第2話 ものづくりの工場勤務
工場は第一線の現場で、とても面白かった。
本社で文献や書類を調査して読み説き、報告書を作成する仕事から、工場で「ものづくり」をして一緒に汗を流す仕事に変わったのだ。
私は工場で注文を受けた製品の工場図面を書く部署であったが、自分で描いた図面で製品が出来ていくことに衝撃を受けると同時に、今まで経験したことの無い感動を覚えた。
図面を間違った折でさえ、不思議に思われるかも知れないが、同じように喜びを感じたものである。
「そうか、こうすると上手くいかないのか」と新鮮な学びがあった。工場のみんなは本社から来た私のことも分け隔てなく仲間に入れてくれた。
私は間違いの多い設計者であった。自分は本社採用だとエリート意識の固まりであったが、それを打ち砕くかのように間違いばかりを重ね、自分でも情けなく思っていた。
工場では高卒の人達も多く、一緒に働いていたが、彼らの方が間違いも少なく、私の鼻持ちならないエリート意識はすっかり壊されてしまった。
正直に言うと、そこから本当に仲間意識が出来、みんなと打ち解けて楽しく仕事が出来るようになった。プライベートも含めて心の底からそう思った。
自然と仕事へ向かう姿勢が変わり、色々なことに挑戦をするようになった。さらにチームとして一緒に働く仲間達と汗を流すことで、チームとしての達成感も味わうことが出来たのである。
そのうち徐々に昇進もしていき、その会社で一番大きな工場の課長となった。工場トップから言えばナンバー2のポジションである。
その頃には図面のことは良くわかるようになっていたが、それ以外の仕事は全くわからなかった。
工場には、資材購買や製造、品質管理や技術、設備など、種々の仕事があり、それらも同時に見なければならなくなった。
さすがに守備範囲が広がると自分の知識や経験の無さを嘆くことになった。そんな訳でそれぞれの分野のことを通信教育やら本を読む等をして、深めていった。
それまでは勉強についてはあまり一生懸命ではなかったが、必要となると思いの外はかどるし、学習すること自体が面白くなった。
働く中での勉強は少しも苦痛では無く、新しいことを知る喜びや、楽しみとなっていった。
どうして学生時代に強制される勉強は苦痛であり、喜びと縁遠いのだろうか。今ならば、本当に勉強の必要性や学ぶ喜びを持てるのにと素直にそう思った。
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