クラスメイトがエロ可愛いブラコンシスターになったら。ねぇどうするお兄ちゃん!

さかき原枝都は(さかきはらえつは)

第1話 そうだ転生しよう!

赤城翔太あかぎしょうた17歳。


高校2年のさえない人生を繰り返してきた、どこにでもいる一見普通の高校生。

今日返されたテストも赤点すれすれ。可もなく負もなくさまよう枯れ葉のような浮遊した人生。

このままじゃいけねぇと、合コンに無理やり頼み込んで参加するも結局ボッチになり、浮島状態。

気になっていた子に告ってみたけど即決沈没。

挙句の果てに『きもい!』とまで言われてしまった。


「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

呻くように声を上げ、空を見上げて落胆する。

なんでこんなに何もかもうまくいかねぇんだ!

俺は高望みなんかしてねぇぞ! 

普通、普通でいいんだ。

それなのになんでこうも思い通りに行かねぇんだ! ちきしょう!!

ムラムラムカムカ。


本屋の前を通りかかった時、目にしたグラビヤ雑誌のポスターが目に入った。


ビキニ姿の女の子が可愛くも、エロチックな雰囲気を醸し出して映っているそのポスターを眼にして。

エロ本はさすがに本屋では見る勇気はないけど、グラビア雑誌ならまだ許容範囲か?

などとかってな許容範囲を設けて、雑誌を手に取り、妄想ときわどい写真を眺めながらムラムラとした気持ちを少しでも収めようとしていた。が、そこは17歳の果敢な時代。欲情する腹の下の欲望が強くなるに決まっている。

そこまで大人じゃねぇていうことだ。

このまま写真集を見ていたら、外部的にというかその、明らかにに目立つ状態になる。

それはさすがに恥ずかしい。

どことなく告ったクラスメイトの面影を感じる写真。

フラれたから、はいそうですかと、簡単に受け入れられるほど単純な性格でもない。

まぁ、なんというかまだ未練は……垂れ流し状態であるけど、表向きは普通にしている。ように見せているつもりだ。



我に返るようにぱたんと雑誌を閉じ、素知らぬ顔をしながら気持ちを落ち着かせようと棚の方に足を運んだ。

いやぁさすがにちょっとまずいんじゃねぇ。

下半身の反応の鋭さはなんともまぁ否定出来ねぇなこりゃ。

前かがみになりなりながらへっぽこと歩いていると、ふと1冊の本に目が留まった。

何故、その本に目が留まったかと言えば、それは今もって謎である。

平積みされているわけでもなく、棚にひっそりと紛れ込んでいたというのが妥当な感じの本だ。

題名が奇抜? いやそう言う訳でもない。

なんとなく手に取ったその本。いわゆるラノベと言うものに特別興味があったわけでもないが……。


ただ、その表紙絵に描かれている実際にはありえない女の子のその姿に見とれてしまった。

「か、可愛い」

思わず声が漏れてしまった。





中身も見ずにその表紙絵の女の子に恋焦がれ、思わずそのままレジで購入してしまった自分に気が付いたのは、部屋に戻ってからのことだった。





「はぁ―、今月こずかいきついのに、なんで俺こんなの買ってしまったんだろう」

ベッドに横たわり、ジ―――――――っとその描かれている表紙絵の女の子を眺めている。

でも可愛いからいいか。と、せっかく買った本だ、中身も読んでみようと読み始めたが、あんまり好きなジャンルの内容ではなかった。

異世界転生もの。

ここ数年で爆発的に増えた『異世界転生』ジャンル。

これと言って好きなわけでもないが、なぜかこういうのはちらちら読んでしまう癖がついている。


嫌い? と言うことだが、こうして読むことは読む。

実は好きなのか? いやそう言う訳でもない。

正直にいえばあこがれがあるといえば直な感情意見だ。

もし、異世界に転生できれば今までとは違ったドラマ人生を送ることが可能になるのではないと、ひそかに願望しているからこそ、読んでしまう。

本棚にはこの系統のラノベがぎっしりと並べられている。

やっぱりハマッているのではないのか!

これを世間では『おたく』と呼んでいると思うのだが……。

いやいや、俺は決してその……『おたく』ではない。単なる愛好家であって、いつの間にか転生したいという気持ちがこの本たちを呼び集めているにすぎないのだ。

――――――――それをオタクと呼ぶのだ。それを全否定できない俺はやっぱり、どっぷりと転生ものにはまっている。転生オタクなのだということを自覚している。

いや、したくない。

だからあんまり好きなジャンルではないのだ。


しかしながら、この表紙絵の女の子にはそそられる。

絵だぞ、イラストだぞ!

そう言う次元を飛び越えて、恋焦がれている自分にあきれる。ただあきれるだけならいいんだが、実際にこういう子が自分の傍にいてくれたらどんなに幸せなんだろうと妄想する自分と下半身。

俺の下半身は独立した意識があるのか?

まぁ、それはもうどうでもいい。欲情はするが、その先にはいかないところが生殺し状態。

なぜかこれだけでは満足がいかねぇ。


……やっぱ、転生して人生やり直ししねぇといけねんだろうか?

ああ、転生してぇ―――――――。

こんな人生とはおさらばして、可愛い彼女が寄り添う世界。うんうん、異世界でもいいぞ! そうだな俺が剣士で、その俺にあこがれる女剣士。お互いにライバル心を燃やしながらも、いつしか恋に落ちていく。

いいな、そう言う展開も。

いや待てよ、異世界転生だともしかしたら人間じゃないかも。

スライムとか、昆虫とか。

そんな姿に寄り添うというか近づく女。しかもかわいい子なんていやしねぇんじゃねぇのか。

どうすれば思い通りの姿で転生できんだよ。


そもそも転生するにはこの世界かに別れを告げなけいけねぇ。

つまりだ。死ななきゃいけねぇんだな。

ちらりと本棚にあるラノベの背表紙を見つめる。

ああ、ここにある本だけでも何人死んでいるんだろ。転生するために。

首でもくくるか。

ぶらぁ――んとつるされた自分の姿を想像してみた。

あはははは、いまいちパットしねぇ。

それにだよ。死んだからって必ず転生できるわけでもねぇんだよ。

ま、そんな勇気もねぇ、しょぼい俺だけど。


転生はやっぱ現実には起きねぇんだよな。死んだら、ハイ! そこで終わり。

ジ・エンド!

当たり前のことを妄想の世界と混同させていること事態。俺、病んでるのかもしれない。



その時だ「コンコン」と部屋のドアがノックされた音が聞こえてきた。

んっ? コンコンって。いったい誰だ?

空耳か? この家には俺と親父しかいねぇのに。

それに親父はほとんど帰ってこねぇ。

おふくろが死んでからかれこれもう3年が経つ。

どこで何をしているのかわけわかんねぇ親父が、今更ノックなんかするのかよ。そもそも帰ってきてるのなら家の中がこんなに静かなわけがねぇ。


そしてまたコンコンと音がする。

空耳ではない。

では一体誰が……?


次に俺は信じられない声を耳することになる。 

それは。


「お兄ちゃん。夕食出来たから食べよ」


――――――お兄ちゃん?


えっ?


誰?


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