第24話 面接
「まっずい、あと20秒だ!」
腕時計の針はどんどん進んでいく。あと10秒、9、8、7、6、5
「縮地ぃい!!」
アグニはそう叫びながら100メートルほど前に見えているビルに向かって突き進んだ。周りの景色がグニャリとゆがむほどの速度で進んだ。
「面接! に来ました! 受付お願いします!」
ビルの入り口を取りぬけると受付があり、2人のお姉さんがそこに座っていた。
「インターンの面接ですか?」
「そうです」
「フフッ、ギリギリでしたね。メールを見せていただけますか?」
「はい……これですね」
「はい、確認いたしました。もう説明は終わってしまったのでこの書類と名札を持って4階まで上がってください。そこからは係の者が誘導いたします」
「ありがとうございます」
何とか間に合った安心と、説明を聞き損ねた心配とでゴチャゴチャの精神状態で4階へと階段を上っていく。
4階につくと腰当たりの高さの立て看板に面接会場につきお静かに願いますと書いてあった。しかしその看板以外には特に何もなく、誰かが来ることもなかった。
(どこ行けばいいんだろ? 係の人どこ?)
しばらくそのままうろうろしていると何人かの人が椅子に座って待っているのを見つけた。
アグニは静かに近づくと一番端に座っていた女の人に小声で声をかけた。
「あの~すいません、これって面接のあれですか?」
「そうですね、インターンの面接です」
「ありがとうございます」
アグニは空いていた椅子に座ると受付で受け取った書類を眺め始めた。しばらくすると全員が隣の椅子にずれた。そのまま30分ほど待っていると、さっきの女の人の番が回ってきた。
そして5分後、とうとうアグニの番がやってきた。女の人が出て行ってから少し待って扉をノックする。
「どうぞ」
「失礼します」
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあどうぞ」
向かいに座っていた男性はそう言ってアグニに椅子を勧めた。
「失礼します」
「じゃあまずは自己紹介をしていただけますか」
「え~、
「あ! 早田大学なんですか! 私もそうだったんですよ!」
「あ!そうなんですね! 何学部だったんですか?」
「私は商学部ですね。私が学生だった頃は史学部は文学部の一部だったんですよ。けど遺跡研究が盛んになってきて規模が大きくなったから独立したんですよね」
「あ~、きいたことありますね」
「ハハッ、まあ大学についてはそんなところでいいでしょう、では今回のインターンに応募した理由を教えてくれますか」
その後はよくある質問がいくつか聞かれただけだった。
「はい、そんなところですかね。ありがとうございました。この後6階の訓練場で身体能力の測定がありますので、それまでは3階の控室で休んでいてください。もし外に出る場合は部屋にいる職員に声をかけてから出てください」
「はい、ありがとうございました!」
(能力測定なんて聞いてねえ…………まずいな)
「実技の方も頑張ってください」
面接官の人はニコリと笑ってそう言ってくれた。アグニは部屋をでて左に曲がり階段の方に歩いて行った。階段を3階まで下っていくと地面に矢印が書いてあって、それに従って歩いていくと会議室と書かれた扉にたどり着いた。
扉を開けると中には20人ほどの人がいた。何人かはパッとこちらを振り向いたが、興味なさそうに本を読んでいる人もいた。
空いている席に向かって歩いていくと、さっき声をかけた女の人もいた。
席に座ってしばらく周りを眺めてみたが、ご飯を食べていたり、本を読んでいたり、スマホをいじっていたり、それぞれが好きなことをしていてリラックスしたような感じだった。
アグニは特にすることもなかったので、机に突っ伏して寝ることにした。
*****
「左京さんどうですか? 今回も大吉の子いましたか?」
「いや~、今回は厳しいね。まあ面接だけでわかることなんて大してないんだけどさ、なんか『お!こいつは伸びそうだ!』みたいな匂いを感じるのはあんまりいなかったよね」
「あ~そうでしたか」
「まあでも俺だって100%見抜けるわけじゃないしとりあえずあとは実技を見てからだよね」
「そうですね」
「最近人手不足だからな~、いい子が見つかるといいんだけどな~」
「そうですよね~」
久我はそう言いながら書類をまとめ、部下の小倉と面接会場から出て行った。
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