学園編1

 学年が9つ、20のクラスの計5000人以上が在籍している、14の国からなる大陸最大規模の学園--セントリーゼ。

 そのうちの1クラスに、周りから離れて座っている生徒がいた。


 少年は窓際の席で、退屈そうに空を見つめている。黒髪で長髪。髪のせいで前も碌に見えていない。


 教壇には教師が皆んなに説明をしている。その話を聞いて皆んなが面白そうに笑っている。それもそうだろう。その教師は生徒からの人気の厚い人物だから。


「おい、エネア。聞いているのか?」


 その声を聞いて前を向く。そこには自分を睨んでいる視線が無数にある。視線の理由は、話を聞いていなかったからだけではでは無い。自分がいつも1人浮いているからだ。


「すみません」


 すると、クラス全体で笑いが起きる。いや、きっと笑っているのでは無く、嘲笑っているのだろう。


 だが、そんな事をいちいち気にしていては時間の無駄だ。こんな事、日常茶飯事なのだから。


「皆んな静かに。では続きを説明するぞ。1週間後に行われる大会だが、対戦相手達が決まったからな。1ブロックにつき200人、それぞれで優勝した者が留学を許される。細かくは紙に書いてあるから、後で見とけよ。」


 そう言って教師は壁に紙を貼り付ける。


 その紙の大きさは四方2メートル程。それが3枚。対戦相手がそれぞれ書いてある。遠くからで細かくは見れないが、大体のことなら分かる。


 今回の留学は"魔術都市"だ。


 留学はその年に異なり、参加している14の国から1つ選ばれる。


 今回は魔術都市で、人気が高い国の1つだ。この国は留学先に決まる事は他国と比べても極端に少ない。選ばれるのは、この学園ができてからも今回で2度目。


 しかし、ほぼ選ばれる事がないのに人気なのには理由がある。


 都市が他国よりも発展しているからだ。魔道具が他国と比べても圧倒的に多く、その上国を開く事は特別な理由以外では無い。


 だが、焦るする必要はない。本番の試合でも、手を抜けば良い。どうせ結果は変わらない。……いつもの事だ。


 そんな事を考えながら、また自分は空を見つめ直した。

















 自由時間になった。教室が賑やかになり、更に居場所がなくなる。どうでも良いが。


「エネア〜」


 突然前から話しかけられる。顔は髪で見えないが、声的に男だろう。毎日自分に絡んできて馴れ馴れしくしてくる。……鬱陶しい。


 それに何故か一緒にいるとストレスが溜まる。


 だから、自分はあいつの話をほとんど聞いていない。たまに投げかけてくる時も、そうだねくらいしか言わない。


 名前も知らない鬱陶しい奴。自分は彼をそう思っている。


 今回も彼の話を無視する。なんか笑っているから、笑みを浮かべる。なんか話しているから、共感する。それだけだ。


 ……自分はそんな毎日をいつも退屈だと感じていた。


 --あの時までは。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る