アナザー・ワールド 〜人類自らが創造した異世界〜
大澤陸斗
序章
第1話 プロローグ
「羽衣! ……羽衣!」
いくら呼びかけても妹は反応を示さなかった。羽衣の体は梅雨の雨に濡れどんどん冷たくなっていく。頭から流れる血と青白くなっていく肌を見て、羽衣が死んでしまったことを俺は悟った。
隣で母さんが絶望して泣き崩れた。羽衣に手を伸ばし、声を上げ泣く。
その様子を見下ろす男が二人いた。他に泣きながら地面に頭を擦り付ける男が一人。妹をはねた車に乗っていた人達だ。
土下座をした男はともかく、母さんを見下ろしていた二人は何を思っていたのだろう。
ただ冷たい視線を送っていた。
——許さない。
俺は強くそう思った。
それが十年前の出来事……。
自動走行試験中の乗用車が起こした悲惨な事故だった。
それから俺は人をあまり信用していない。
人の気持ちを理解しない。解ろうともしない。利己的で自分勝手な奴が大半だということを知ってしまったからだ。本当にそう思っていた。
——あの世界で彼女と出会うまでは——。
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