第6話 生きるものの夢
俺は、捨てられた!
まだ、成人していないのに!
名前は『きり』と呼ばれていた。
「お前みたいな、金ばっかりかかって、サッパリ役に立たない奴なんか、出て行けっ!」って玄関から叩き出された。
あさはかにも泣いて許しを乞うとでも思ったんだろうが、俺には根性がある。
ふんっ!いいんだっ!どうせ好きな人間ではなかった。
俺は、けっこう歩いて公園に行った。そこなら、住み着いている人間がいつもいたのを思い出したから・・
・・今どき、捨てるやついるかって思って腹も立つが、一人で生きてやるって、粋がって・・公園にいるおじさんたちは優しい・・細かい事情は聞かない〜黙って、ご飯を食べさせてくれる。
俺は、少し涙目になりながらも、礼を言って静かに頂いた。
東京の忙しそうにしてる奴らは、俺が泣いていても知らんぷり。やっぱり、公園がいい。
俺は決めた。一軒家で、天気の良い日はリビングの日のあたる出窓で日光をいっぱい浴び、寒い時はストーブに齧り付き、寝るときはソフア、まあ、出来たら、可愛い女と一緒に布団に入れたらこれ以上の幸せは無い。それを夢として頑張る。
そのためには、仕事をしないとどうしようもないが、まだ子供の俺は職にはありつけない。それまで、せいぜい可愛こぶって、公園のおじさんみたいな優しい人に面倒を見てもらうしかない。そう決めた。
捨てられて以来、すっかり俺は無口になってしまった。おじさんたちには可愛がられるが会話はしない。そういう人も他にいるので、おじさんは何も言わない。
数ヶ月も経っただろうか・・お昼寝から目覚めたら、可愛い女が公園を散歩していた。見ていると、だんだん近づいて来た。
そして、俺に向かって「可愛いねえ〜」と言って、俺を抱きしめてくれた。俺はつい、その優しさに泣いてしまった。そして俺の名前も聞かず、公園に住むおじさんに「この子、私育てます!いいですか?」と聞いたら、おじさんが「良いよ〜あんたみたいな優しそうな娘に貰われたら、そいつも幸せだわあ〜」そう言ってニコニコしている。
俺は、数ヶ月一緒に暮らしたのに、なんか、寂しかったし、冷たさも感じたけど、おじさんも自分の事で精一杯なのかなあと理解することにして、『ようこ』と言うその娘の家にいくことにした。
家は割と近くでエレベータに乗って結構見晴らしのいい部屋だ。俺は、一通り各部屋を見て回った。女の娘らしく、どの部屋も可愛く清潔な感じがして、気に入ってしまった。
窓は、西向きのようだ、日が差すと暖かく気持ちよさそうだ。ソフアも俺好みの柔らかさだ。奥の部屋にはベット。あ〜ここで寝るんだ、そう思って一様上がってみる。ふっかふか・・寝心地は最高だろう・・・すべて見て回ったが、合格である。
そして、早速ご飯も用意してくれた。・・・やはり、公園のおじさんには悪いが、こっちの方が遥かに美味い。
ここで、大人になるまでいられたら良いなあと思った。
2時過ぎにはリビングに日が当たっている。すかさず、日光浴と洒落込んだ。暖かだ〜これまでの苦労を忘れしまうほどだ。
夕方は少し寒い・・と思ったら、エアコンを入れてくれたので、丁度、気持ちのいい暖かさのところを選んで、ゴロゴロした。女の娘は俺が何をやっても怒らない。あいつとはえらい違いだ。
夜、女の娘は風呂に入るため、服を脱ぎ出した。俺をガキだと思っているのだろう・・こっちは恥ずかしいから奥の部屋に逃げた。
しばらくして、風呂から上がってきて、裸のまま、いきなり俺を抱っこして、風呂に連れて行く。「さあ、『たっち』も洗ってあげるねえ・・」って、俺は、恥ずかしくって、少し駄々をこね逃げようとしたが、しっかり抱っこされてしまった。
そして、お湯に入れられ、身体中に石鹸をつけられ、遠慮なくゴシゴシ、痛いくらい洗われた。俺は、はたと「そうだ、捨てられて以降、風呂入って無いから、臭かったんだ」そう気がついた。だから、それからは、されるまま静かにしていた。
そしたら「まあ〜、良い子ねえ、ありがとうねえ、大人しくしてくれて・・」と頭を撫でられた。悪い気はしないものだ。
そのあとは、水分を十分にとり、ほとりを冷まして、寝ることにした。
「あら、寝るの早いのねえ〜じゃあ、私も寝ようかしら」という。
俺は、なんて良い娘なんだ!って思い。お礼の気持ちで、ようこに初めて言葉を発した。
「にゃ〜お〜」
そして、心地良い女の香りに包まれながら一緒に夜を共にする。夢が叶った!
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