【完結】星樹の花束
いろは えふ
第0話 プロローグ
『そこは、無数の星の子達が集うミルキーウェイ。ある者達は他愛ない言葉を交わし合い、またある者達は悩みを相談し合う。平和で穏やかな時が流れるこの場所だが、此処に住まう者は皆、互いの顔を知らないのだ――』
アルタイル『何処かに星樹(せいじゅ)と呼ばれている、不思議な古木があるそうだ。昔は綺麗な花をつけていたらしいが、今は随分と古木になって、もう何百年も花をつけていない。だが、運が良ければ七夕の夜に、星屑の花束のような満開の桜が見られるらしい』
アーク『その花束を見れた者は、願いが叶うって都市伝説のか? どうせまゆつばなんじゃねぇの? 何百年も花をつけて無いっていうんなら、もうその木死んでそうじゃん』
ベガ『もしかしたら眠ってるだけかも? もしも本当に願いが叶うとしたら、二人は何を願いたい?』
アーク『そうだな。オレは、もっと自分に自信を持てるようになりてぇかな?』
アルタイル『もしも願いが叶うなら……か。二人ともロマンチストだな。眩しくて羨ましいよ』
ベガ『私は、素敵な人と恋がしたいな。少女漫画のように切なくて、甘酸っぱくて、きゅんとしちゃうような。そんな、恋がいい』
「オリナ、あなたいつまでスマホ眺めてるの! 早く食べないと遅刻するよっ!」
「も、もう食べ終わるって!」
私が慌てて残ったトーストを口へと押し込むと、私の大好きなCMがテレビで流れ出す。
~~♪ あの初恋をもう一度 甘酸っぱくてほろ苦い 初恋の味『キャラメルいちごみるく』
印象的なキャッチコピーと、人外を彷彿とさせる美貌を持つ大女優セレスティアの切ない演技がとても胸を打つ、不思議な雰囲気のこのCMにいつも私は魅入られてしまう。
「セレスティアって本当に綺麗……」
「ご、ごほんっ! オリナ、そろそろ……」
父の咳払いで、我に返りそちらを見遣ると、母の額に青筋が浮かんでおり、私は父が言わんとする事を察して、そそくさと家を飛び出すのだった。
これは、少女漫画のような恋に憧れる私の、少し不思議な初恋の物語――
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