第7話  時間はきまぐれ

「コピン様、どうしました?浮かない顔してますが…」


些細なことで不機嫌になる人だからまあ今回もしょうもないことかなと思いながらも一応聞く。でも…


「俺がそこそこ気に入って観察していたやつの寿命だ」


「!?それは…ご冥福をお祈りいたします」


「人の寿命は短いな…」


「そうですね…コピン様みたいに何億年も生きられるわけではないです。1秒の価値が違いますね」


「ん?ワヤ、それどっちの意味?」


「どっちとは?」


「人間の寿命が短いから俺ら神より1秒の価値が高いって意味で言った?」


「ええ、そのつもりでしたが」


「本当にそうか?」


「どういう意味ですか?」


「う~ん、例えばあのくず」


そういってコピン様は人間界のある人物を指す。

働きもせずだらだらと過ごしている。品性も知性も何も感じられない。それでもくずは言い過ぎな気が…しいて言うなら…


「コピン様みたいな人ですね」


「ぶん殴るよワヤ」


「…」


「冗談って言おうよ。そこで黙るんじゃないよ」


「で、あの人がどうしました?」


「最近生意気だね。まあそれはそうとして、あいつと俺の一秒が同じ価値か?」


「う~ん…」


「悩むのか…例えが悪かったな…じゃあワヤの先生、真理の神とあいつの1秒で比べたらどうだ?」


「先生の方が価値ありますね…なるほど…生きる時間より生き方が大事って話ですか」


「そうそう、どうせなら俺が見てて楽しめる人間は長生きしてほしいな」


「そうですね、時間は浪費してられませんね…ところでそのお亡くなりになられた人はどういった人間で?」


「えっと、神の研究をしてたやつだ」


「はあ!?」


「神の視点で神についての研究を見ることは面白いぞ、的外れなこと言ってたり地味に真実に近づいていたりな」


「性格悪いですね相変わらず…」


それでも人の死を悼むあたりましな方か…

と思ったところである本が目に飛び込んできた。


「コピン様、これなんですか?漫画以外の本を読むとは珍しいですね」


そう、コピン様なら本は作者の頭の中を読めばいいので紙の媒体で読むことは基本ない。漫画は絵も読みたいと言って大体取り寄せているが…そういうところの手回しは超早い人ですが…これは珍しい。


「ん?話してたやつの研究ノートだ」


「研究ノート?」


コピン様にとって人の研究など取るに足らないだろうに…


「ちょっと面白いぞ、えっとここ読んでみろ」


「はい、……………え?これ…」


そこに書いてあったのは…


『世の中の説明できないものというのは結局は神の手によるものだと考えられる。神の手の中で人間は生きているとさえ思える。もし神がいるのなら、私たちを見ているのではと考えている。そうでないと人間に『神』という言葉を教えた意味が分からない。崇める対象として優れた人がいるのが分かる。しかし超常的な力を持っている存在を、『神』を崇めるようになったのは違和感を覚える。それらを踏まえると世の中の不思議なことは、我々人間を見ているなのではと…』


これはちょっと私たち神からしたら驚くしかない…

なにせ…


「結構当たってません?これ…UFOも他の神のせいだとか以前に言ってましたよね?神のきまぐれなのではって…まさにきまぐれで動くコピン様じゃないですか!コピン様が閃かせました?!」


「なわけあるか、全部この人間の力だ。俺が手を出したらつまらんだろ」


「でもこれ…」


「面白いだろ?70億人も人間がいたらこういうやつもいるもんだな。もっと見ていたかった」


悔しいけどこの人を見ているのが楽しいというのは少し気持ちが分かってしまう。


「こんなことに人生の大半の時間を費やしたんだ。あまり地上では、人間界では認められていなかったし、無駄なことをしていると言われてもいたが、ひらめき神、全知全能の神、コピンの名において無駄ではなかった、俺を存分に楽しませたと言ってやろう」


それはコピン様の最大級の賛辞と言ってもいい。

私からも感謝するとしよう。何でもできる神様の娯楽というものは思っているより少ない。コピン様が人間の恋愛関係を眺め出してしまうくらいには、ない。人間界でどう言われようとも無駄じゃなかったのは間違いない。


「さてと、じゃあ俺はゆっくりと寝るかな…」


「はい、おやすみな…いや待ってくださいコピン様、なんだかんだ言って全然仕事してません」


「え~今日はそんな気分じゃない…80時間くらい寝てるからその後ね」


「人間界の『今日』という言葉は最長でも24時間ですよ」


「問題ない…喪に服すんだよ」


「寝ることがですか?」


「そうだ、大事なことだぞ~」


「ではこちらの静かな空間へどうぞ」


「やだ!てか何その異空間!?いつ作ったの!?布団がちゃんとあるのなんなの?」


「喪に服すのでしょう?いいじゃないですか。80時間寝ててください」


「俺は枕が変わると…」


「同じ枕をご用意してあります」


「いやだ、その部屋じゃゲームができない!」


「ほら、ゲームじゃないですか!?時間の使い方の話はどうしたんですか?!」


「人間の娯楽を知ることも…」


「プレイ時間カンストする必要はないです!!!」


この言い合いが1時間続いた…

一番無駄な時間はこれだったかも…


――あとがき――

超~久しぶりの投稿になってしまった。ごめんなさい。


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