冷たい彼女の落とし方
かにくい
第1話 可愛くて病んでて可愛い彼女
「ねえ、佐紀君。私他の女の人としゃべらないでって言ったよね?」
「でも、プリント渡さなきゃいけなかったし」
「でもも、デモもジェノサイドもないわ。そんなの無言で渡せばいいじゃない」
「それだと愛想悪くない?」
「私以外に愛想を振りまく必要があるの?」
とジッと、僕の目を捉えて離さない。
端正な顔立ち。
透き通るほど長くてきれいな黒髪。
日焼けあと一つもない真っ白な肌。
切れ長の目。潤いのある唇。
すべてにおいて完璧なんじゃないかと思うほどの女性である。
そんな女の子が生気のないようなどす黒い相手を飲み込んでしまうのではないかと思ってしまう瞳で、僕のことを見ている。
正直、怖いか怖くないかでいうと少し怖いが…
「銀花」
「にゃによ」
とほっぺをつままれ喋りにくそうな顔。
そんな顔も…
「可愛い」
「にゃ!?も、もぅ」
「牛さんかな?」
「牛さんじゃないもん、ネコさんだもん」
と照れてそっぽを向いてしまう。
「いっつも、こうだわ。いつの間にかあなたのペースに乗せられてる」
「そんなことないよー」
「そんなこと大ありだわ。ほんとに…もう」
と言って僕の胸に顔をうずめる。
「…いっそのこと監禁でもしてしまおうかしら」
「…ぼそっと聞こえないように言ったつもりだろうけど聞こえてるからね」
「…監禁していい?」
「ダメって言ったら?」
「いいって言うまでキス続ける」
「じゃあ言わない。僕、銀花とキスしたいもん」
「な!?も、もう。んっ…」
目を閉じ唇を僕に差し出したのでそっと軽い口付けをする。
「……」
「どうしたの?」
「むぅ、意地悪。わかってるでしょ?」
「うん。でも言って?」
「鬼畜だわ。..........もっとキスがしたい」
「いいよ」
「んっ」
そういってさっきよりも深くそして長くじっくりキスをする。お互いの口内を侵食しあい唾液が混ざり合う。
顔を離すと、唾液の橋が架かりうっとりとした顔で見つめてくる。
可愛いなぁほんとに。でも何故かみんなにみんなに理解されないからなぁ。
「別に他の人に理解されなくてもいいもん」
「心の中をそんな簡単に読まないで」
「簡単に心を読ませる
「ダメだよ、そんなこと言っちゃ」
「でも…」
「でもも、デモもジェノサイドもないんでしょ?」
「むぅ」
すねたように唇を尖らせ、不満を訴見つめてくる
すねた顔も凄く可愛い。
こんな可愛い銀花だけれども僕だって最初はこんなに心を開いてくれなかった。というか話もしたことなかったし、逆に嫌われてというか眼中にもなかったんじゃないか。
「何考えてるの?」
「銀花が僕にずいぶん心開いてくれるようになったなって」
「当り前じゃない。私、佐紀の事だいすきだもん」
「最初は嫌ってたというか、興味なかったけれどね」
「…今日の佐紀は意地悪ばっかり言うからちょっと嫌い」
「ごめんね」
「いいよ。でも今は佐紀にあったばかりの私のほうが殺したいくらい嫌いだわ」
「僕の好きな人のことを殺さないで」
「今の私と昔の私のどっちが好きなのよ」
「どっちも好き」
「…ふーん」
「いや、違う。好きじゃない」
「え!?きら…」
「大好きってことだよ」
「…そんなの卑怯だわ。わたしも大好き」
俺の胸に精一杯においをこすりつけるようにすりすりしだす銀花。
これはそっけない冷たい女の子がいつの間にか少年の事を好きになり、大好きになり、そして病みだす物語である。
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