「NTR」とか「ざまぁ」とか「もう遅い」を読んでみて、モヤモヤとした気持ちを払拭するためだけに書いた小説

久保良文

旅立ちの日──東京にて

第1話 話せばわかる

 自室の玄関をぬけるとドッキング現場であった。

 唐突にふざけた物言いをして申し訳ないとは思うが、他に言い表しようがなかった。直截ちょくせつに表現するとお下品にすぎるし、かといって芸術的かつ詩的な表現をしようにも、できない注文だ。

 おちゃらけて現状を説明するのが精々。


 とりあえずそんな状況なのだ。どうか察してほしい。


 俺の目の前には、最愛の彼女と、最高の親友がいる。

 二人はベットの上からこちらを向いて硬直している。

 当初は高揚したように頬を赤らませていた二人も、みるみる内に顔色が悪くなり、遠目に見ても青白いと分かるほどになった。現在ではまるで蝋人形のように生気がない。

 ピクリともしない二人の様子に、ああこれはこちらが動かないと事態が進まないのだろうか、と自問する。二人は先ほどから「……ぁ」とか「……うぅ」とか、言葉にならない呻き声を漏らすのみだ。どうやら頭が回っていないようである。

 ならば仕方なしと、俺の方から半裸の二人に声をかけることにした。


「とりあえず、二人とも服をきなさい。そしてそこに直る」


 未だ状況を理解しきれていないのか、のそのそと動き始めた二人を急かしてみる。端的に。


「急いでな」


 すると面白いように慌てて居住まいを正した。

 どうやらイニシアチブは獲得できているようだ。これがあるかないかで、物事の行く末というのは色々と変わってくるから、大事だ。


「話をしよう。なに、話せば分かる。話せば」


 これって俺の方が言うセリフじゃなくね、と思いつつ二人を見る。

 まるでこの世の終わりに遭遇した無辜むこの民のように震えている二人に、さてどのように話を進めたものかと思案する。

 

 いや、ほんとなんでこうなった。

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