餓鬼のにおい

 ぽた、と雫が重くはね、地に溶ける。おあずけを食らう犬、の、唾液が、今か今かと瞳まで潤ませて、吐息は浅く深くを行き惑う。その事だけで、頭が熱くなる。脳までじんわり汗をかく。唇をぺろりと温めて、最初の一口。の、直前、瞬間、強く立ち昇る餓鬼ガキのにおい。全身の毛穴が開きそばだち、身体中の皮膚が恥じらうあのにおい。まるみを帯びた肉厚な舌だけが、茹だったように赤く、熱く、落ち着いている。


満たされてはならない。






*餓鬼

生前の行いにより常に飢えと渇きに悩み苦しまされている。食べ物を見ることができたとしても、それを口に運ぶ瞬間に炎となってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る