第3話 スマホは会話以外にもキ―ンと運ぶ
「世界が落ち着きを取り戻せない中、パンデミックを予見していた専門家、書いた小説、描いた映画の警鐘は意味がなかったと言わざるをえない。自分が感染しなければ他の人のことは知ったことではないという、我利我利の欲を捨て去ることが出来なければ負のスパイラルは果てしなく続くだろう」……とモグが言っていた。テレビに感化されやすい人ではなくて犬だから……。
今日もいい天気だ。気持ちが違う。セロトニンが生成されているのかな?
「ねえ、本当にエサ代、大丈夫?またお金借りたりしてない」
「あのね、借りられるなら借りてるよ!僕から言わせるなら消費者金融からお金借りれる人は大金持ちだ!」
「また、そんなこと言って……犬はなんでお金稼げないのかしら?仕事あるならバンバン働くんだけどね!」
「モグはペットとして働いているんだよ。本当なら僕がモグにお給料を払わなければいけないんだ……」
「あんたからお金貰ってもしょうがないじゃない。うちの旦那も何をやってんだか知れたもんじゃない」
「トラさんの悪口をいいなさんな。でも本当だよね~。僕の分身だもんね~」
「ドコモ、ギガ、バイトも日に日に大きくなっていくのにね。本当どうしようかしら。最近、美里と話した?」
「うん」
「え??」
「なんで話さないのよ?」
「なんで話す必要があるんだよ」
「…………」
「ごめん。話さない方がいいと思ったんだ」
「どうして?美里になんかあった?」
「いや。ただ仕事のことで悩んでた。お金も余裕げではなさそうだ」
「……そう、やっぱり人を頼ってちゃダメね。美里=お金、なんてどうかしてたわ」
「そう自分を責めるなよ。自分が可愛そうだ。なんとかなるさ、なんとかするよ」
「うん。ありがとう」
「でも美里と話せて良かったよ。2時間くらいはなしたよ。いろんなことをね。彼女の笑い声を聞いたのは一年半年ぶりぐらいじゃないかなあ。スマホだけど会話以外にも飛行機がキ―ンて飛ぶじゃない、そしたら耳がキ―ンってなるじゃない、そのくらいのスピードで美里の気持ちを受け取ったよ」
「…あんたたちさ、なんで別居してるの?」
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