第11.5話 賢者、ライバル(?)を助ける(後編)
本日ニコニコ漫画にてコミカライズ最新話が更新されました。
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「何いってんの?」
「1年前、あんだけラセルをぶっ叩いてただろう」
「そうだそうだ!」
「えっと……。えっと……。もういいんじゃないかな?」
「殴りたかったら、殴れよ。俺様は手を出さないから。でも……。出来れば、手と腕は殴らないでくれ」
「ぎゃはははは! ――てことは?」
「サンドバック決定?」
「いいじゃん。いいじゃん。俺、昔からボルンガのこと嫌いだったんだよね」
「えっと……。えっと……。みんな、やめ――」
「「「お前はすっこんでろ!!」」」
1人の舎弟を脇に追いやる。
残った3人はたちまちボルンガを囲んだ。
後は、殴る蹴るのオンパレードだ。
「ほら! 殴ってみろよ」
「昔みたいによ」
「おい! どうした、ボルンガ!」
挑発する。
ボルンガもいよいよ我慢の限界らしい。
おもむろに立ち上がった。
顔を真っ赤にしている。
憤怒の形相で、元舎弟たちを睨んでいた。
「おうおう。やるか?」
「ルキソルさんとの約束はどうするんだよ?」
「ほら。おいらの頬はここだぞ」
舎弟たちはさらに煽る。
顔を突き出すものまでいた。
ボルンガは息を吸い込んだ。
腕を振り上げる。
とうとう約束を破るのか、と思った。
どすん……。
寸前で拳を止めると、また地面に座り込んだ。
奥歯をギュッと噛みしめ、耐える。
再び殴られ、蹴るの暴行が始まった。
ボルンガは亀の子になり、必死に手を庇っていた。
ボルンガの誓約は、本物だった。
……。
やれやれ……。
見てられないな!
剣気を放つ。
己の気配に、殺意、さらに魔力を載せたものだ。
すると、大気が震えた。
一陣の突風のように、梢を揺らす。
ボルンガに向けていた拳が止まる。
強烈な殺意に、子供たちは縮み上がった。
振り返る。
俺の姿を見つめると、一同の顔は蒼白になった。
「面白いことをしているね、君たち」
「ら、ラセル…………さん」
「え、ええ……」
「そうでしょ。ら、ラセルさんも一緒にどうっすか?」
「えっと……。えっと……。ぼ、ボクは何もしてないよ」
「そうだね、ぼくも混ぜてもらおうか」
俺はボルンガの前に立った。
頬が腫れ上がっている。
ただでさえ大きな顔が、さらに膨れあがっていた。
「無様だね、ボルンガ」
正直、自業自得だ。
昔、【
けれど――。
だからといって、人間を殴る理由にはならない。
こいつが、かつてラセルに暴力を振るっていてもだ。
「なあ、ボルンガ。君の誓約は、こうだったよね。
「あ、ああ……。それがルキソルさんとの約束だ」
「そうか。じゃあ、
「は?」
俺は【
【変身】
魔法を舎弟たちに向ける。
たちまち身体が変化し始めた。
大きな鼻。小さな耳と、尻尾。
体表の色はピンクに変わり、身体はゆっくりと四つん這いのポーズを取るようになる。
「ぶひぃ!! ぶひぃい!!」
下品な声を挙げる。
そうだ。
全員醜い豚になってしまった。
(な、なんじゃこりゃ!!)
(どういうこと!?)
(ラセルさん! 何を――)
(えっと……。えっと……。僕もなの?)
何かいっているようだが、俺にはわからない。
【獣語解読】を使えば、すぐにわかるだろう。
が、魔力がもったいなかった。
「これならどう、ボルンガ……」
すると、ボルンガは立ち上がった。
ゆっくりと【筋量強化】をかける。
見事だ。
昔は随分荒削りだった。
だが、この1年間、ルキソルから教わることで、魔力を上手くコントロールすることが出来るようになってきた。
無駄なく【筋量強化】の魔法を、全身に行き渡らせる。
豚となったかつての舎弟の前に立ちはだかった。
その横に、俺も並ぶ。
「お前もやるのか?」
「言っただろ? ぼくも混ぜてって……」
(ちょ! ラセルさんも!)
(混ざるってそういうことなの!)
(いや! いやだぁぁぁぁああ!!)
(えっと……。えっと……。もうどうにでもなれ!!)
「なんか言ってるぞ?」
「さあ……。どういうわけか、たった今【獣語解読】の魔法を忘れちゃったよ」
「【獣語解読】っていってるじゃねぇか」
ボルンガと俺は、同時にニヤリと笑った。
ボキボキと指の骨を鳴らしながら、哀れな豚共を囲む。
「「覚悟しろよ、お前ら」」
ぶひぃいぃぃいいいいいいいいいい!!
豚の悲鳴が、早朝のスターク領に鳴り響くのだった。
◆◇◆◇◆
「おい。動くなよ」
「お前の【回復】の魔法……。圧が強すぎるんだよ」
俺はボルンガに【回復】の魔法を施す。
腫れた顔が次第に引いていった。
さらに細かな傷も癒す。
魔法を行使しながら、俺は尋ねた。
「ボルンガ。君は、強くなりたい?」
「ああ。お前よりもずっとな」
「ぷっ!」
「何がおかしい……」
「やっぱりボルンガは、ボルンガだなって思ってさ」
こいつ……。
ルキソルといる時は素直な癖に、俺と2人っきりになると、途端に昔に戻るんだよな。
言い方が素直なじゃないんだ。
「ぼくが強くなれる場所に連れてってあげるといったら、君はどうする?」
ボルンガは顔を上げる。
やがて、うんと頷いた。
「行く……!」
その目には強い決意が込められていた。
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