クインテット
@Mese
第1話 僕らの話し
曇り空で重苦しい憂鬱な空気が常のUKでオレ達は生まれた。
日系イギリス人の5人組で同い年で幼馴染。
親は音楽家や実業家、先祖代々と爵位を継ぐ所謂セレブの息子がオレ達の肩書きだ。
「品行方正の優等生。」
物心ついた時には既にそうなる様な教育をされていた。
親や周囲の努力の賜物か期待通りにオレ達は育ち今やパブリックスクールの4つのクラス、それぞれの監督生をも務めている。
監督生全員が日系人なのは創立以来初めてなのだとか。
純血英国人で無いことで当初は内外部から相当な反発もあったが、そんな反対意見は瞬時に蹴散らかされた。
それは監督生の中でもリーダー格にあった「カナタ」の存在が大きく関わっていた。
カナタは日系人で世界的に有名な指揮者の父とボリジョイバレエ団にいた元バレリーナのロシア人母を持つ見目麗しい少年だ。
父の黒髪と母の碧眼を受け継ぐ珍しい容姿で背も英国人の平均より高い。
幼い頃から音楽、主にヴァイオリンの英才教育を受けている。
国内のコンクールは常に1位か2位を取るほどの腕前だ。
もちろん勉強だってトップクラス。
おまけに正義感が強く誰に対しても優しい完璧人間だった。
つまりカナタは誰もが認める実力の持ち主で学園のカリスマだ。
彼の一言一喜一憂に皆が注目したし、共に行動するオレ達にも同じような羨望が注がれた。
監督生に選ばれて数週間もすると生徒達の生活態度が改善し、勉強に対する意識が高まると五月蝿い反対派らが黙った。
オレ達の話をしようとしたのにカナタの話しばかりになってしまったのは、彼がオレ達の中心人物だからという理由で仕方ないんだ。
オレの名前は「雨(レイン)」だ。
由来は雨の日に生まれたからという安易な理由で…だいたい!ロンドンは曇りか雨が常だし、まったくクソッタレな親だ。
親父は造船会社の5代目で母親は貿易会社のお嬢様で交響楽団のヴィオリスト、今はカナタの親父さんのオケに所属している。
因みに二人とも日系人だ。
お察しの通り両親は親同士が決めた政略結婚で齢17歳にしてオレにも一応の婚約者がいる。
セレブは金や名誉はあれど人でさえ自由に愛する事ができない窮屈な世界だ。
さて、オレの身の上はまた追々話すとして他の連中の番も回さないといけないから今日はここまで。
その前に、大事な事だからもう一度だけ確認して欲しい。
オレの名前は、雨.アルバート.及川。
初めまして、どうか今日は名前だけでも覚えていってくださいね。
また、近いうちに会いましょう。
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