2-2

 明けて正月の2日、3人で大阪の天満宮に合格祈願にいこうとなった。高校受験の時も、4人で来ていた。あの時、美鈴はもう家庭環境の変化に悩んでいたのだろうか。僕達には、何にも言わずに独りで抱え込んでいたのだろう。僕も、もっと、軽く考えていたのだ。でも、相談されても、僕にはどうしようもなかったかも知れない。


 神社の境内はやっぱり混んでいて、何とかお願いを済まして、絵馬を奉納することにした。それぞれの願い事を書いて、吊るしていると、光瑠が大きな声で


「これを見てー」と、僕の腕を引っ張ってきた。その指を指した先には


  {蒼が 希望の大学に受かりますように}と書いた絵馬があった。


「きっと 美鈴よ 私達より前に来ていたのよ それで・・ 私達がきっとお願いに来るって、考えたのよ だから・・あの時と同じように あの娘 私達のこと忘れてないわよー きっと」


「でも 名前が書いてないぜ 偶然かも」と、昇二が言ったが


「それはね 気を使ったのよ 蒼に、もしかして彼女がいたら気まずいでしょ あのね、絵馬が裏向いていたでしょ 普通なら、書いた方を隠すじゃぁない それも、真ん中に吊るして 気づいて欲しかったんだよ 美鈴は」と、二人が話している間に、僕は辺りを見回していたが、彼女の姿は無かった。でも、間違いなく美鈴の字だ。それに端っこに子猫の絵があった。僕は、それを撫でながら、愛おしく思った。


 {とにかく 連絡してくれ 蒼}と、記した。


「何で 何でだろう きっと見つけ出すよ」と、僕は思わずつぶやくと


「しっかりしてよ 蒼 あの子の気持ちを考えて・・ 何か、事情があって、私達の前から消えたのよ 多分、私達に心配かけまいと思っているのよ でも、今でも、蒼のことは想っているよ きっと 美鈴も会いたいに決まっているじゃぁない だから、こうやって・・ きっと、自分を探し出すことより、美鈴が望んでいるのは、今は、蒼がしっかり自分の道を進んで欲しいと思っているのよ 彼女は元気にしているわ きっと・・ 美鈴のことを信じてあげて・・私、女だからわかるのよ」


「そうだよな 光瑠の言っていることは、正しいよ 蒼 今は、大学に入ることに集中しよう」


「そうだな 確かに 会えるんなら、向こうから来るよな 光瑠ありがとう わかったよ」


「うん、大学に入ったら俺達も協力するからさ 美鈴のこと探そう 何か、助けられることあるかも知れない」と、昇二も言ってくれた。


「そうよ あの時は、私達も中学生だったし、今度は何かできることあるかもしれないよ 蒼、とにかく頑張って大学に受かろー 蒼と美鈴の絆 今日、改めてわかったわ きっと、又、会えるよ」


「よし わかったよ 必死になってな 美鈴の分までやるよ」と、僕は誓った。


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