第一話「赤い傘」~漫画原稿10of18「赤い婦人傘」~
10ページ目上のコマ
風であおられた凧糸を握りしめるように、母から貰った赤い婦人傘を離すまいと踏ん張るマドツキに対して
「ちょっと、あれ…大丈夫かしら…?」
とモノ江は、モノ子だけに心配の声を呟いた。
今にも飛んでいきそうな傘に、少し手を伸ばした、こっちに飛んできて傘が妹に当たるかもしれないと警戒して手を構えたのもあるが、しかし北側の横断歩道にわたる予定でもなく…
ただ二人は狼狽えていた。
目と鼻の先で、風に負けじと大きな赤い傘を握る彼女を助けようと思って手を伸ばすが、手を差し伸べることができなかったのだ。
10ページ下のコマ
さらに梅雨の時期の雨嵐はブオオオォォォっと、掃除機のように、周りの音を吸い尽くした。
「 」
そして、五月蝿いほど静かな空間(?)ができた、まるでスローモーションのように一瞬一瞬が切り取られたフレームになり、雨粒さえも桜のように見えた、音が消えると目だけが研ぎ澄まされるとはこのことであった。
「 このままじゃ 」
モノ子は、ただ女の子がつらそうにしていたので、赤い傘を飛ばされたあとは、誰よりも早く一歩前に出て、必ず掴まえてあげることを胸に、よーいどんで駆けていった。
「 飛ばされちゃう 」
雨合羽に身を包んだモノ子の耳は塞がっていた。
目の前の女の子が暴力的な強風に悪戯されている、駆け出したモノ子には何も聞こえてなかった、助けることになんの躊躇もないことが、彼女のそのあとの命運を決めてしまったのだ。
「あっ…」
とモノ江は見送った
「お母さんの傘!」
とマドツキは言うと
タッ!
と黙ってモノ子は追いかけた、まるで高校球児のように放たれた傘に向かってまっすぐに。
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