皆と
アクセルとの対決が終わって数日後、会長達による“僕を好きに一日中していい”が始まった。
運が良いのか悪いのか丁度学園も連休に入ったので僕は日替わりで生徒会の面々の相手をすることになった。
1日目 ラウラとの勉強会
「ほらお兄様、そこ公式間違ってますよ? はい、もう一度やり直しです」
朝起きて朝食を食べたらラウラからの個別指導が始まった。
自分で高等部の勉強は終わったというだけあり、僕がどの分野を聞いてもすぐに答えてくるし、何よりも教え方が上手い。
「あっ、本当だ……もう疲れた……ラウラ休まない? ほ、ほら僕何かお菓子作るからさ」
教え方が上手いからと言っても昼食を食べたあと、かれこれ数時間は休み無しで勉強していると疲れるのである。
「お、お兄様のお菓子ですか!?
ーーって話を逸らさないでくださいね? いくら勉強が嫌だからって話の逸らし方がダメです」
「ちぇ……せっかく最近新しいレシピのお菓子を作ろうとしたのになぁ……」
「新しいお菓子ですか……!?」
ラウラは昔から僕の作るお菓子が好きだ。
さっきから口こそ僕を注意しているがとても目が迷っている。
……あとお兄様的には口から少し涎が出ているのはとても駄目だと思う。
「ラウラ喜ぶと思ったんだけどなぁ……残念だな……」
「し、しょうがないですね……お菓子ぐらいは許してあげましょう……
ーーほ、ほら私はお兄様思いの妹ですから」
「うん、ラウラはいつも僕の事を助けてくれる自慢の妹だよ」
「そ、そうでしょう、もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
「そうだね……まず兄の僕から見ても可愛いし」
「ふえっ!?」
「そして頭良いし、何よりもいつも僕が困っていると助けてくれるのが嬉しいなぁ」
「お、お兄様!! おしゃべりしている暇がありましたら早くお菓子作ってください!!」
「……? 分かった、今作ってくるね」
2日目 チャスの店の手伝い
「チャス、オムライスとハンバーグを1皿ずつお願い」
「おうとも~任せたまえ~!!」
「毎回手伝わせてしまい申し訳ございません……娘には後できつく言っておきますので……」
「い、いいですよ!! 僕も倒れた際に娘さんには心配をかけたので、これぐらい大丈夫ですよ」
チャスは僕が倒れてから屋敷に運ばれるまで、他のみんなを励ましていたとミラが言っていた。そんな彼女のためならこれぐらいお安いものだ。
「そうだよパパとママ今日は目一杯こき使おうよ~」
「こ、こらチャス!? 言い方を気を付けなさい!!」
「私どもの娘が娘が大変ご無礼を……!! 大変申し訳ございません!!」
いつものようにチャスが調子にのり、彼女のご両親が慌てた様子で謝ってくる。この一連の流れにも慣れてきた。
「大丈夫ですよ、彼女いつもこんな感じなので慣れましたし、前から気にしてませんから」
チャスは親しい人とそうではない人では態度が大きく違う。
親しい人には軽口を言うが、親しくない人にはあまり冗談も言わない。って考えると僕は彼女から親しい人認定されているのだろう。
「こらチャス!! いつも学園でなんて態度なんだ!!」
「ちょっとレイ!? パパとママの前で学園での事を話さないでよ!! 怒られるじゃんか!!」
「怒られる事をしているって自覚あるんだ……」
「げっ……嵌めたんだねレイ!?」
「チャス……!! 今日お店が終わったからゆっくり話し合いましょうか……?」
と笑顔なのに声のトーンが明らかに怒っているチャスのお母さん。
「な、なんだって……レイ、ヘルプ!! 困っている美少女を助けーー」
「あっ、只今オーダーお伺いします~」
チャスが僕に助けを求めるが僕は丁度そのタイミングでお客さんに呼ばれたのでその場を後にした。
「レイ~逃げないでよーー!!」
3日目 アリーヌ先輩との買い物?
「で、今日は何のお茶を買うんですか?」
「そうですね……最近ラウラさんが怒ってばっかりなのでリラックス効果があるお茶を買いましょうか」
「多分怒らせているのは僕達のせいだと思いますよ……僕、チャス、アリーヌ先輩の3人で9割ぐらい」
「あら、そうかしら私は仲良くしたいと思いたいんですけどね。どうしたらいいかしら?」
「ならラウラを煽るの止めましょうか、ラウラ煽り耐性低いですから」
チャスとアリーヌ先輩はラウラを結構煽る。
ラウラは結構いじられキャラなのか煽り耐性低い。
……ちなみに僕がラウラを怒らせている原因は僕が無能なのである。
「そうね次から気を付けようかしら?」
「……何故疑問系?」
「あっ、あそこの店行きましょう。私あそこのランチ食べてみたかったんですよ」
「あぁなんか学園でも噂になってますね、美味しいみたいですね。でも確か結構良い値段だった気がしますが……」
「ふふ、私に任せてください。私結構お金持ちなので後輩クンの代も払ってあげます」
「そう言えばアリーヌ先輩ってどうやってお金を稼いでいるんですか?」
「それなりに魔法が使えるので学園からちょくちょく実験に付き合っているんですよ。
ーーあぁ心配しないでください、人体実験ではありませんからね?」
「そうだと良いんですけど……アリーヌ先輩はその過去の件があるので心配で……」
アリーヌ先輩の魔力の高さは元々ではなく後天性のものだ。
元々いた孤児院での人体実験の結果なのである。
そのため魔法を長時間使うと魔力回路が暴走してしまう。
「ふふ心配してくれるのね優しいわね後輩クン」
「僕にとって大事な人なんですから心配するのは当たり前ですよ」
「ま、まぁ随分真っ直ぐな事を言うのね君は……」
「……? なんか間違ったこと言いました?」
「この子自覚無いわね……まぁそれもいいところなのでしょうけど……」
4日目 ミラと特別鍛錬
「おっ、レイ君凄いな。流石学園の副会長をやっていて、今回の事件を解決させた張本人なだけある」
「お褒めていただきありがとうございます……!!」
「うむ、流石我が親友!!
ーー父上と剣の打ち合いに付き合えるとはな!!」
「僕そんな事最初聞いてないんだけどね!!」
最初は騎士になりたての者がならう特別鍛錬に一緒に参加するはずだったのが、何故かミラのお父さんとマンツーマンで特別鍛錬をしている。
……そして今、ミラのお父さんと剣の打ち合いの時間だ。
ちなみに今日の今までのメニューだが
ーー軽いランニングという名ばかりの街の外周。
ーー帰ってきたら素手での組手10本
ミラが途中で疲れているのに僕は疲れないはずがない。
「というか何で僕呼ばれているの!? ミラもお父さんと個別指導受けたいでしょ!?」
「私もあまりこういう事を言いたくないのだが……
ーー今日はわ、私の好きにしてもいいのだろう?」
「ミラまで会長達と同じこと言うようになっちゃったか……これで生徒会のストッパーがいなくなっちゃった……」
「だ、ダメか……? レイが嫌なら辞めるが……うぅ……」
「おやレイ君、娘を泣かすのかな?
ーーなら少し強めよう」
と笑顔のまま、さっきよりも強めに剣を撃ってくる。
……笑顔なのだが目が笑ってない、ナニコレ超怖い。
「ち、ちょっとこれ以上強いのは勘弁してくだーー
ーーって本当に強くなってるんですけど!?」
さっきまでの打ち合いで両腕が既に悲鳴をあげているのに、さっき以上に強く撃たれて本当にマズい。
……というかこれ最早“打ち合い”ではなくただミラのお父さんの“打ち込み”なのでは?
「ほうほう俺の剣を受け止め続けて、喋る暇があるとはずいぶん余裕があるみたいだな
ーー将来が楽しみだ、ミラもそう思うだろう?」
「えぇ、レイはとても素晴らしい親友だと思います!!」
「この2人なんか絶対認識の齟齬があると思う!!」
「という訳だミラ、もう少しレイ君を借りるぞ?。
ーー心配するな1時間後にはきちんと返す、デートするなり好きにしてくれ」
「分かりました父上!! さぁレイ、終わったらアルマンダ殿の店で甘い物を食べに行こう!!」
「僕の意思は無視かよーー!!」
当たり前だが今までの4日間で一番疲れたのは言うまでもない。
5日目 会長とのデート?
「れ、レイ君!? なんかいつもより動き方がぎこちないですが……」
僕と出会った会長は開口一番それだった。
「あぁ昨日ミラのお父さんから個人指導を受けて……全身筋肉痛なんだ……」
結局昨日は剣の打ち合いの後は訓練はしなかったがそれまだがかなりハードだったため久しぶりに家に帰った瞬間眠りについた。そして起きたら全身筋肉痛という訳である。
「た、大変ですね……というよりも騎士団長の訓練についていくレイ君はかなり凄いと思いますけど……今日は止めましょうか?」
「い、いえこれぐらいなんとかなりますって。
ーーそれに会長、姉さんだけ付き合わないのは違うでしょ?」
「レイ君……貴方という人は……分かりました、今日はお姉さんが目一杯引き回してあげましょう!!」
「引き回すって……分かりましたとことん付き合います」
半ばやけくそな僕。
「それにしても偉いですねレイ君は」
「僕が?」
「はい、だって今回の私達の企画に律義に付き合うんですから」
「まぁ元は僕がみんなに迷惑をかけたのが始まりだしね、一日付き合うぐらいでいいのなら付き合うよ」
「じゃあ今日はアルマンダさんのお店に行きましょう。そこでゆっくりお話しでもしましょうか」
「げっ……昨日もミラと行ったんだよね……」
「へぇ~ルネフさんとは行ったのに私とはいかないんですね~お姉さん残念です……悲しいです」
「わ、分かった、分かった行こうか」
「さぁ行きましょう!! 私新作のデザート食べたいです!!」
「はいはい行きましょうか」
結局2日間連続でチャスの店に行き、彼女から冷やかされるのであった。
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