第46話 飛んで火に入るダブステップ 11
園村卓也は昨日勝に殴り倒されて、仲間である須藤清司に顔面を蹴られ気絶した後、伊知郎の通報で駆けつけた救急車で運ばれて病院に担ぎ込まれた。
診察の結果、鼻は奇跡的に折れていなかったので安堵した。
顔を包帯でグルグルと巻かれ、入院の薦めを断り病院を出ると、一本の電話がかかってきた。
電話の相手は勝にボコられた事実を把握しており叱責すると、八重を捕まえろと迫ってきた。
園村は理由を問うが、問える立場かと返されて押し黙った。
名前しか知らない女子高生をどう探すのかと問うと、昨日の客だと教えられる。
顔を思い出した園村だが、だがどうやって探すのか見当もつかなかった。
翌日、つまり今日。
途方にくれつつ女子高生を探し街を彷徨う園村に一つLINEの通知が送られてくる。
赤いコートの男を探してるらしい。
友人の友人のそれまた友人の──、辿ると何処まで行くのかわからない線から赤いジャケットの男の情報がLINEで伝えられた。
赤いジャケット? 濃赤のベロアジャケットのことか。
園村は昨日自分を殴った男のことを思い出す。
アイツは確か、森川八重の買ったドラッグを横取りしていた。
もしかしたら、何かしら関係があるのかもしれない。
だったら、リベンジマッチを兼ねてアイツを探すとしよう。
そうやって園村はLINEで次々送られてくる赤いジャケットの男情報を頼りに、勝の元へと辿り着いた。
派手な色の背広を着た三人組とやりあってるのを見つけ、勝が三人組を撃退した後に襲撃してやろうと待っていた。
しかし、初めこそ善戦してた勝がすぐに逆転され苦戦しだして園村は焦り出す。
オイオイ、てめぇをボコすのはオレの役目だろうが。
などと苦虫を噛むような表情で様子を窺っていると、ゆっくりと近づく男性が一人。
白髪混じりのオールバックに、グレーのスーツ。
男性は怪力で一人を投げ飛ばすと、超人的な動きでもう一人もあっという間に仕留めた。
園村はその動きにビビって、今はいいやと目標を変えることにした。
勝から離れる女子高生の姿を目撃していた。
電話の主の指示を後回しにしてしまっていたが、やはりそちらを優先しようと気持ちを切り替えた。
そして、追いついた。
誘拐の
それが目の前で地面に横たわりこちらを見ている。
見て、園村の様子を、どうなってしまうのかを窺っている。
園村の首には、固く太い腕が絡まっていて刻一刻と絞まってきている。
息苦しさに視界と意識が朦朧としていく。
あの女を捕まえねぇとオレは殺される。
アイツは二度目の失敗を許しはしない。
首を絞めていく腕を掴もうとも引っ掻こうともビクともしなかった。
「おっと、オチて、はいおしまい、ってわけにはいかないよ」
園村に
チョークスリーパーなどと呼ばれる。
受ける側の首に片腕を回してもう一方の片腕の肘の裏もしくは上腕のあたりを掴み、もう一方の手で相手の後頭部を押してそのまま絞めるフィギュア4と呼ばれる方法である。
肘関節内側を受ける側の首下に引っ掛けて自分の腕をV字にして絞め両サイドからの頚動脈絞めによりギブアップを狙う。
パーム・トゥ・パームと呼ばれる別の組み方もあるが、この場は省略する。
(Wikipedia調べ)
ギブアップのタップと言えば、先程から園村はもがいて邦子の腕を何度も叩いているがお構い無く絞められていた。
「一方的に女の顔をぶっ叩いて、そんな簡単に楽になれると思ったら大間違いなんだよ」
そう邦子は言って、気を失いかける寸前の園村を解き放つ。
ガクンと首を垂れて膝から崩れそうになる園村の肩を邦子は掴み、クルンと身体を反転させる。
へ?、と動揺する園村の眼前に右手を振り上げる邦子が立っていた。
「歯ぁ、食い縛りなっ!!」
邦子の怒声に園村は思わず身体を震わせる。
意識は朦朧としているが、言われるがままに歯を食い縛る。
昨日顔面を散々殴られたり蹴られたりしたので、ガタガタと奥歯が揺れ外れそうになる。
「元気があるからって! 何でもやっていいと思うなよ!! バカヤロー!!!」
大きく振り上げた右手が、園村の左頬をぶっ叩く。
平手打ち。
平手打ちは、掌で相手の体を打つ行為及び相撲やプロレスなどの格闘技における殴打技である。
各種格闘技において打撃技(殴打技)としてよく使用され、パンチに比べると拳を痛める心配が少なく、ダメージが大きくない。
あるいは大きくしないことが可能な殴打技であることから教育的な意味で使われることもある。
しかし威力がパンチに劣るとは限らず、相手を失神させたり、相手の耳の鼓膜を破裂させることもある。
(Wikipedia調べ)
何故か若干しゃくれぎみの邦子の平手打ちは、園村を吹っ飛ばした。
ビンタ一発で大の男があり得ない動きで飛ばされるのを見て、八重はぶっ飛ばすって気楽に使える言葉じゃないなと驚嘆していた。
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