薫衣草
立花桜雪
第1話
「別に死にたいわけじゃないよ?」
君は屋上で少しでも動けば落ちてしましそうな場所でそう言った。
(こいつは何を言っているんだ・・・)
「じゃあ、何をしているの?そんなところで」
興味もないのにそんなことを聞いた。
君はくるっと振り向いて、にっこり微笑んだ。
「なぁにー?心配してくれてるの?」
そう言いながら彼女は僕の隣まで移動して、腰を下ろした。
「僕には君が死にたいようには見えなかったよ。」
彼女は男女問わず人気があり、いつもいろんな人に囲まれている。僕とは背中合わせで立っているような、そんな人だ。いつも笑顔で、常に気配を消して日々過ごしているような僕にまでその太陽のような笑顔で微笑んでくる。そんな彼女が死にたいと思うほどの悩みを抱えているようには見えなかった。
「相変わらず君は冷たいなー」
そう言った君は少し悲しそうな顔で笑っていた。
僕は珍しいと思った。
彼女、吉野茜と出会ったのは今年の春だった。
「山田そうくん?」
君は隣の席の僕にそう話しかけてきた。
「あおいです。」
僕の名前は山田蒼。昔からよく間違えられる。
「へー。いい名前だね。」
君はそう言って花が咲くような笑顔で微笑んだ。
これが彼女とのはじめての会話だった。
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