ひとやすみ
夕暮れシンって静まり返って、お空を見ればお月様。
砂浜で知らない木さんとお別れした僕。今はキレイなお水を探して歩いているよ。
人間さんの作ったお道を歩く。車や自転車に轢かれない様にお道の端っこにある出っ張り沿いに歩く。車がいない時を見計らって渡りたいんだけど……。何だかとっても向こうが遠いんだ。
どうしたもんかと思っていると、人間さんが立ち止まって渡ろうとしてるのを発見!しかもカラカラ音がする箱を持ってる。これはチャンスってやつ。
僕は急いで人間さんの箱にしがみ付いた。暫く待ってると……。カラカラカタタ。やっぱり人間さんがお道を渡ったよ♪ご一緒失礼します。言葉がわからないから心の中でお礼を言う。
道を渡りきったらピョンと降りて此処で人間さんとさよなら。
「ありがとう」
通じないってわかってるけどペコリとお辞儀はしようね。
「**?」
僕の声が聞こえた人間さん。こっちに振り向いてキョトンとしてる。視線が高いから下にいる僕には気付けないみたい。キョロキョロしたけど気の所為って思われたのかな?訝し気に片眉上げて向こうに歩きだしちゃった。僕達小さいコロポックルだもんね。人間さんが僕達に気付くのってあんまない。僕達も悪い人間さんもいるから積極的には交流してないもんね。
さてここは塩の匂いが強いから真水の匂いはわかり辛い。木さんがいっぱい立ってる所を目指そう。ご飯も確保したいからね。
頑張って歩くけど僕のあんよじゃあんまし進まない。困ってへにょりと眉毛を下げちゃう。
「わん!わんわんわうぅ?」
そしたら犬くんがお鼻を押し付けて話し掛けて来たよ。どうやらお一人様の僕を心配してくれたみたい。
「ごめんね。僕ってば犬くん語はお勉強してないんだ」
コロポックルは自然と一緒に生きてる。だから他の動植物と関わる事が多い。そして僕達の体は小さい以外は人間さんと一緒。言葉を紡げるって気付いたご先祖様達が色んな生き物の言葉を学んで受け継いで来たんだ。でも全部の生き物の言葉を一人で覚えるのは大変!だから普通は1、2言語マスターしかしてないんだ。沢山マスターした知りたがりのお友達もいるけれどね!
「くぅ~ん……」
申し訳なく思ってお鼻をなでなですると、犬くんも残念ってお顔をして伏せた。
「でも心配してくれたのはわかるよ。ありがとう」
「わん!」
ニッコリ笑ってお礼を言えば、犬くんもお口をニコッてさせてくれた。そこで僕はハッとしたよ。
僕は犬くんの言葉がわからないけど、犬くんは僕の言葉がわかってる!
「僕、真水がある森に行きたいんだ。犬くん連れて行ってくれないかい?」
見れば首輪をしていない犬くん。人間さんと住んでいない自由犬かもっ。そう思って聞いてみれば犬くんは僕の首根っこを加えてポーン!って投げちゃった!でもひゅるひゅる落ちた僕はそのままポスンって犬くんのお背中に乗った。
「わん!」
犬くんは一声吠えてタッて駆けだした。慌てて僕は犬くんのお毛々にしがみ付く。
ビュンビュン風を切ってあっと言う間に森の中に着いちゃった!
「うわあっ、うわあっ、ありがとう犬くん!」
お礼を言ってお背中から降りると、
「わんっ」
犬くんはそう言って颯爽とこの場を去って行った。
格好いい……。ああいうのを大人の男の魅力っていうのかな?
僕は去って行く時の犬くんの顔を真似てお目々キリッとさせて歩き出す。目の前には川がある。見た事無いけど何かの実もある。
寝床にも困らなそうだし、今日は此処でお休みしよう。明日は頑張ってお家に帰ろうね。
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