オーク(人間)とゴブリン(ゴブリン)
「なるほど。マクシミリアム様を追ってきた魔族を撃退し続けた結果、その行動が人間の味方と認識された。と」
マクシミリアムの話を聞き、フレイが簡潔にまとめる。
マクシミリアムは他の上級魔族に『人間との共存』を語った結果、大半の上級魔族と衝突する事になった。
力では他の魔族など取るに足らない程に強い彼女ではあるが、数を頼りに絶え間なく押し寄せる追手に苦労し、流れ流れてルフィン辺りまで辿り着いたらしい。
尚も襲い来る上級魔族が手配した追手を撃退し続けていると、それが『人間に対し友好的な魔族である』と一部のルフィンの民に考えられ、町の出入りを許されたらしい。
「はじめ、大半の町民は一歩引いた態度を取っておられましたが、ここ3日間で多くの人に理解をいただきましたよ」
「何だか、もんのすごい結果おーらいな話だなあ」
ガロッサが正直な感想を述べる。
確かに、自分を狙う魔族を倒していたら人間と友好関係を結べたというのは、結果オーライというか都合の良い話ではある。
マクシミリアム達も不本意なのか、ガロッサの指摘に苦笑する他ないようだ。
音もなく紅茶で喉を潤したリアラは「なるほど……」とマクシミリアムの言葉に対してなのか、はたまた紅茶に対してなのか判らない感想を漏らす。
「ガロッサさん。今まで戦った上級魔族は、みんなプライドが高かったんですか?」
「ああ。俺も片手で数えるくれぇしか戦った事ねぇけんど、みぃんなはじめは『人間相手に直接手を下すまでも〜』ってな口振りだったなぁ。部下もぞろぞろ引き連れてよ、あんま気持ちの良ぇ奴らじゃなかったど」
「なるほど〜」
それだけ言うと、リアラは目を洞窟の天井に向けつつ紅茶を啜る。
「……リアラ、何がなるほどなんだ?」
そこマイペースっぷりに辟易したフレイが、その真意を問う。
「ああすみません。終わった話題だったので話さなかったんですけど、ならマクシミリアム様は本当に魔王かも知れないな〜って」
「え、何でそうなるの?」
「プライドが高くて人間を下に見る上級魔族と敵対して、それでも生き残る強さがあるなら、それはもう魔王じゃないかなー、って思いまして。それに、私はマクシミリアム様が良い
優しげな笑顔で言ってのけるリアラに、フレイが暫し眉根を寄せて思案したあと、コクコクと頷いた。
「後半は滅茶苦茶言ってる気もするけど、確かに『強さ』という観点では疑いようもない、か」
「確かにフワッとした概念過ぎて考えもしなかったけど、言葉が通じるならこっちの好きな人材を王に仕立て上げちゃうのもアリかも?」
「流石にこっちの考えで魔王を指定するのは平等性に欠けるだろ。それとなく勧めるとか、その魔族(ひと)の後ろ盾になるとかならともかく」
──勇者一行のうちガロッサ以外の3人が、自然と魔族への対応について真剣に議論を始める。
その様子を感慨深そうに魔族2人は見ていたが、ガロッサは少し苦そうな顔をして押し黙っている。
そんな彼の前に、
「……なんだど?」
『プギ…………オーク!!』
山魔族が目をキラキラさせて、ガロッサに
「あ……こら。いけませんよ、その方は人間──「ガッハッハ! オラは怖ぇオークだど!!」
言って、ガロッサはガッと山魔族の腰を持ち上げ、高い高いをする様に軽く投げる。
『プギギギギギ!!』
山魔族も喜んでいるらしく、一瞬でガロッサに懐いた。
一頻り戯れて、ガロッサは山魔族を傍に座らせて頬を掻く。
「確かに、ここの山魔族は気の良い奴だし、アンタも良い魔族だとは思うど。けんども、やっぱ魔族全体と仲良くするってぇのは、オラにはまだ信じらんね」
「そう……ですよね。私も、まだ成り行きでルフィンの方々と友好関係を結べたくらいですから。理想に現実が追いついてくれていません」
魔王は反論するでも説得するでもなく、ガロッサの意見に同意する。彼女なりにその野望への多難を理解しているのだろう。
「だがよ……人間でも魔族でも、子供ってのは可愛いもんだな」
寂しそうに言って、ガロッサは山魔族の毛のない頭をわしわしと撫でる。
プギッと嬉しそうに声を上げる山魔族に、恐らくガロッサの心情など伝わっていないのだろう。だが本人もそれを望んでいるのか、純粋に嬉しがる山魔族に目を細めていた。
「すまね、少し外の風に当たってくらぁ。お
『プギッ!』
ガロッサは懐いた山魔族を肩車して、外に出る。
「……やはり、険しいものですね。誰も歩んだ事のない道というのは」
「そう、ですね。ガロッサさんは特に複雑なお気持ちでしょうし」
「複雑な……?」
リアラの返答に、魔王が首を傾げる。
3人は迷いをその目に宿しつつ互いに目を合わせ、代表してフレイが意を決した様に一つ頷く。
「ガロッサは、魔族に故郷を滅ぼされたんだ」
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