第1話「帰ってきた男」後編
第一話「帰ってきた男」後編
――10YearsAfter
――そう、あれから十年……
――俺は……
――長かった
結局、その後、俺の家は……
生まれ付いての名家達、上流階級共に嵌められ、寄って
もちろん俺自身も、この十年は苦労に苦労を重ねて生きてきた。
ブロロロロロォォーーーー
高級ホテルの
「返り咲いたっ!
手持ち無沙汰な車中にて、かつての恥辱の数々を回想していた俺は思わず感極まって叫んだのだ。
シュバッ!
「おっ!おおっっ!?」
そして直ぐ隣から、尋常ならざる殺気を感じて咄嗟に脇腹を右肘で
ガガッ!
肉……というよりは骨の衝突する感覚と鈍い音が響き、そして俺は……
「車内ではお静かに、
「す、すみません」
隣から鋭い視線で突き刺してくる、とても眼鏡が似合う知的な美女に謝っていた。
「まったく、ただでさえ目の回る忙しさですのに、帰国早々に故郷の高校へ編入されるとか、今夜のような茶番のTVショーに出演されるとか……戯れ事も大概にして下さい」
リムジンに同乗するこの美女は……
――
弁護士、司法書士、国際医師免許、果ては
「いや、しかし
「そうですね、古流空手皆伝である私の必殺”
――”必殺”……必殺って?……殺すつもりだったの?
「いや、そう言う事じゃなく……」
「細かい事は
――”俺の生死”は細かい事かよ!
と、まぁ色々と不満は募るが……
我が忠実なる?秘書、
「ふふ、そうか!聞きたいか?そうだよなぁ?大・大・大成功者たる俺の!俺様の!日本での壮大な野望を聞きたいよなぁっ?」
「……」
遂にその質問が来たかと、思わず力が入る俺に
――くっ!負けるか!!
「だぁが、それならば子猫ちゃん、”どうぞ教えて下さいニャン”とベリーキュートな表情でポーズはこう……」
「色々な
俺は両手を神に祈る敬虔な信者の如くに胸の前で組む、つまり、彼女の胸ならこのポーズでギュッと、意外と
「…………………………………………泣いていいですか」
――我が秘書ながら……俺はここまで他人を悪し様に言える人物を知らない
「ご随意に……あ、にゃん?」
――くっ!この眼鏡美女め!トコトン俺を
と、憤りながらも、俺は美人秘書から渡された良い香りの付いたハンカチでちょっとばかりドキドキしながら目尻を拭う。
――ふっ、男って悲しいな……
そして、これも誠に不本意ながらだが……
彼女の言っていることは完全に的外れと言う訳では無かった。
――その
元はアメリカの人気番組で、独りのセレブな男性(この場合は日本的な意味で超富裕層でイケメンという意味だ!そう、まさしく俺の様な人物だろう)を巡って応募してきた何人もの女性が奪い合うという、リアル恋愛サバイバルドキュメント番組だ。
着飾った女性達とパーティーを開いたり、海外へバカンスへ行ったりと、色々なイベントを経て愛を深めて行く構成だが、その都度にセレブ男性、つまり”MASTER”により選別があり、毎回人数より少ない薔薇が用意され、それを渡されなかった女性がひとり、またひとりと去って行く。
もちろん、女性側も薔薇の受け取りを断ることができるが、俺の記憶では先ずそっちは観たことがない。
確かに参加した目的とか番組の構成上から考えてもよっぽど男が期待外れのゴミ屑で無い限りは有り得ない事だろう。
てなわけで……
帰国したばかりの俺に、その日本版である”
――まぁな、俺ほどの成功者で尚且つイケメンなら当然だろう
で、世界経済の一角を担うほど優秀で最高の俺はそういう俗世界のくだらない娯楽番組などにはあまり乗り気ではなかった……が!!
これも”
「もうすぐ会場ですね」
「ああ、そうだな」
ブロロォォーー
「…………」
「…………」
ブロロォォーー
「もしかして緊張されているんですか?大丈夫ですよ、
「…………そ、そうだな……
――彼女はいつも一言……いや、二言、三言も多いが……
――今宵の俺は機嫌が超良い!ここは大目に見てやろ……
「
「く、この
流石に俺はブチ切れた。
いくら特別な夜で超ご機嫌であっても!
雇用主たる立場の俺が、これ以上秘書如きに舐められる訳にはいかないからだっ!!
「失礼、半泣きでしたか?」
「うっ……全泣きです」
「では、私のヒールは舐めてないと?」
「そ、そんな役得どこにある……あっ!?」
――し、しまった!罠か!?
気づいて時は既に遅し、俺の隣で美人秘書は……
「うわぁぁ…………」
てな感じで、白い視線を受けて俺は黙るしかなかった。
「…………」
ブロロロロロォォーーーー
――大丈夫だ……
ファイト!俺!
たとえ美人秘書にどれだけ蔑んだゴミを見るような目で見下されようとも……
――今夜だけは大丈夫なんだ!
――なぜなら今夜、俺は色とりどりの美女達に囲まれ、人生の転機を迎えるのだ!!
ブロロロロロォォーーーー
そんな妄想過多気味な男の夢と欲望を乗せ、超高級なリムジンはその場所へと――
――約束の地、”
――
―
「これは……」
車から降りた俺は、テレビ局側に用意された豪華な屋敷の一階
「えと?……ええと?」
そしてキョロキョロと周りを見回す!!
何人もが座れる高級な
宴の準備は万端である……
が!?
「チョットォォォォーーーー!女の子ひとりもいないんですけどぉぉぉぉっ!?」
――
それが久方ぶりに故郷へと帰国した男の波乱に満ちた
いや、”
第一話「帰ってきた男」後編END
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