第30話 タコライス
桃崎さんを駅まで送った柚花が帰ってきた。
「ただいまです。すいません料理やらせちゃって」
リビングまで来ると、すぐに柚花も手伝おうとしてくれた。
「おかえり。大丈夫だよ。こちらこそごめんね、桃崎さんとの遊びにお邪魔しちゃって」
「なに言ってるんですか。さくから誘ってるんですからいいんですよ。ほら、すぐ作っちゃいましょう。お腹空きました」
「うん!そうだね」
今日のご飯はタコライス。独特な味がクセになる料理。
元々簡単な料理なのに二人でやったもんだからすぐに終わってしまった。
全く違う中身だけど、今日はタコ付くしだ!
「「いただきます!」」
柚花はタコライスが初めてと言っていた。
さて、どんな感想を言ってくれるだろうか……。
「んっ!!これ、美味しいですね!!タコライスと言われて全然味にイメージ湧かなかったんですけど、まさかこんなに美味しいとは。今度私も作ってみますね!」
高評価だったみたいだ。柚花はこういう時は嘘をつかない。それは僕も同じ。お互いに一度だけ、美味しくないと言ったことがあるからだ。
今更嘘ついて持って感じだろう。
そんなことは置いておいて、柚花の格好について聞いてみようと思う。
もし隠してると言うなら僕も隠さないと行けないからだ。
「なぁ、柚花」
「はいなんですか??」
「柚花は桃崎さんに外行きの格好しか見せてないのか?」
正直になんて聞けばいいかわからなかった。
だって正直に地味な柚花は見せてないのか?なんて言えないからね。
「外行きの格好??あぁ〜凛くんは家の中での私もみてましたね。そうですね、私が家の中の格好を見せるのは家族以外には凛くんしかいませんよ。さくを信用していないわけではないですが、見せたことはないですね……でも隠しているわけでもないですかね。他の人には隠していますが。さくなら見られて持って感じです」
外行きの格好で伝わってくれてよかった。
僕のことを信用してくれたのはわかった。とても嬉しいことだが一つだけ疑問があった。
信用している人しか見せないのであれば、僕は最初から信用されてることになる。
だって、僕は初めて会った時から柚花の地味な姿を見ているのだから……いや、僕からしたらその姿こそ柚花と言っても過言ではないのだ。
確かに外行きの時ももちろん可愛い、けど、最近は地味な時に滲み出てくる可愛さが僕の心臓により高いダメージを与えてくる。
「だとしたら、僕は最初から柚花に信用されてることになっちゃうけど……」
「言われると思いました……あれは本当に油断してたんですよ。でも、その姿を見せても凛くんは普通に接してくれた上に、私の外行きの格好を見ても態度を変えなかった。私にとっては、それだけでも他の男子とは違うと思いましたし、信用に値することだと思いました」
そうだったのか……そもそも別の人だと思ったし、なんとも言えないけど。
何度も言うけど、僕からしたら地味な柚花の方が好きなのだ。
その姿を家族以外は僕しか知らないと言うのも嬉しい限りである。
「そうなのか……それならよかったけど」
「はい!逆に凛くんはなぜ私を信用したんですか?」
おっと……逆に質問を返されてしまった。
何と答えようか。
柚花を信用した理由はあるのかと言われたら確かな答えは出ない。
気付いたら信用していたからだ。
だが、映画で関わることで信用していったと言うのはわかる。
さらには、熱を出した時にはもう信用していたと言うことだ。
映画で出会っときは、頭おかしい人だと思っていたけどね……絶対柚花には言えないけど。
「そうだね……僕は映画を一緒に見るようになって、映画を通して柚花のことを知ったと言うのが大きいかな。後は……熱出した時、あの時には勝手に柚花が家に入っていたとしても、何故いるか質問はしたけど、嫌だとも思わなかったし、居ることに対する不安もなかったかな。だから、僕は徐々に信用していったが正直なところだと思う」
「そ、そうですか……」
なんか、恥ずかしくなってきた。タコライス食べよう。
今日は土曜日、明日はいつもなら映画に行く日だ。
本当は今日も行くはずなんだけど、流石に体育祭の後と言うことでなしになっている。
「柚花、明日はどうする?」
「明日ですか?」
「うん。ほら、映画を見に行くかって」
僕がそう言うと、なにを当たり前のことをみたいな顔をされてしまった。
「行くに決まってるじゃないですか。私と行くの嫌になっちゃったんですか?」
「そんなわけあるか。体育祭で疲れてないかなって思っただけだよ」
「そうだったんですね。今日休めましたから、明日は久しぶりにいっぱい見ましょうね」
柚花の中では行くことが決まっていたみたいだ。
明日は久しぶりにワンデーパスでも買おうと思う。見たいのも幾つかあるしね!
「あ、でもそろそろテスト近づいてきますね」
「うわぁ、そうだ勉強しないと。でも、それさえ終われば……」
「夏休みですね!どこが2人で遠出とかしたら楽しそうです!!」
「え?」
「え?あ……いや、行けたら嬉しいなって思っただけですよ」
「でも、遠出か――たまにはいいかもな。2人で夏休み前に計画立てようか」
「え!!いいんですか?やったね!約束ですからね!」
柚花の突然の発言にはびっくりしたが、もっと柚花を知ることができるし、僕自身出かけたいと思った。
もし出かけられたら…………本当にデートとなるのでは??
まだ行くかも決まってないのに、僕は夏休みが楽しみになってきた。
僕って単純だよな。
僕たちは、先に映画のことを決めることになった。
テスト勉強を始める前、最後の映画になるだろう。
絶対楽しもうと思う。
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30話読んで頂きありがとうございます!
夏休み前までが一章となります。まだ章表記していませんが、、、
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