難易度『熾天使(セラフィム)級』の最凶ダンジョン ~初めてダンジョンに入ったら入り口を閉じられてしまいました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました~
ウォーカー
第1章 『基礎訓練』編
第1話 探索許可証
今から50年前、世界中に突如として遺跡が現れた。各国政府は緊急でこれを調査したが、全く地球由来のものがないということ以外、ほとんど何も分からなかった。
日本政府は把握できる限りすべての遺跡を一時的に封鎖して、事故が起こらないよう厳重な警備を施した。しかし日本中に山のように現れたすべての遺跡を把握して封鎖するなど出来るはずもなく、何人もの命知らずがその蛮勇のために行方不明となってしまった。
そしてしばらく時が経ち遺跡のほとぼりが少し冷めた頃、SNS上で一人の人物が「遺跡をクリアした」と、そして同時に「天使が信じられないような褒美をくれた」と呟いた。
この情報は瞬く間に世界中を駆け巡り、人々は政府に遺跡の即時解放を求めた。
そして現在、遺跡(ダンジョン)は9つの難易度に分類され、最下級の『
遺跡でとれる鉱物や
そんな探索に行くための許可証を取得するための試験にちょうど向かっているのが
会場の体育館につくと、仮設の受付が体育館の入り口に2つ設けられており何人かの人がすでに並んでいた。
前の人に続いて並ぶと、列はすぐに進んで5分もしない間に
「次の方~、どうぞ~」
「はい」
「こちら『
「だいじょぶです」
「では申し込み画面の提示をお願いします」
「……どうぞ」
「はい、問題無いですね。それではこちらが受験票になります」
「ありがとうございます」
「はい! 頑張ってください!」
受付のお姉さんの応援になんと返せばいいのか戸惑っている内に、お姉さんが次の人を呼んでしまったから俺はそのまま体育館の中へと歩いて行った。
体育館の中にはアスレチックのような物が設置されていて、一見すると公園のような雰囲気があった。
しかしこれは一応試験だ、合格するように頑張らなければ。
そう気を引き締めてから誘導に従って更衣室に進むと、中には体格のいい人達が何人もいた。自分のような細長い男はいなかった。しかし今回の試験で主に見られるのは基本的な走る、飛ぶ、登るなどの能力であり、そこまで力が必要なものではないと聞いている。恐らく大丈夫だろう。
着替え終わった
実際のところ、
そして体育館に60人ほどの人数が集まったとき、試験官だと思われる人が集合をかけた。
「集合をお願いしまーす! 試験を開始いたしますので集合をお願いしまーす!」
ゾロゾロと集まる人のなるべく後ろに行けるよう、火天は一際のろのろと進んでいた。受験者が試験官の周りに集合すると、試験官は話し出した。
「はい! それでは第282回最下級遺跡探索許可試験の説明を開始します。よろしくお願いします」
何人かの受験者がぼそぼそと返事をしただけで他の人は各々軽く会釈したり頷くのみだった。そして試験の説明が始まり、2時間ほどをかけて試験が実施された。
合格発表はその日の夜8時に協会の公式サイトで行われるということで、来たときとは対照的に
「お疲れ様でした!」
と声をかけられたが、
「あ、ふっ、おつかれぃsjなl」
という意味不明な事を叫びながら足早に立ち去ることだった。
*****
火天の家は23区にあるごく普通の家だった。父と母と姉と自分の4人家族、どこからどう見ても普通の家だ。
そんな家の長男である
大方荷物持ちが欲しいだけなのだろうが、別に家にいても何をするわけでも無いから別にいい。そんなわけで探索許可試験を受けに行ったところなのだが、
なぜこれ程緊張しているのかは全くの謎だったが、夜ご飯も何を食べたか記憶に残っていない。
そして午後8時、公式サイトの探索許可試験の結果発表のページから
あった……、あった!
そして週末、朝ご飯を食べ終えた
「あれ、アグニが出かけるなんて珍しいじゃん。どこ行くの?」
「浅草のダンジョン……」
「ダンジョン!? 何しに行くの?」
「何って、探索だけど……」
「許可証取れたの?」
「当たり前だろ」
「お母さんに言った?」
「言ってないけど……」
「え~それ絶対駄目って言われるよ」
「別にいいじゃん」
「誰と行くの?」
「高校の時の……、友達」
「友達、ともだちね~、ふ~ん」
「なんだよ」
「いや別に私はいいけどね、パパめちゃめちゃ怒るかもよ」
「何が言いたいんだよ!」
「危ないから行かない方がいいんじゃ無い?」
「いいだろ行きたいんだから!」
「まあ別に行きたいならいいけどさ、無理矢理行かせられるんだったら行かない方がいいんじゃ無い?」
「む、無理矢理じゃない!! 俺が行きたいんだ!」
「あっそ、じゃあまあ頑張ってきなよ。あ、私は寿司でいいよ」
「ん?」
「儲かったらおごってね」
姉はそう言ってニッと笑うと3階の自分の部屋に戻っていった。
絶対に奢らん、
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