君の音に沿って
東雲椛
第1楽章 散歩道
第1話
「にゃー」
猫の声が聞こえた。
その声で俺は目を覚ました。こんなに目覚めの良い朝は何年ぶりであろうか。というのも、俺は普段、平日か休日かも分からず、毎日昼過ぎまで寝ているのだ。高校卒業してからもう七年以上も無職だ。それゆえ国から金を貰って生きている。補助金はもっと真剣に困っている人に使われるべきだと思いながら、俺は国に
「もう三月の末か。」
すこし驚いた。確か最後に家の外へ出たのは初詣の時だった。現状を何とかしないと。と思い、浅草寺で「どうにかなりませんか」と観音様を拝んだのだ。あれから三ヶ月が経とうとしているのか。俺がこうしている間にも時は物凄いスピードで流れていく。とりあえず早く支度を済ませてしまおう。
薄いパーカーを羽織り外へ出ると、冬の匂いの残る風が肌を突いた。すっかり馴染みが無くなってしまった道をしばらく歩いていると、犬を連れた一人の女性が突然、苦しそうに
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