第11話「告白してない、ふられてない」
僕には不思議だよ。
なんで昨日あんなことがあったというのに、アズミは普段と変わらないのか?
僕のことふったあとで、他の女と「アハン、ウフン」しておきながら、なぜ普段と変わらぬ態度で僕と接してくるのか?
おかしくない?
……って、ああぁあああああおああああああああいいあああああああああ!!!!
僕は大事なことを思い出し、心の中で取り乱す。
告白してない。
告白する前に、アズミに「カノジョができた」と言われたから、逃げ出したのだ、告白してない。
そしてもちろん、僕があの「アハン、ウフン」を盗み聞きしていたことなどアズミは知るよしもないし、僕が自分から「昨日、盗み聞きしてたんだけど、女の子同士ってどうだった? 気持ちよかった?」などと言うわけもない、そんなこと言ったら、その瞬間、人生終了。
つまり、こういうことだ。
告白してない、ふられてない、だからアズミとの関係性、変わるわけない!
変わったのは僕の心の中だけで、アズミは何も変わっていない。
そう……変わっていない。
当たり前だが、女の子同士で、何か卑猥なことをしたとても、アズミはアズミのままだ。
別に何も変わっていない。
間違いなく、マイ・スペシャル・エンジェル(僕の特別な天使)のままだ!
そう、アズミの羽は折れていない!!
僕が平静を保ちさえすれば、僕とアズミの関係は従来通り、『まるで家族のように仲がいい幼なじみ』のままなのだ。
僕は改めて、アズミのことを眺めてみる。
いつもと同じ、屈託のない笑顔だ。
実は僕の気持ちを察しているとか、そう言った気配は微塵も感じられない。
僕は目線を下にずらす。
ゆるい部屋着の上からでもわかる、アズミの大きな胸。
図らずも、盗み聞きしたことにより知ってしまった、アズミの胸はFカップ。
アズミは小学校高学年から中学校1年生ぐらいにかけて太っていた時期があり、中学校2年生の半ばぐらいに一念発起してダイエットしたのだが、その時に胸だけが大きいまま残って、ウエストは細いというグラビアアイドル体型になったのである。
それにしても、まさかFカップもあるとは想定外であった。
しかも『るみさん』が言うには乳首が陥没していて、何かすると出てくるらしい。
僕がどうあがいても見れないものを『るみさん』はあっさり見たというのか、おのれ……
「どこ見てるの? 優くん」
僕のよこしまな考えを見抜いたかのようにアズミがツッコミを入れてきて、僕は焦った。
「べ、別に……何も見てないよ……」
「えー? ホントにぃー?」
僕はあわててアズミの胸から目線を外し、顔を見たが、アズミはいたずらっぽい笑みを浮かべるのみで、別に怒っているようには見えなかった。
「それよりさー、優くん、もっとまともな服、着た方がいいんじゃない? そんなダサい服で外出するなんてアズミにはできないよー」
「ダサい? この上杉軍Tシャツがダサいだと?」
僕はお気に入りのTシャツをアズミにけなされ、つい反論してしまった。
「ダサいよ。漢字一文字のTシャツを着て喜んでるなんて、外国人じゃないんだから。しかも何? その『たひ(田比)』って字」
「『たひ』じゃねぇ! 『び』だ!
「『びしゃもんてん』ってなーに?」
「毘沙門天ってのは、戦いの神様で……」
「優くん、誰と戦ってるの?」
「それは……」
言葉に窮した僕は反論を諦め、焼きそばの残りを全部食べることにした。
アズミはそれ以上、何も言ってこなかったが、この上杉軍の旗Tシャツのよさがわからないだなんて、まったくもって野暮、無粋、野蛮人……
って、そんなことより、大事なことがあるじゃないか。
せっかく向こうからやって来てくれたんだ、この機会を逃してはいけない。
僕はアズミにインタビューすることにした、いろいろ聞きたいことがあるのでな。
「あのさぁ……」
「焼きそばおいしかった? 優くん」
「うん、おいしかったよ、ごちそうさま。そんなことより……」
「なーに?」
「昨日、玄関前に一緒にいたあの人、あれがアズミの『カノジョ』なの?」
「うん、そうだよー」
アズミはまったくためらうことなく、即答した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます