第3話  ホットドッグ食べたかったんだな

「「え?また、かよ」ですか」


何なのだこの人は……少し頭のおかしい美少女どころではないぞ。

同じになるかもしれないのに、同じ席を取ってくる人がいるか?

否、いる訳がない。


多分あれだ、そう、この人は間違えました詐欺をして男を引っ掛けているんだ。


こんなに顔が整った人なら騙される人は多そうだもんな。


「あの、何でまたこの席にしたんですか?」


僕が質問をすると、


「なにを言ってるいるんですか?貴方の方こそ何故同じ席にするのですか?」


何……今度は罪の擦り付けだと。


「いえ……僕は一本目の映画の時からここの座席を予約していました。証拠もあります。ほら、」


そう言って、めんどくさいのでワンデーパスも一緒に見せる事にした。


「え?嘘……」


すると急にその美少女はオロオロし始めた。

ん?そんなになる必要あるか?

僕がそう思っていると。

美少女は恐る恐る僕にチケットを見せてきた。

そして、


「え?嘘……だろ」


僕も同じことを言ってしまった。


だってその美少女は、僕と同じくワンデーパスを買い、僕と全く同じ時間の映画を、僕の隣の座席で予約していたから。


思わず、(今回は気分を変えるためにメロンソーダにしたのだが)手に持っていたメロンソーダを落としそうになった。


どんな確率だよ。ワンデーパスを買い、5本とも同じ映画を予約して、さらに座席までも5回とも隣って……

これでは、まるで恋人同士でデートしているみたいではないか。


もう考えるのはやめよう。

隣には誰もいないと思い込めばいいだけだ。

そう思っていると、


「こんなこともあるんですね」


少しあたおか(今後、頭おかしいをあたおかと呼ぼう)

美少女は呑気にこんなことを言って来やがった。

もうわけがわからない。


「そ、そうですね。とりあえず今日1日?お互い干渉せずに鑑賞しましょうね」


おい、何上手いこと言ってるんだ僕は……



少しあたおか美少女が座席に座ったタイミングで劇場内が暗くなり本編が始まった。



―――――――――――――――――――――


一本目の映画を見終わった私は、二本目の映画に向けてポップコーンを購入しました。

味はもちろんキャラメルです。


先程よりも少し早めに劇場内に入り、ゆっくりしようと思ったのですが、


「「え?また、ですか」かよ」


また貴方ですか……

そして、何故貴方にそんなことを言われないといけないのですか。


もうこれで確信が取れました。

この人は正真正銘私のことを狙っています。

だって私と隣になることをわかっ……てって、それはないですね。

わかるはずはないですね……


でも、隣に座っている事は事実無根

そう思っていると、


「あの、何でまたこの席にしたんですか?」


彼からそんな質問をされた。

それに対しては、私も同じことを言えるだろうと思い言ってしまいました。


「なにを言ってるいるんですか?貴方の方こそ何故横の席にするのですか?」


すると、彼はとても呆れた顔で言いました。


「いえ……僕は一本目の映画の時からここの座席を予約していました。証拠もあります。ほら、」


と、まさかのワンデーパスと合計で5枚の座席予約がされている紙を見せてくれました。


「え?嘘……」


私は驚きを隠せず声を出してしまいました。

だって、こんな偶然見たことないから。


少しだけこれは運命なのでは?と思ってしまいましたが、すぐに頭の奥の方に押しやりました。

そして、このままでは私が悪いことになってしまうので私も見せる事にしました。


「え?嘘……だろ」


もちろん彼も驚いていました。

そうですよね、驚きますよね。

少しだけテンションが上がっている私は、


「こんなこともあるんですね」


そう言いました。

私の言葉に対して、彼は


「そ、そうですね。とりあえず今日1日?お互い干渉せずに鑑賞しましょうね」


うまいことを言いますね。

そう思いながら私は座席につきました。 



―――――――――――――――――――――



二本目の映画が終わった。


内容的には、そこまで面白くなかった。

謎解きなんてしなくても犯人がわかったし、最近人気の俳優や女優を出しておけばいい感が半端なかった。


僕は癖で周りの人が出てから出ようとしてしまう。

今回も事前にやってしまっていたのだが、隣の少しあたおか美少女も出て行こうとはしていないので、待つ事にした。


僕が他の人を待っていると、女子4人で遊びに来ていたのだろう。

4人の女子の話し声が、聞こえてきた。


「面白かったね」

「んね!○○君めっちゃかっこよかったし」

「2回目見たいかも!」

「トイレ行きたい」


なんて会話が聞こえてきた。

1人だけ違うことを言っていた気がするが……


そして、僕はつい口に出してしまった。


「「いや、つまらなかっただろ」です」


そして、またもや隣の少しあたおか美少女と同じことを言ってしまった。

でも、今回ばかりは少し驚いた。

この少しあたおか美少女はしっかり映画を見る人だったから。

だからこそつい話しかけてしまったのだ。


「これつまらなかったですよね、」


それに対して、少しあたおか美少女は


「そうですね。謎解きなんて何一つなかったですし、人気の俳優などを出演させておけば感がすごかったですので……それよりも早く出てください」


少しだけ同じ感想を持っていることに喜んだのに、最後の一言で全部台無しにされてしまった。


「あ、すいません」


そう言って僕も座席を立ち階段を降りた。

少しだけ、複雑な気持ちを抱えながらも、少しあたおか美少女からもしかしたらあたおか美少女にランクアップした。


これは、どこに向かっているのだろうか、と思いながら。





三本目の映画は海外の映画で、車がロボットに変形する子供から大人まで大人気の映画だ。


そしてこれはシリーズ三部作の最終部に当たる3作品目。


全てのシリーズ見ている僕はかなり楽しみにしていたのだが、隣にもしかしたらあたおか美少女が居ることが確定しているのでかなり楽しみが普通まで下がっていた。

まあでも、映画さえ始まれば楽しめること間違いないので何十分かの辛抱だ。





映画の時間は、お昼を挟むのでドリンクを貰うついでにホットドッグを注文する事にした。


買い終わると、僕が見る映画のアナウンスが流れ始めたので、劇場内に入る事にしたのだが、たまたま目を向けた場所にトイレから出てきたのだろう、例のもしかしたらあたおか美少女と目があってしまった。


そして、目線をホットドッグに移し、もう一度僕の顔を見てから、通り過ぎて行った。


なんだろうか……この不快感

まだ嫌そうな目をされなかっただけマシなのだが。



今回は2番スクリーン、中の構造は3番スクリーンとほぼ変わらない。

僕の座るところも変わらない。


すると、もうすっかり見慣れた、もしかしたらあたおか美少女がドリンクと…………ホットドッグを持って上がってきた。



僕は先程のあの目線の意味を理解して心の中で呟いた。


  ホットドッグ食べたかったんだな、って


___________________________________________

3話読んで頂きありがとうございます!


なんか映画館に行きたくなってきました。

今はこの時期なのでアレですが、、落ち着いたらすぐに行きたいと思います!


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