第三話
「……」
このゲームをプレイしていた頃は始めてプレイした乙女ゲームだった事もあり、設定資料などが盛り込まれた攻略本なども買う程やり込んだ。
でも、それはアリアに限った話ではなく、たくさんの人がそれを買って売り切れになった事すらあったのを知っている。
そしてそこから乙女ゲームにはまり始めたワケなのだが……何せ最初にプレイした乙女ゲームだ。いくらやりこんだとは言え、多少の記憶の食い違いがあっても不思議ではない。
それに、子供の性格が変わりやすいのも確かである。その上、実はどの攻略対象のキャラクターのルートを見ても主人公と幼少期に関わりがあるのはキュリオス王子のみだ。
まぁだからなのか「本当のメインキャラクターはキュリオス?」とか「制作側のゴリ押し」とかアリアがゲームをしていた当時は色々と言われていたのだけど……。
「うーん」
王子と別れた後。アリアは一人、壁の花になっていた。
そもそも先程あれほどの騒ぎを起こした令嬢に話しかける物好きなんてそうは多くはない。もしいたとしたら……それは正真正銘の物好きか……あるいは――。
「ちょっと」
「はい?」
アリアに対して敵意を持っているか……のどちらかだろう。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
そうして連れて来られたのはお茶会の会場から少し離れた通路で、人通りが少ないところだった。
「……」
しかし、ここに連れて来たのはきっとワザとだ。
要するにアリアをわざわざこんなところに連れ出したのは……アリアをこの場から逃がしたくないからだろう。
「ちょっとあなた! 男爵家なのに図々しいのよ!」
一人の令嬢が発したこの言葉をきっかけに少年少女たちによる自分勝手な主張が始まった。
しかし、そのどれもが「男爵家だから身の程を弁えろ」とか「王子に対して馴れ馴れしい」とかそういったモノばかりで……。
正直なところ、呆れてモノが言えない程だった。
そもそもアリアが男爵家である事は自分がよく分かっているし、王子が話しかけてくれているのに無視をする方が逆に無礼に当たるのではないだろうか。
「大体。よくそんな格好で来られたわね! そんなだから入り口で疑われるのよ!」
もはや何を言われたのか覚えていないほど聞き流していたアリアだったが……さすがにこの言葉は頂けなかった。
「……」
「な、何よ。その顔は──」
さすがに雰囲気が変わったのは分かったらしく、令嬢たちも少したじろぐ。
「……」
しかし、そんな事は関係ない。
何よりせっかく王子が鎮めてくれたのに……それをまた蒸し返すなんて……一体どんな神経をしているのだろうか。
そう思った瞬間──。
アリアは思わず「あ、やばい」と思った。しかし、その時には既に遅かったらしく。
「……はぁ。またやっちゃった」
アリアの目の前にいた貴族たちは氷の様に固まってその場で動かなくなってしまっていた。
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