閑話【正樹と苺の出会い】
「おっす正樹、今日の宿題見せてくれ」
「大斗……昨日ちゃんとやれって僕言ったよね?」
「あー、そーえばそうだったな、悪い悪い、購買のパン奢るから」
「はいはい、金欠だから助かるなー」
「やけに棒読みだな……まぁいいや」
正樹と大斗はいつもこんな感じの日常を送っていた。
正反対な性格に見える二人だが小学校からの付き合いなのだ。
「あ、八坂さん……」
正樹は廊下を歩く苺を見つけた、ふわふわしたあの感じからして目的も無く歩いているのだろう。
「私は〜鳥になる〜、えいやぁ〜♪」
謎の歌を歌いながら正樹のクラスを通り抜けていき……。
「苺! 朝眠いのはわかるけど一時間目の授業始まっちゃうよ!」
「ふぁ〜い」
追いかけてきた鈴に捕まり、教室へ引きずられていった。
「……なぁ正樹、お前なんで八坂のこと……」
「わー! わー! なな、なに言ってるのさ!」
「はははっ、悪い悪い! ほら先生来たぞ」
「全く……」
こうして一時間目の授業が始まった。
ただ正樹は大斗が先ほどあんなことを聞こうとしたせいで、ほとんど授業に集中出来なかった。
* * *
――数年前の話だ。
ある日の事、正樹は大斗と喧嘩をしてしまった。
そして仲直りすることもなく、嫌な気分のまま家に帰っていた。
「大斗が悪いんだ、僕は……悪くない!」
そう言ってたまたま地面に転がっていた空き缶を蹴り飛ばす。
「あたッ!」
「……え?」
蹴り飛ばした空き缶は小さな少女に当たっていた。
「ご、ごめん大丈夫!?」
思いがけないことに焦る正樹だが、その少女は笑顔で言った。
「だ、大丈夫! ちゃんと謝ってくれたから!」
少女は缶が当たったと思われる額を手で押さえていた。
大丈夫と、笑顔でそう言ったが痛みに耐えられなかったのか泣き出してしまい、正樹はさらに焦った。
「い、痛かったよね! えっと、親はどこかにいる?」
正樹は自分より小さな少女をこの時年下だと思っていた。
親はどこか聞いたが泣いていてうまく喋れないようだ。
だが、少しすると泣き声を聞いたのか親……ではなくこの少女の姉と思われる人が来た。
「え、えっとお姉さんですか?」
「え? いや、苺とは同い年だけど……苺大丈夫かー? こいつにやられたのかー?」
「鈴……そう……だけど、ちゃんと……謝ってくれて! グスッ、でも……痛くて…えぐっ……!」
なるほどと、事情を大体理解したらしい鈴は正樹に謝った。
「ごめんね、戸惑わせちゃったね」
「い、いえ! 僕が悪いんです! 僕が……悪い……」
「じゃあ君も謝ってくれたし、これで終わり! 解決!」
「うん……ごめんね? じゃあまたねぇー」
「えっ、あ……」
一人残された正樹は、たとえ自分が悪くなかったとしても謝るということを学び、その後、大斗の元へ走ってお互い謝ると無事に仲直りが出来た。
そして正樹はその少女……苺に仲直りが出来たお礼が言いたくてずっと気になっていた。
「あっ、あの子は……」
「んー? どした正樹、早く教室行こうぜー!」
高校に入学した時にたまたま苺と鈴を見かけた正樹だが、勇気が出せずお礼を言う機会を伺っていたがその間に、いつの間にか苺を好きになっていて、結局言うことは出来なくなっていたのだ。
「はぁぁあ〜……今日も無理だったなぁ……」
そう言ってベッドに倒れ込むのはほぼ毎日あることだ。
「そうだ……まだログインしてなかった、今日はフィールドでちょっと狩りでもするかな」
正樹はそう言ってゲームのハードを手に取り、《NGO》にログインした。
……そして――――。
「うわぁ! その刀カッコいいですね!」
猪を斬り刻み、バウムの刀を見てそう言ったベリーと出会ったのだ。
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