⑤学校・廊下(冬)
暦上での冬はあっという間に過ぎて、卒業式。
廊下でばったり、柚子と会った。
「卒業おめでとう」
しばらく見つめあった後、ようやく出た言葉。
柚子は不機嫌に顔を背けながら、「そっちこそ」と返事をしてくれた。
「小説、書いてる?」
柚子の眉毛がぴくっと動く。
だけどそれ以上表情を変えないまま、顔を背けたまま柚子は話を続ける。
「受験勉強で、忙しかったから」
「嘘。試験直前にもアップしてたじゃん」
チッと、舌打ちのような音が聞こえた。
柚子の目線は変わらない、私は柚子から目をそらさない。
「ネットで見てるじゃない。どうして今まで、私が印刷して」
「ちょっとなら……ううん、ごめん、嘘ついてた。柚子の小説は本の形で読みたかったから。これからはスマホでも」
「これからなんてないよ、もう見ないで。私の知らないところでこっそり見てるなんて、ストーカーみたいで気持ち悪い」
嫌な言葉が、胸に突き刺さった。動けないでいる間に、柚子が私の横を通り抜けた。
おめでとう、卒業おめでとう、おめでとう。
たくさんの言葉を背中に受けながら、私と柚子はサヨナラも言わずに別れた。
それ以降、柚子とは会わなかった。
忠告通りサイトを見る事もやめて一年半が過ぎ、
私達は二十歳になった。
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