【 第四話: 天空の夜空の下で 】


 そして、私は彼と結婚をした。

 友人たちは、披露宴でそんな彼と結婚できた私を、みんな口を揃えて「うらやましい」と言ってくれる。


 私の前に何人か付き合っていた彼女たちよりも、彼は私を妻として迎え入れてくれたんだ。


 そんな素敵な彼と始まった結婚生活。

 とても幸せだった。


 この豪華なタワーマンションの最上階にある一番広い部屋が、私たちの『愛の巣』。

 ここから望む街のイルミネーションは、とてもキラキラと輝き綺麗。

 毎日がまるで、高級スイートルームに泊まっているよう。


 私はそんな素敵な旦那さまのために、毎日高級食材を買い、得意の料理を振舞った。

 お店でしか見たこともないような、大きな高級A5等級の神戸牛。

 家から持ってきた包丁では、切りにくいだろうと、彼は新しい最高級の『牛刀包丁』をプレゼントしてくれた。


 その包丁で切る最高級のお肉の切れ味は、抜群だ。

 サクッと力を入れずとも簡単に切れてしまう。


 今日もこの最上階から見る夜景をバックに、彼と美味しいディナーを頂く。


「いつも美味しい料理をありがとう」


 彼はやさしい声で、にっこりと微笑みながら、私に感謝を伝えてくれる。

 仕事は忙しく夜遅くなることもあったが、私たちは本当に幸せな毎日を送っていた。


 大きなベッドルームに、彼が私をお姫様抱っこで連れて行ってくれる。

 キングサイズの真っ白なふかふかのベッドの上に、ゆっくりと私を降ろすと、必ず一度、おでこにチュッとキスをしてくれる。


 そして、毎日「雛子、大好きだよ」と言って、両手でやさしく抱きしめると、私のピンク色に紅潮した柔らかい唇は、今日も彼に奪われる。

 パステルピンクのバスローブに手をかけ、少し開いたふっくらとした私の胸元に、彼が子供のように顔を埋めてくる。


 今日も私は、この街の喧騒けんそうが届かない、天空の夜空が望める静かなベッドルームで、彼とひとつになる。

 そんな幸せな新婚の日々が、私たちの間には、この時、確かに流れていたんだ。



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