モノクロームネスト・片翼の堕天使

御鏡 鏡

第1話

2035/11/24(土)  深夜零時三十四分 元町繁華街 長良ながら


 俺は火照る身体を持て余し、少々自棄気味になって深夜の元町の繁華街をぶらついていた。


 今日は非番で仕事はない。


 火照る身体のせいで車の運転も怪しいが、だが車を転がしてきてしまった。


 近くの路駐スペースにとめてある、いつもの金色系オロ・エリオスカラーの二〇〇一年式ランボルギーニディアブロ6.0SEである。


 俺にはヤサが二種ある、一つは自宅でもう一つはセーフハウスだ。


 今日は仕事ではないから武器は持ってない。


 前方の交差点手前で喧嘩が始まった。


 仕事中なら割り込むかもしれないが、今はむしゃくしゃしていてどうでもよかった。


 そうして無視しようとした時だった、女性のいや若い子の悲鳴が上がったのだ。


「チッ」とつぶやき、そちらに向かって走り込んだ。


 わずか三十メートル先ということもあり直ぐに接敵する、中年の男が中高生と思しき女子に手を出そうとしてスカートをつかんだところだった。


「寝ぼけてんじゃねえ!!」といいながらその手を掴み握りつぶした。


「ぎゃあ」といってスカートから手を放したが、まだ襲ってきそうな態勢のままだ。


 やむを得ず、間に割って入った。


 そいつが襲ってくる対象を俺に変えたが、思う壷だった。


 そのまま突進力を利用して持ち上げ、向きを変えて地面に叩きつけた。


 だが、そいつはあり得ない方向に首を傾けて立ち上がった。


 人間ではないのか? と一瞬で判断した。


 仕事柄こういうヤツの対処は慣れてはいるが、武器が無いから勝手が違う。


 女の子を逃がそうと思ったが、足がすくんでいて動けない上に声も出ないようだった。


 無理もない。


 異能を乗せたハイキックを側頭部に決めあるべき角度に戻しながら、脳震のうしんとうを与え運動能力を狂わせてやった。


 確実に動きが鈍った、今しかないと思い女の子の手を引っ張ってこの場から離脱を試みた。


 動きが鈍りだんだんそいつが遠ざかっていく、その足で車まで行った。


 完全に引き離すにはこの方法しかない。


 彼女をどう説得したものかと思い「ここから車で離れよう、月並みで悪いがアレは人間じゃない」とはっきりといった。


 本来は封じる側の人間だけに、こういうのは苦手だった。


「はい……」と、か細い声が聞こえた。


 車の右側に誘導してドアを斜め上に開け、彼女を乗せる。


 即左側に跳んで移り左側ドアを開け滑り込みイグニッションキーを入れ、回しながらエンジンをかけ低回転ながらアクセルを踏込み車を発進させた。


 バックミラーにそいつが映る、ギアを上げアクセルを吹かし一気に距離を離した。


 普段なら自宅だが女の子連れだ、セーフハウスの一つに行くことにした。




2035/11/24(土)  深夜零時三十五分 元町繁華街 アイ


 私はとぼとぼと、行くあてもなく夜間の徘徊をしていた。


 コンビニから出て少し歩くと交差点に出た赤だ、信号無視をしようかどうしようか迷った時だった。


 私の左側で喧嘩が起きた、酔っ払い同士のけんからしかったので無視を決め込んだ。


 喧嘩は終わったようだったが、スカートを掴まれた。


 酔っ払いを見た……? 背中に翼が映えていた片側だけ、しかも色は黒い。


「キャーッ」と突然のことだったので、地声で声を出してしまった。


 スカートを引っ張るので太もも手前くらいまでが見えてしまっている。


「寝ぼけてんじゃねえ!!」という声がして、その手が握りつぶされた。


「ぎゃあ」といってその酔っ払い? がスカートから手を放した。


 赤髪の男性だった、カッコイイと思わず思った。


 ガッシリ系で長身、外ハネミディアム系の綺麗な赤髪でその瞳は吸い込まれそうなほどに深い海の色をしたイケメンだった。


 酔っ払いはまだ襲ってきそうな姿勢だった。


 私と酔っ払いの間にイケメンが入ってくれた。


 そいつが飛びかかって来た、そのイケメンは何かの技でも使ったのかその酔っ払いを地面に叩きつけたのだ。


 だが、その酔っ払いはあり得ない方向に首を傾けて立ち上がった。


 私は動けなかった、足がすくんでいるのだ。


 声も出ない。


 そのイケメンはハイキックを酔っ払いの側頭部に決めた。


 そして私は手を引っ張られて、その場から離れた。


 金色のスポーツカーの傍まで走った。


「ここから車で離れよう、月並みで悪いがアレは人間じゃない」とはっきりといわれた。


 この人は見えている人なのかな? と思った。


「はい……」と、か細い声で答えた。


 その金色のスポーツカーはイケメンの車だった。


 それに乗せてもらった。


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