意味で｛何（なん）である｝と表記される場合がよくみられるが、〔何〕の字義としては〈どれとまでは判明していないがとにかく特定の某（なにがし）かを指し示す〉もので、当該語義には不相応というか全然関係ないと思われる。

━─━─ № 1-17 (18) ─━─━

　　〖ぞ〗（副助詞）

【卒（ぞ）】⚠　 #45

　〈それの一端〉の意。

　転じて〈その半端もの〉〈なんだかよくわからないもの〉〈よく知りたくもないもの〉の意。

　〝課題やっとらんの誰（だれ）卒（ぞ）〟など。

　助詞の「〜か」に相当し、直前の語を強調ないし見下して云（い）うもので、ちなみに助詞「〜か」は、｛〜彼（か）｝と表記できる。

　〔卒〕は〈十人単位で固められた兵〉転じて〈下（しも）部（べ）〉の意。

【啐（ぞ）】⚠⛏　 #46

　〈そうである〉の意。

　〝アイツだけ課題やってねえ啐（ぞ）〟など。

　言いきり詞（ことば）の直後に付与して驚嘆やお仕着せ的な揶（や）揄（ゆ）など、何らかの情動を含めるもの。

　〔啐〕は〈驚く〉〈叫ぶ〉〈舐（な）める〉〈飲む〉の意。

━─━─ № 1-19 (20) ─━─━

　　〖なんぞ〗（名詞）

【何（なん）卒（ぞ）】⚠⛏　 #47

　〈様子の不明であるもの〉の意。

　〝これって何（なん）卒（ぞ）〟など。

【胡（なん）卒（ぞ）】⚠⛏　 #48

　〈程度の胡（でたら）めなもの〉の意。

　転じて〈程度や内容の奇怪（おか）しいもの〉の意。

　〝胡（なん）卒（ぞ）か言ったか〟など。

☞ 懐（かい）疑（ぎ）の念を抱く対（たい）相（しょう）に言及するときの代名詞として一般に遣われる。

━─━─ № 1-21 (22) ─━─━

　　〖なんぞ〗〖なんて〗〖なぞ〗〖など〗〖ら〗（副助詞）

【胡（なん）ぞ】【胡（なん）て】【胡（な）ぞ】【胡（な）ど】⚠⛏　 #49

　〈程度の成っていないもの〉〈それごときのもの〉の意。

　組成は〔胡（でたらめ）卒（ぞ）〕。

【等（など）】【等（ら）】⚠　 #50

　〈その類（たぐ）いに分類できるもの〉〈それっぽいもの〉の意。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

【抔（など）】⚠　 #51

　〈種類にこだわらず一定の範囲にあるもの〉の意。

　なお〔抔〕の字義は〔掌（てのひら）で掬（すく）う〕。

━─━─ № 1-23 (24) ─━─━

　　〖かならず〗（副詞的名詞）

【必（かなら）ず】⚠　 #52

　〈決め事を違（たが）えぬよう心掛けて〉の意。

【定（かなら）ず】⚠　 #53

　〈きまって〉〈定理的に変わらず〉の意。

　こちらの意味で［必（かなら）ず］と表記するのは字義不相応。

━─━─ № 1-25 (26) ─━─━

　　〖むく〗〖はぐ〗（カ五段動詞）

【向（む）く】　 #54

　〈物の面を一定の方角に面するようにする〉の意。

　転じて〈適する〉〈気に入る〉の意。

【対（む）く】⚠　 #55

　〈対面する〉〈目当てのものに対置する〉の意。

　転じて〈対抗する〉の意。　

【剥（む）く】⚠　 #56

　〈本体から外皮を裂（さ）き落とす〉の意。

　転じて〈包装を除去する〉〈人から衣服や身分などを取り上げる〉の意。

　組成は〔脱（む）ぐ〕と思われる。

　外皮よりも内容物のほうに用がある場合に言う。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

【剥（は）ぐ】　 #57

　〈外皮を本体から裂（さ）き取る〉の意。

　転じて〈物品や身分などを奪い取る〉の意。

　組成は〔放（は）ぐ〕と思われる。

　内容物よりも外皮のほうに用がある場合に言う。

━─━─ № 1-27 (28) ─━─━

　　〖ない〗（形容詞）

【無（な）い】　 #58

　〈所有しない〉〈存在が否定される〉の意。

　対義は「有（あ）る」。

　〝それは無（な）い〟など。

【虚（な）い】⚠✗　 #59

　代替可能のため［無（な）い］を遣うことを推（すい）奨（しょう）する。

　〈存じない〉〈認識されない〉の意。

　対義は「存（あ）る」。

　〝記憶に虚（な）い〟など。

【空（な）い】⚠⛏✗　 #60

　代替可能のため［無（な）い］を遣うことを推（すい）奨（しょう）する。

　〈所在しない〉〈位置していない〉の意。

　対義は「在（あ）る」。

　〝そこに空（な）い〟など。

【非（な）い】⚠⛏　 #61

　〈命題は偽（ぎ）である〉〈定義に該当しない〉の意。

　対義は「是（あ）る」「如（あ）る」。

　〝そうでは非（な）い〟など。

　こちらの意味で［無（な）い］と表記するのは字義不相応。

【不（な）い】⚠⛏　 #62

　〈動作を実行しない〉の意。

　転じて〈動作を禁ずる〉の意。

　〝そう為（し）不（な）い〟〝それは行け不（な）い〟など。

　こちらの意味で［無（な）い］と表記するのは字義不相応。

　なお「不燃ごみ」は〈燃やさないごみ〉であって、〈燃えないごみ〉は「不燃性ごみ」ないし「非燃ごみ」であるし、またこれは「可燃ごみ」でも同様のため、塩化ビニール類などは「可燃性ごみ」ではあっても「可燃ごみ」では非（な）いので出さないでください本当にマジお願いします。

　あ、ポリ袋などは「可燃」なので大丈夫です、塩化ビニールは硬くて丈夫でだいたい厚手のやつです、見分け難しかったらとりあえず「不燃ごみ」で出しちゃってください。

【亡（な）い】⚠　 #63

　〈生きていない〉〈故人である〉の意。

　語源は〔無（な）い〕。

　〝もう亡（な）い〟など。

【成（な）い】⚠⛏　 #64

　〈成さんばかりである〉〈まさにそうである〉の意。

　〝切（せつ）成（な）い〟〝大（おっ）怖（か）成（な）い〟など。

　古語において｛〜ない｝は形容詞を作る接尾語であり、これは例えば「切（せつ）なし」「切（せつ）なる」のように形容詞と副詞を切り替える表現のように思われるが、しかし［無（な）い］と紛らわしく、これに［成（な）い］と漢字を当てれば解釈上すんなり通る、との提案をするもの。

　おそらく［無（な）い］系のほうは「〜が無（な）い」のように助詞をはさむのが正式であり、それを省略するようになったせいで区別がつかなくなったかと考えられ、そういう観点では「問題ない」なども〈問題の無いさま〉ではなく〈問題であるさま〉の意となるべき語だとは言える。

☞ よく考えたら、肯（こう）定（てい）「ある」が動詞、否定「ない」が形容詞、って言語の構造としておかしゅうない？

　古語の段階では、「ある」の否定は「あらず（ざ上二段動詞）」か「あらざる」で、整合性は取れてたんよね、、、

━─━─ № 1-29 (30) ─━─━

　　〖ある〗（ラ五段動詞）

【有（あ）る】　 #65

　〈｟論理的に｠存在する〉〈所有する〉の意。

　〝在庫が有（あ）る〟など。

【在（あ）る】　 #66

　〈｟物理的に｠存在する〉〈所在する〉の意。

　〝在庫は倉庫に在（あ）る〟など。

【存（あ）る】⚠　 #67

　〈｟認識的に｠存在する〉〈所存する〉の意。

　〝在庫数は頭に存（あ）る〟など。

【如（あ）る】⚠⛏　 #68

　〈｟事実を伴って｠相当する〉の意。

　〝在庫数は十で如（あ）る〟など。

【是（あ）る】⚠⛏　 #69

　〈｟事実に関わりなく｠肯（こう）定（てい）する〉の意。

　〝在庫とは保険で是（あ）る〟など。

【或（あ）る】⚠　 #70

　〈想定可能である〉の意。

　転じて〈仮定される〉の意。

　〝或（あ）る品が売れ筋で、在庫が切れることも或（あ）るだろう〟など。

　〔或〕は〈区切られた領域〉の意。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

━─━─ № 1-31 (32) ─━─━

　　〖うつ〗〖ぶつ〗（タ五段動詞）

【打（う）つ】【打（ぶ）つ】　 #71

　〈物を他の物に向けて強く当てる〉〈叩（たた）く〉の意。

　転じて〈強く刺激する〉〈打（う）ってこしらえる〉の意。

　さらに転じて〈準備する〉〈しかける〉の意。

【拍（う）つ】【拍（ぶ）つ】⚠　 #72

　〈規則正しく打（う）つ〉の意。

　転じて〈何かをきっかけとした動作がみられる〉の意。

【鏗（う）つ】【鏗（う）つ】⚠　 #73

　〈鐘や楽器を打（う）ち鳴らす〉の意。

【戛（う）つ】【戛（ぶ）つ】⚠　 #74

　〈戛（ほこ）で打（う）つ〉の意。

　転じて〈金属質の物を打（う）ち鳴らす〉の意。

【椎（う）つ】【椎（ぶ）つ】⚠　 #75

　〈椎（つち）で打（う）つ〉の意。

【捶（う）つ】【捶（ぶ）つ】⚠　 #76

　〈鞭（むち）で打（う）つ〉の意。

【拷（う）つ】【拷（ぶ）つ】⚠　 #77

　〈相手を打（う）ってせめる〉の意。

【撲（う）つ】【撲（ぶ）つ】⚠　 #78

　〈手や拳（こぶし）などで打（う）つ〉〈殴る〉の意。

【殴（う）つ】【殴（ぶ）つ】✗　 #79

　同義のため［撲（う）つ］を遣うことを推（すい）奨（しょう）する。

【挌（う）つ】【挌（ぶ）つ】⚠　 #80

　〈組み付きながら攻撃する〉の意。

　なお「格（かく）闘（とう）」は本来「挌（かく）闘（とう）」。

【撃（う）つ】【撃（ぶ）つ】　 #81

　〈撲（う）つ〉の意。

　転じて〈打（う）って攻める〉の意。

【射（う）つ】【射（ぶ）つ】　 #82

　〈矢や弾丸などを打（う）って飛ばす〉の意。

【捨（う）つ】【捨（ぶ）つ】⚠⛏　 #83

　〈捨て去る〉〈放置する〉の意。

【棄（う）つ】【棄（ぶ）つ】⚠⛏　 #84

　〈廃（はい）棄（き）する〉〈処分する〉の意。

【格（う）つ】【格（ぶ）つ】⚠　 #85

　〈事を糾（ただ）す〉の意。

　転じて〈取り組む〉の意。

【伐（う）つ】【伐（ぶ）つ】⚠　 #86

　〈木を切り倒す〉の意。

　転じて〈｟悪者を｠攻め滅ぼす〉の意。

【討（う）つ】【討（ぶ）つ】　 #87

　〈寸（きまり）にしたがって格（う）つ〉〈寸（きまり）にしたがって伐（う）つ〉の意。

【征（う）つ】【征（ぶ）つ】⚠　 #88

　〈格（う）って平らげる〉の意。

　転じて〈出陣する〉の意。

　さらに転じて〈出発する〉〈登場する〉〈名（な）告（の）りを挙げる〉の意。

☞ ［ぶつ（ゔつ）］は［うつ］の濁音減価であり、〈不当にうつ〉〈乱暴にうつ〉のような粗悪な意味合いを演出するもの。

━─━─ № 1-33 (34) ─━─━

　　〖うかがう〗（ワア五段動詞）

【伺（うかが）う】　 #89

　〈立ち入ることによって状況を知る〉の意。

　転じて〈尋（たず）ねる〉〈訪（たず）ねる〉の意。

【窺（うかが）う】⚠　 #90

　〈見づらいものを見たり察することによって状況を知る〉〈気配や手掛かりなどから状況を察する〉の意。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

【覗（うかが）う】⚠　 #91

　〈隠れがちなものを見ることによって状況を知る〉の意。

　使用頻（ひん）度（ど）のわりに常用の読みではないので注意。

【覘（うかが）う】⚠　 #92

　〈ぬすみ見る〉の意。

【俔（うかが）う】⚠　 #93

　〈しのび見る〉の意。

【偵（うかが）う】⚠　 #94

　〈人の様子をさぐる〉の意。

【遉（うかが）う】⚠　 #95

　〈成り行きをさぐる〉の意。

【斥（うかが）う】⚠　 #96

　〈進む方向の様子をさぐる〉の意。

【候（うかが）う】⚠　 #97

　〈特徴や兆候を見て取る〉の意。

━─━─ № 1-35 (36) ─━─━

　　〖おどろく〗（カ五段動詞）

【驚（おどろ）く】　 #98

　〈心を強く揺さぶられる〉〈感嘆する〉の意 。

【愕（おどろ）く】⚠　 #99

　〈心を脅（おど）かされる〉〈びっくりさせられる〉の意。

━─━─ № 1-37 (38) ─━─━

　　〖しょうじ〗〖たいじ〗〖だいじ〗〖じょすうじ〗（数詞）

【小（しょう）字（じ）】　 #100

　〈単一または複数の組み合わせて数量を表現する漢字〉〈一般漢数字〉の意。　

　〝〇（れい）・〇（ぜろ）、一（いち）・一（ひと）、二（に）・二（ふた）、三（さん）・三（み）、四（し）・四（よ）・四（よん）、五（ご）・五（いつ）、六（ろく）・六（む）、七（しち）・七（なな）、八（はち）・八（や）、九（きゅう）・九（ここ）・九（く）、十（じゅう）・十（とお）、廾（にじゅう）・廿（にじゅう）、卅（さんじゅう）・丗（さんじゅう）、百（ひゃく）・百（お）、千（せん）・千（ち）、万（まん）・万（よろず）〟など。

【大（たい）字（じ）】【大（だい）字（じ）】　 #101

　〈改（かい）竄（ざん）防止のため故意に複雑化させた数詞〉の意。

　〝零（れい）・零（ぜろ）、壹（いち）・壱（いち）、貮（に）・弐（に）、參（さん）・参（さん）、肆（し）・肆（よん）、伍（ご）、陸（ろく）、漆（しち）・漆（なな）、捌（はち）、玖（きゅう）・玖（く）、拾（じゅう）、陌（ひゃく）、阡（せん）、萬（まん）〟など。

　｛大（たい）｝は漢音で｛大（だい）｝は呉（ご）音（おん）という方言の差でしかなく、どちらでもよい。

　たとえば｛一｝に一線加えれば｛十｝、さらにもう一線で｛千｝に無理なく改（かい）竄（ざん）でき、正確な数字が重要である文面においてはこれだと本当に困るので、自然発生でなしに意図して定義された。

　ここに挙がっているものは、「弐（に）」を除いてすべて当て字である。

　｛零（ぜろ）｝は訓読みであり、原語は〔zero（ゼロ）〕。

【序（じょ）数（すう）字（じ）】⚠⛏　 #102

　〈序数を特に表現するための漢数字〉の意。　

　〝伶（れい）・伶（ぜろ）、弌（いち）、弍（に）、弎（さん）、仕（し）・仕（よん）、伍（ご）、仂（ろく）、佚（しち）・佚（なな）、伐（はち）、仇（きゅう）・仇（く）、什（じゅう）、佰（ひゃく）、仟（せん）、偶（まん）〟など。

　厳密には「序数」は数量を表す数詞ではなく、〈順番や番号を伴ってそれに該当するものを示す代名詞〉であるため、計算などに用いれる性質のものではない。

　本来なら小字や大字の直前に｛第｝をつければ序数になるが、この｛第｝が省略されるケースがあまりに多く、その混同を避けるため例に挙げる通り、英語における〝first（ファースト）、second（セカンド）、third（サード）……〟などに相当するものとして、これを定義し、ここに提案するもの。

　なお〔弌〕〔弍〕〔弎〕は元より序数字として用いられている模様。

　また〔貳〕〔弍〕が正式であり〔貮〕〔弐〕は誤字とされ、〔武〕がその誤字の元と推定されるがこの字の部首は｛止｝であり、｛⿱一弋｝のような構えの部首は存在しない。