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テストの出来は上々だった。

張り出された成績表の上位は、筆記も実技も軒並み、わたしとヒロインサラと攻略キャラの3人で占められている。


ゲームシステム的には順位が上位だと攻略キャラたちの好感度が、一定値上昇するし…何より、みんなでやった勉強会の成果が出た結果が上々で大満足なテスト結果だ。


掲示板から目線を外すと、廊下の向こう、角からこちらを伺うように覗き込んでいるヒロインと目が合う。


必死な顔で何事かを訴えてくるので、どうしたのかと近寄って行ったら…

『第3王子にクリスマスのパーティーのエスコートを申し込まれた』だと〜!?


来たっ!!YES!!イエス!!いっえ〜すっ!!!!!!


実はこれ、最近思い出したんだけど…終業式に行われるほぼ全校生徒強制参加のクリスマスパーティーは、結構な重要イベントだ。

確実にしっかりと育まれていた好感度の存在を実感できる恋愛イベントに、脳内のわたしはもう小躍り状態だ。


このクリスマスパーティーのイベントは、その時点で一番好感度の高いキャラからお誘いがあり、各キャラらしいイベントが起こる…このゲームの数少ない1枚絵スチルイベントの一つだ。


ドレスの準備ができないヒロインに対し、各キャラが自分イメージのカラーで一式を贈ってくれて…そのあからさまな『自分色に染めたい』願望に、ニヤニヤした思い出。


だと言うのに、不思議なことにヒロインは『着て行けるようなドレスもないのに…』と、泣いている。

誘ってもらえて嬉しいけれど、会場に相応しい服がないから行けない…と、泣いているのだ。


『嬉しくて咄嗟にお受けしてしまったけれど…』と対に泣き出すヒロインにハンカチを貸しながら、先程の脳内小躍り状態が一転、疑問符で占拠される。


エスコートの申し込み時、OKと答えると同時にドレスは渡されるはずだ。


断られるなんて微塵も思っていない用意周到さに、過去の感想レビューやブログ記事などではツッコミの嵐。

このイベントを思い出すと同時に、芋づる式に思い出した当時の自分も全く同じ感想を抱いていたのも思い出している。


第3王子・エヴァンからなので、白いドレスにアクセントで金色と少しのピンクが可愛いドレスを贈られるはずである。


これが側近ニコラエスだと白と銀系、ダスティンだと黒と銀、ベイルードは赤紫系、もう1人の隠しキャラは…確かパーティーには参加しなかったんだっけかな??…そう考えると、最後のキャラは学外の人間なのかもしれない。


ともかく、王子と言う立場である以上、パートナーと出席する時は対になるように演出する必要があると教えられているはずだ。

それが親密な仲(あるいはそうなりたい相手)であるなら尚更に重要だと。

それを知らぬはずはないのに…??


ここで憤慨して『それならワタクシが用意して差し上げてよ』と言い放ち、ヒロインとペアのようなドレスを用意するのが、よくある『ざまぁ回避の悪役令嬢がヒロインを掻っ攫う百合ルート』のだけど…

それじゃあ、今日までの2学期中のわたしの努力がパァ!!だ。


今日明日で即パーティーなわけではない。まだ2週間の猶予がある。

それとなく王子に探りを入れることを約束し、最終手段の最後の砦として『もし、王子が何も考えていないお馬鹿さんだったら、わたしがドレスを準備しますから…そんな悲しいお顔をしないで』と、ヒロインサラへフォローをしておく。


本当に、誘う女性のことも考えていない…そんなお子様脳の『王子さま』だとしたら、教育的指導が必要だけれど

ここは乙女ゲームの世界!!女の子の夢と希望のご都合世界なのだ。


考えが足りない、配慮ができない、思考がお子さま…そんな『王子』も、他作品では確かにいたけど、それは設定自体に『ちょっと子供っぽい』とか『不器用』とかの要素の入ったキャラクターだった。


この『悠久のうた』のエヴァン王子はそんなキャラではなかったはず。

金髪碧眼、白馬が似合う…見た目も言動もザ・王子さま、だ。

まぁ、実際の第3王子エヴァンはやや優しすぎて、優柔不断な感じもするけど、比較的にキャラ設定通りの人物だった。


だから、何かしらの理由があるのだろう…さて、簡単に片付く内容であって欲しいところだ。

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