第5話 まさかあの青園さん・岡くんだったとは
4作目の映画は有名な少女漫画を実写化したものだった。
僕は見たことないのだがとても人気な漫画らしく、漫画化してから実写化までのスピードが少女漫画の中では過去一番早いらしい。
普段ならこう言った映画は見ないのだが、流石に5回連続で見ると疲れるし、5回目の映画は見たい映画のうちの一つで楽しみにしていたので休憩を兼ねてこの映画を選んだのだ。
それなら5回目に備えて見なきゃいいじゃんと思うだろう。
しかし、僕はワンデーパスを買ったのなら出来るだけ映画を見たいのだ……と言うより映画館の中に居たいのだ。
今回はドリンクだけにして劇場内に入った。
劇場内はカップルや女子たちの比率が多かった。
それに、人の数も先程よりも明らかに多い。
いつもなら隣に誰か来るかも、と心配になるのだが、例の美少女が隣にいる事がわかっているので心配する必要がない。
なんだかんだ、僕は助かっているみたいだ。
だけど……男はみんな危険みたい目で見られるのだけは息が詰まりそうで嫌だった。
そう思っていたら、入り口の方から例の美少女が階段を上がって来た。
人が多くなった事で改めて気づいた。
周りの男達から色んな感情が含まれる視線を例の美少女が浴びている事に……それに彼女連れの奴らからも。
こんな視線受けたら、誰だってあんな目になるよな。
素直に同情してしまう。
そして隣に座った美少女に僕はまた話しかけてしまった。
「毎回あんな感じなら大変だね」
しまったと思ったが、僕の正直な思いだったので無視されたりするならそれでいいやと思った。
「どう言う意味……あ、周りの視線のことですか。大変と言うよりかは、気分が良くないと表現した方が正解ですね。嬉しくもないですし」
あれ?今回はちゃんと返してくれた。
ちゃんと話せるのか……
「逆に貴方はそう言う目では見てこないのですね」
僕と周りの男を一緒にしないで欲しいね。
美少女だとは思ったけども、それ以上でもそれ以外でもないのだ。
彼女は美少女、僕の感想はそれだけだった。
「僕にとって貴方は顔が整っている美少女と言うだけ。そんな見かけただけで邪な視線なんて向けないよ」
僕がそう言うと、
「他の異性が相手なら、綺麗事を言っていると思いますが、貴方は本当に言っているのでしょうね。3回も隣で映画を見ているのに全く話しかけてこないところを見るとそんな感じがします」
話しかけないと言うか貴方の話しかけるなオーラが凄くて話しかけることすらできないんだけどね……心の中で呟く。
「まぁ、信じて貰えたのなら嬉しい限りだよ」
すると、彼女は僕に体を向けてきた。
「そうですか。まぁ、これも何かの縁なのかもしれませんし、貴方と呼ばれるのは少し嫌なので自己紹介致しますね。私の名前は青園 柚花。高校一年生です」
彼女、いや青園さんは自己紹介をしてきた。
とりあえず僕も自己紹介をしておこう。
僕も体を青園さんに向けた。
「僕の名前は岡 凛太郎。同じく高校一年生だ」
なんで僕はこんなところで自己紹介をし合っているのだろうか……そして、改めて青園さんの顔を正面から見たらどこかで会った事がような気がした。
それも一度や二度ではなく普段から。
まぁ〜いいやと思った僕は予告に集中しようとしたのだが、
「どこかで会ったことありますか??」
青園さんに質問をされた。
と言うか青園と言う苗字もどっかで聞いたことあるような……
「僕もそれは思いました。苗字もどっかで聞いたことある気がするんだけど、どっかで会った事あります?」
「質問で質問で返されても困ります。ですが、確かに岡と言う苗字は私も聞いた事があるような気がしますね……私、元々この映画は5本目に向けての箸休めみたいな意味の映画休みのつもりで予約しているので少し考えて見ます」
ちょっと待ってくれ……ここまで映画の見かたが一緒なのはもう気持ちが悪いんだが。
僕と全く同じことを考えている人なんて見たことない。
「実は僕もこの映画はその映画休み?のつもりなんだよな」
「そうなのですか。なんか私たちはやっている事が似ているのかもしれませんね」
なんかこれを無表情で言われるのは怖いが、やっぱりそう思うよな。
一人が好きな僕でも友達になれたら仲良くなれるんだろうな、と思った。
そのタイミングで辺りが暗くなったので今度こそ僕と青園さんは話を止め、集中するのであった。
――――――――――――――――――
4本目となる映画の本編が始まる前に、私は隣に座っていた彼と自己紹介をしました。
なんとなくこの人は大丈夫だと判断したからです。
そして聞いた名前が岡 凛太郎。
私と同じ高校一年生でした。
それよりも……どこかで会った事があるような気がします。
それに岡と言う苗字もどこかで聞いた事があるような……
映画の本編が始まりました。
申し訳ないですが、思っていた通りあまり面白くはないですね。
ですので、先程の気になった事をもう一度考える事にしました。
岡……私の友達、知り合い、親戚にそのような苗字の人はいません。
では、どこで会うことがあるのでしょうか。
チラッと映画を見ると、ヒロインが主人公のマンションに遊びに来る、と言うシーンでした。
こんな簡単に男の家に遊びに行くとは……なんとふしだらな。
そう思っていると、私の中でビビッと来るものがありました。
「「……………………あ!!!」」
映画中と言うのに私は声を上げてしまいました。
そして隣で座っている彼、岡くんも同じタイミングで声を上げていました。
岡くんも思い出したみたいですね。
私は岡くんを見て思いました。
これは気付くわけない、と。
そして岡くんも私に気付けるはずがないですよね。
だって、お互い外行きの格好をしているのだから。
そんなことよりも映画中に声を上げてしまった事がとても恥ずかしいです……
――――――――――――――――――
僕は映画の内容は気にせず、ずっと青園と言う苗字の人に知り合いがいないかを思い出していた。
だが、どう考えても青園と言う知り合いはいなかった。
なぜなら、そもそも一人が好きな僕に女子の友達なんているわけがないから。
もちろん家族関係でいない事はわかっている。
それなら誰なのだろうか……
もしかしたら僕の勘違いで、青園さんが美少女だからテレビに出ている女優とかと重なってどこかであった事があると思い込んでいるだけなのかもしれない。
考える事がめんどくさくなったのでスクリーンに目を向けると、ヒロインが主人公の家に突撃しているところだった。
こんな簡単に入ってこれるマンションなんて怖くて住めないよ……とフィクションの世界にはタブーの実現世界と比較したツッコミをしてしまった。
ん?待てよマンション………………
「「……………………………あ!!!」」
映画中なのに僕は声を上げてしまった。
でも僕の中ではそれほど驚く事だったのだ。
僕の知る青園さんとは全くかけ離れていたけど、よく見ると面影があり高校生になってから知り合いとまでは言えないけどもよく話す事がある青園さんだったから。
彼女、僕の隣に座る美少女の青園柚花さんは僕の住むマンションの隣の住人である青園さんだったのだ。
隣に座る青園さんも同じタイミングで声を出していたので多分気づいていたのだろう。
そっか……青園さんは映画好きだったんだな。
なんだか僕はとても嬉しくなってきた。
その後、面白いと思っていなかった映画がとても面白く思えてきた。
本編が終わり辺りが明るくなると、周りの話し声が少しずつ聞こえてきた。
僕も我慢していたので話しかける事にした。
「「まさかあの青園さん・
岡くんだったとは」」
またもや僕たちは同じタイミングで話してしまった。
本当に今日は何回ハモるのだろうか……
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5話読んで頂きありがとうございます!
この度こちらの作品は第27回カクヨム大賞に応募する事を決めました。
まだ規定の10万字以上15万字以下には達成できていませんが3月までなのでゆっくり規定に向けて頑張っていきたいと思います。
応援よろしくお願いいたします!
応援、コメント、してくださっている読者様ありがとうございます!
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レビュー、小説のフォロー、まだされていない読者様、もしよかったらしたいってください。
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