ひらめき神のきまぐれ
グレイジー
第1話 力とひらめき
「コピン様?死んでますか?」
「聞き方逆じゃない?普通生きてますか?でしょ。簡単に上司殺すんじゃないよワヤ」
「そうですか」
「もうちょい上司を敬いなさい」
「尊敬できる上司になってください。寝っ転がってないでひらめき神の仕事を真面目にしてください」
「口やかましい部下をもってしまったものだ…」
はあ…この人は本当に…いい加減すぎて困ります。
ひらめき神コピン様…全知全能のだらけ者。
これでも本当に全知全能なんだからとんでもない話です…
現に今も…
「じゃあ世界中の思考読み取るから、面白そうなのあったら見に行こ」
「了解しました」
明らかに離れ業を成し遂げる。私も神ではあるけど…世界中の人間の思考の読み取りなんてできない。
しかも…
コピン様が読み取った思考が私の中にも流れてくる。私にも誰に手を出すか選ばせるのだこの人は。気まぐれすぎる。
そんなことを考えてたら良いのがあった。
「これどうですか?地球温暖化等の環境問題をどうやって解決しようか真剣に悩んでる人がいますよ?」
「ん?あ~相変わらずくそ真面目だな~。それにこういうのは…いやまあいいかすぐわかる」
一瞬迷ったような表情をしたコピン様。お気に召さなかった?
でもこの人間に介入することに決めたらしい。
「で?この人は?あ~環境保全とかの活動をしている人なのか。ほうほう?」
「真面目に取り組んでますね。だからこそ地球の危機にもより真剣に考えているのでしょう。コピン様の与えるひらめきで助けてあげましょうよ」
「まあまあ、ひらめきって言ってもそんな便利なものじゃないんだよ?ひらめくことはあくまで対象の人間が思いつきうるものでないといけない。知らないことはできない」
「そうですけど…」
「だから今からこの人間の記憶、人生をすべて読み取る。その中からひらめきを作る。それが思いつきうるということだ。どんな些細なことでも記憶のどこかには残ってるものだからな」
「なるほど…あ、これが記憶ですか」
「そうそう」
コピン様が読み取った記憶が私にも流れてくる。なるほど…普通に優秀な優等生タイプだ。学生時代もしっかり勉学に励んでいる。
「さて、じゃあやるか」
「え?もう与えるんですか?」
「ん?まあたいしたことじゃないし」
なんて人だ…私はまだ環境問題解決の策は思いついていない…神なのに…
それをもう…
パチンッ
コピン様が指を鳴らす。これがひらめきを与えるときの動作である。
つまりもうひらめきを与えたということだ…
「どのようなひらめきを与えたのですか?」
「ん?見てりゃ分かるよ」
そう言うコピン様。私も先程の人間の思考を読み取る。
「俺なんかが…何考えてるんだか…世の中のすごい人はもっと若くから活躍してるってのに…」
え?
「こんな大きなことを…今ずっと考えるのは無駄だよな…」
待て待て待て
「ほんとに何をひらめかせたんですか?」
「勉強熱心だったからな、何人かノーベル平和賞とかの受賞者のニュースを見てた記憶があったからそれを思い出させた。年齢とかもな。この人間より若くして才気ある人間の活躍だ」
「なんでそんなことを!?」
ありえない…やる気をそいで、嫉妬と失望を与えただけじゃ…
「まさか本当に環境問題解決の策を与えると思ったのか?」
「違うのですか?」
「仮にそれを思いついたとして?どう実現する?こんなちっぽけな人間ごときが」
「それができるようにひらめかせるのでは…?」
「無理だ、方法はあっても実現できん」
「そんな…諦めろと?」
「そうだ、こいつにはどうにかできるだけの能力も、金も、人脈も、権力もない」
「ッツ!?」
「身の丈に合わない考え事だったんだよ、だからこそ諦めさせた。馬鹿馬鹿しいからな」
「真剣に憂いていた人になんてことを!!」
「だからこそ、諦めさせて、自分にできることに向き合わせた」
「え?」
「こんな人間ができることは目の前のことだけだそれに集中するほうがよっぽどいい。環境問題は少なくともこいつが生きてるうちに解決はしないだろうが、まあ真面目にやってたら解決の0.0000001歩分くらいにはなるだろ。そんくらいでいいんだよ」
確かに先程の人間を改めて見ると少しだけ、以前よりも心が軽くなったように見られる。
「そこまで考えて…」
「今回の件を持ってきたワヤに教えておこうと思ってな。力を持つものには責任が生じる。人間界でも政府の者にはそれなりの権力、金、動かせる人がいるだろ?あいつらはそれだけの力を持ってしまった責任がある。だからこそ能力も、行動力も必然と求められる。まあ自分の金やら権力に囚われている愚かな印象があるがな。何もできないそれ以外の人間どもが好き放題言ってるのも愚かではあるが…それはそれだ。つまり俺ら神は誇張抜きで人智を超えている。力を持っている。責任があるんだ。綺麗ごとだけじゃもてあますぞ」
「…はい」
普段だらしないコピン様のイメージがあったから…でもここまで考えていたのか…
私が未熟だった…
人間をより良い方向へと思っていたけど…そうだ、この人に奇跡的な案を与えても…
もてあまし、下手したら潰れてしまうかもしれない。
そしてその引き金をよりによって神である私が引くところだった。
「じゃあ~おれはまたゲームの続きしよーと」
そう言ってコピン様は自室に入っていく。
入るときにちらっとゴミ屋敷が見える…
「お待ちくださいコピン様、お部屋の片づけをしましょう」
コピン様の顔が青ざめていく
「いやだ!俺の時間を奪うのか?!」
「ゲームの時間でしょ?!てかなんで神様が人間のゲームやってるんですか?!ってファミコン!??もう令和ですよ!?」
「うるさい!昔のものには昔の良さがあるんだ!」
「これはなんですか?投石器!?あなた石投げるまでもなく何でも倒せるでしょ!?」
「いやこれもなかなかの発明だぞ?見てろ」
そう言ってコピン様は遠くに的を出現させた。
そして投石器を振りかぶって石を投げる。
見事、的にあたった。人間世界でも世界記録の距離だろう。
しかも神のもつ神力を使ってない。素の力だ。
「どうだ?!すごいだろ?」
「何がどうだですか!?捨ててください!銃のある時代ですよ?!」
「嫌だ!俺が試行錯誤して自分に合うよう改良した投石器なんだ!!」
「その時間あるなら片づけてください!なにこれ!?ポ●モン!?初代の!?プレイ時間カンストしてるし!!捨てて…」
「やめろ!おれがどれだけそれに捧げてきたか…」
「神様がなにしてるんですか?!あなたなら設定いじくって最強にすぐなれる
でしょ!!」
「違う!ちゃんと時間をかけて育て厳選していくのが楽しいんだ!神様だから時間はいくらでもあるし…」
「だからその時間あるなら片づけろと…」
「さっきも言っただろ?環境問題はそう解決できるものではないと…」
「ああ、そういえばさっき聞きそびれましたがコピン様なら地球の環境問題はどう解決するのですか?」
「ん?一番簡単なのは人間の居住地域全部更地にするかな?全部土に還せばあとは植物が勝手に頑張るだろ」
「なるほど…つまりコピン様のお部屋環境問題も全ての物を破棄すれば解決と」
「そんなこと言ってない!待て!やめろ、消失ビームを構えるな!さすがにそれで消されたら戻せない…」
「じゃあ早く片づけを」
「おい!消失ビームを降ろせ怖い…」
「ぐちぐち言ってないでください」
「はい………どれくらい片付ければいい?」
「全部です」
「無理だよ!?何億年の歴史が詰まってると思ってるの!?」
「なんでそんなにとってあるんですか?てか何億年分も入らないでしょこの部屋」
「いや他にも俺の部屋あるし…」
「他の部屋????」
「あっやべ」
「まさかそこも…ゴミ屋敷じゃ…」
「ぷいっ」
「目を合わせてください、ゴミなんですか?」
「とうとうゴミ屋敷からゴミになった!?」
「なにが力をもてあますですか!!がっつり空間も力も、もてあましてるあなたが良く言えましたね!せっかくのいい話が…説得力が今ゴミと共に埋もれましたよ?!もう今日は片づけDAYです。終わるまで見張ってますからね。全力で片づけてください。一定時間ごとに一部屋消します」
「やめろ!それだけは!」
「もう時間制限は始まってますよ?」
「くっこの卑怯者…」
めっちゃ片づけさせた
――あとがき――
新作です。
こんな感じで1話完結で進んでいきます。気軽にお読みくださいませ。
まあ~ゆっくり上げていきますよ。
作者がコピン様よりだらけますから。
面白かったら応援、レビュー、フォロー、コメント、拡散等よろしくお願いします。
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「魔法スポーツ、青春と戦争 ~「纏う」が使えるだけで事件おきすぎじゃね?~」https://kakuyomu.jp/works/16816927859808203215
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