第6話 ひろゆきくんが不登校 

小学校3年生の頃、自分の母親と同じ年くらいの女性の先生が担任だった。


昔の先生は皆怖かった。


平たい棒を持ち歩き、いたずらや問題を起こした児童は、お仕置きがある。


皆の前に立たされ、尻を突き出し、叩かれる。


痛みを和らげるために、尻のポケットにティッシュやハンカチを詰めておくと、周りの観衆たちから、「先生!ポケットにティッシュが入っています!」とヤジが入る。


躾に厳しく、容赦ない担任の姿に、皆ビビッていた。


保護者たちも、子どものことは完全に学校に任せていたので、問題視されなかった。


逆に、言うことを聞かなギャングエイジたちを懲らしめてくれと母親たちから要望があったと推測する。


一学級46人(第2次ベビーブーム)の時代


ある日、クラスでも人気者のひろゆきくんが登校拒否(現:不登校)になった。


僕たちは尻叩きの刑が辛くなったんじゃないかと思っていた。


担任は、何度か家庭訪問し、ひろゆきくんが書いた手紙を受け取り、その手紙を皆の前で読んだ。


ひろゆき

「ぼくは、学校には行きたくありません。図工の時間に木を描いたら、こんな人間のうでみたいな枝はないだろ。まじめに描けと先生に言われて嫌な気持ちがしました。」


ひろゆきくんはユニークな子どもで、自由に歌をつくったり、面白話をしたり、皆から芸術家と言われていた。しかし、絵が苦手でナイーブな一面があった。


同じく、僕も、描いた絵を担任から、「雑過ぎるから書き直しなさい」とよく言われたが、たかが絵のこと、気にしてなかった。


担任は自分への批判を隠すことだってできたと思うが、9歳の子どもたちにそのまま伝えた。


「先生が、ひろゆきくんを傷つけたのです。私は、間違っていました。言葉の使い方には気を付けます。」と皆の前で謝った。


子どもたちの先生に対する見方が180度変わった。


その後、ひろゆきくんは再び登校し始めた。


担任は思ったことをすぐに言ってしまう、素直で正義感がやたら強い人だった。


大学では美術を専攻していたようで、子どもたちに適確な描写力を身に付けてほしかったようだ。


同僚や管理職にも平気でたてつくようなタイプだった。


※棒は振り回さず、きつ~いことを誰にでも言っていた。校長の命令で、教室で動物を飼ったり、田畑を作ったり、行事盛沢山の地域でも有名な研究校だったが、私の担任だけは、特に何も研究しないという徹底ぶりだった。


相変わらず、尻叩きは収まらなかったが、素直で表裏のない、先生ならしょうがねーし、叩かれないように、皆で気を付けないとねと話すようになっていた。


教育界には様々な教育法が有象無象としている。


子どもたちにとってはそんな研究なんかどうでもよく、目の前にいる先生がどんな人間なのかを見ているのだ。はっきり言って、先生の人間性を研究する方がずっと面白い。


※暴言暴力を肯定する話では全くありません。暴言暴力はあってはいけませんが、時代的にかなり昔の話であり、当時では許容範囲の出来事です。





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