第二話


 それから程なくして『星空会』の新たな日程が発表された。


「今回もお父様とお母様が来るつもりらしいよ」

「晴れれば前回予定された日よりも多くの流星が見られる様ですね」


 そう言うと、キュリオス王子は「うん」と頷く。


「こう言ったら不謹慎だけど、今回で良かったって言っているよ」

「そう……ですか」


 王子は「ふぅ」と軽く息を吐く。こういったやり取りはいつもの事……と言いたいところだけれど。


「……」

「やっぱり、気になる?」


 王子はコソッとアリアに尋ねると、アリアはそれに対して「……いいえ」と答えたのだが、嘘である。


 正直、周りの視線はものすごく気になる。下手をすると、入学当初の頃以上だ。


「ごめんなさい。私の言い方が悪かったばかりに……」


 隣にいたクローズは申し訳なさそうな表情でアリアに言う。


「そんな。クローズ様は悪くありません。ご自分の言葉で思った事を言われた……それで良いではありませんか」

「でも、そのせいでアリアが好奇の目で見られるのはやはり……良い気持ちはしませんわ」

「そうだね」


 そう言って二人はコソコソと話している周囲に目を光らせると……途端に教室内は静まり返った。


 ――さすが、ゲーム内では悪役令嬢と冷徹王子のコンビだ。たった一度の睨みで黙らせたぞ。


 なんて、アリアはそんな二人を密かに感動していた。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 でも、こうした一種の戒めもそう長くはもたず――。


「……全く」


 昼食時には元に戻ってしまった。


「ど、どうされましたか?」

「またキュリオス殿下の件で話しかけられましたわ。――本当は悔しいのではなくて? と!」


 よくそんな勇気……いや、こう言いたくはないが「おバカ」な人もいたモノだ。


 確かにクローズは婚約を破棄したが、それはあくまでリチャード王子の不義が原因だ。ただ、そもそもクローズが公爵令嬢である事には何も変わりないという事なのに、どうやら忘れてしまっている様だ。


 アリアは「可哀そうに……」なんて思っていると……。


「ねぇねぇ。そういえば『星空会』って、ジンクスがあるんでしょ?」

「そうそう」

「いいよね。ロマンチックで」

「うん。憧れちゃうよね」


 下位のクラスの生徒だろうか……と少し聞き耳を立てていると――。


「でも、まずはゴールしないと……」

「そうだよね。退学はマズイもんね」


 最初はジンクスの話で盛り上がっていた様だが、すぐに表情は暗くなった。


「そういえば……アリアのお兄さんも『星空会』がきっかけでお付き合いを始めたんだよね」

「え」


 所詮、年頃の「噂」や「ジンクス」などが好きな女子生徒たちの会話……として軽く聞き流されると思っていたアリアは王子からの唐突な質問に、驚きのあまり思わず紅茶をこぼしそうになった。

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